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天カセとは?天吊りとの違いと業務用エアコンの種類・選び方

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天カセとは?天吊りとの違いと業務用エアコンの種類・選び方

天カセ(テンカセ)とは「天井埋込カセット形」の略で、室内機の本体を天井の中に埋め込み、天井面に見える化粧パネルから吹き出す業務用エアコンの形状です。天吊り(天井吊形)との違いは、本体を天井に埋め込むか、天井面に露出して吊り下げるかにあります。天カセは天井面がすっきり収まる代わりに天井懐(天井板と上の梁・スラブの間の空間)に本体が入る余裕が必要で、天吊りは埋め込み工事が要らないため、天井懐が狭い場所や既存建物への後付けに向きます。

この記事では、天カセと天吊りの違いを表で整理したうえで、形状別の種類、個別パッケージとビル用マルチの違い、能力選定と更新提案の実務ポイントをまとめます。

天カセと天吊りの違い(比較表)

メーカーの公表情報(ダイキン工業・三菱電機)に基づき、両者の違いを整理すると次のとおりです。

項目天カセ(天井埋込カセット形)天吊り(天井吊形)
設置方法本体を天井内に埋め込み、パネルだけ見える本体を天井面に露出して吊り下げる
天井懐本体が収まる寸法が必要埋め込み不要。懐が狭くても設置できる
見た目天井面がすっきりし、インテリアに調和しやすい本体が見える
工事天井開口と天井内の吊り・配管が必要埋め込み不要で比較的容易。後付けしやすい
吹出し4方向・360度・2方向・1方向など種類が多いロング・ワイドな気流で広い空間向きの機種がある
向く場所事務所・店舗の一般居室天井懐が狭い店舗・既存建物、照明等で天井面が限られる空間

どちらが優れているかではなく、「天井懐に入るか」「天井を開けられるか」で先に絞り込み、そのうえで意匠と気流で選ぶのが実務の順序です。三菱電機は4方向天井カセット形を「現在市場で最も多く普及しているタイプ」と説明しており、迷ったときの基本形は天カセですが、天井懐が足りなければ天吊りが第一候補になります。ダイキンの天吊自在形のように、天井懐が狭くても4方向へ吹き出せる天吊りの機種もあります。

形状別の種類と使いどころ

形状特徴向いている空間
天井カセット4方向・全周吹出し天井に埋め込み四方(全周)に吹き出す定番事務所・店舗の一般居室
天井カセット2方向・1方向照明の並びや細長い空間、コーナーに合わせやすいオフィス・廊下・細長い店舗
天吊り形天井面に露出で吊る。懐が浅くても設置可天井裏に余裕のない店舗・既存建物
天井埋込ダクト形(ビルトイン)本体を天井内に隠し、吹出口・吸込口を自由に配置内装を重視する店舗・ホテル
床置形床に置く露出形。設置が速く手入れもしやすい天井・壁に設置場所がない空間
壁掛形壁に掛ける露出形。設置と掃除が簡単天井裏スペースが限られる小空間

名称はメーカーで少しずつ違います(例: 三菱電機の「4方向天井カセット形」、ダイキンの「天井埋込カセット形ラウンドフロー」)。公共建築工事標準仕様書(国交省)では、マルチパッケージ形空気調和機の屋内機の形式を「床置形、壁掛形、天井吊形、カセット形及び外気処理ユニット」と区分しています。見積書・機器表では、発注者の図面の呼び方に合わせて書くと行き違いが減ります。

同じ能力でも、形状によって気流の届き方と施工の手間は違います。天カセは本体高さに加えて冷媒配管・ドレン配管の取り回しの余裕も天井内に要るため、改修では現地で天井懐の実寸を確認してから形状を決めるのが鉄則です。

パッケージ個別方式とビル用マルチ(VRF)の違い

個別パッケージ方式

室外機1台に室内機1台(または同一系統の数台)を接続する方式です。

  • 長所: 系統が独立しているため、1系統の故障が他に波及しない。テナントごとに更新時期をずらしやすい
  • 短所: 室外機の台数が増え、設置スペースと外観の問題が出やすい
  • 向く建物: 店舗、小規模事務所、テナントごとに更新時期が違う雑居ビル

ビル用マルチ方式(VRF)

ビル用マルチ(VRF=冷媒流量を変えて各室内機を制御する方式)は、公共建築工事標準仕様書の言葉では「屋外機と一つの冷媒系統に複数の屋内機を備えたもの」で、屋内機は個別運転できるものとされています。

  • 長所: 室外機の設置面積を節約でき、室内機ごとの個別制御も可能
  • 短所: 冷媒配管系統が大きく複雑になり、設計・施工の難易度が上がる。系統故障時の影響範囲が広い
  • 向く建物: 中規模以上のオフィスビル、病院、ホテル、学校

施工者の目線で重要なのは、ビルマルは配管施工の品質要求が高いことです。冷媒配管の総延長・高低差・分岐の施工精度がシステム全体の性能を左右するため、冷媒配管の施工品質と気密・真空の管理が個別機以上に効いてきます。許容される配管長・高低差は機種ごとにメーカーの据付説明書で確認してください。

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能力選定の考え方

能力選定の基本は空調負荷計算です。床面積あたりの目安だけで決めると、次の点で失敗が起こります。

  • 用途変更を見落とす。事務所として計画した区画が会議室になれば、人員と機器の発熱で負荷は大きく変わります。改修では「いま何に使っているか」を必ず現地で確認します
  • 厨房・日射・OA機器などの特殊負荷を一般居室と同じ感覚で扱う。熱源のある部屋は個別に負荷を拾います
  • 大きめ安全側に倒し過ぎる。過大な能力は発停の繰り返しを招き、除湿が効かず快適性がむしろ悪化することがあります

改修・更新では既設能力を出発点にしつつ、断熱改修・LED化・人員変化など負荷が変わる要素を確認して見直します。能力の最終決定は負荷計算とメーカーの選定資料で行ってください。

更新提案で外さない3つの実務ポイント

  1. 冷媒配管の再利用可否を最初に確認する。既存配管を再利用できるか(洗浄の要否・管径や耐圧の適合)は、見積金額と工期を大きく左右します。メーカーの更新向け機種の適合条件で確認します
  2. 停止できる時間を聞く。営業中の店舗・稼働中の事務所では、何時から何時まで空調を止められるかが工法を決め、見積の人件費にも反映が必要です
  3. 撤去する機器の冷媒処理を織り込む。既設機の冷媒はフロン排出抑制法に基づく回収・処理が必要で、その費用と手順は見積に明記します(フロン排出抑制法の実務対応)

現地調査チェックリスト(天カセ・天吊りの判定つき)

機種選定の失敗の大半は、現地調査の見落としから生まれます。

  • 室内側: 天井懐の実寸、点検口の有無と位置、天井材が開口できるか、既設機の形状・能力・製造年、吹き出しの障害物(間仕切り・棚・照明)
  • 室外側: 設置スペースと搬入経路、既設基礎の状態、隣地・開口部との距離(排熱・騒音への配慮)、屋上なら防水と揚重方法
  • 配管・電源: 既設冷媒配管のルート・管径・保温状態、ドレンの排水先、電源容量と幹線の余裕
  • 使い方: 部屋の用途と在室人数、発熱機器の有無、運転時間帯、現状の不満(効かない・うるさい・電気代)

調査結果から形状を絞るときは、次の順で判定すると迷いません。

質問はいいいえ
天井懐に、候補機の本体高さと配管・ドレンの余裕が入るか(カタログ外形寸法と実測を突き合わせる)次の質問へ天吊り・壁掛・床置から選ぶ
天井を開口でき、点検口も確保できるか次の質問へ天吊り・壁掛・床置から選ぶ
吹出口の位置を自由に決めたい(意匠重視)か天井埋込ダクト形を検討天カセ(吹出し方向は部屋の形で選ぶ)

更新で特に注意したいのが、既設と同じ形状を選んでも新しい機種の外形寸法が変わっている場合があることです。既設の寸法を前提にせず、候補機のカタログ外形寸法と天井懐の実寸を必ず突き合わせてください。調査結果は写真とセットで記録し、見積の根拠として案件に紐づけて残します。撮影と整理の効率化には電子黒板アプリが使えます。

提案書に落とすときの伝え方

方式・機種の比較は、専門用語のまま並べても発注者には伝わりません。初期費用・電気代の傾向・故障時に止まる範囲・工事中の営業影響、という発注者の関心に合わせた軸で比較を見せると、技術に詳しくない相手でも判断できます。天カセか天吊りかも、「天井を開けられるか」「見た目をどこまで重視するか」という発注者の言葉で説明すると伝わります。

まとめ

  • 天カセは天井埋込カセット形の略で、本体を天井に埋め込む形。天吊りは天井面に露出して吊る形で、天井懐が狭い場所や後付けに向きます
  • 選定の順序は、方式、形状、能力、機種。形状は「天井懐に入るか」「天井を開けられるか」で先に絞ります
  • 個別パッケージとビルマルは得意分野が違います。系統の独立性か、設置効率・個別制御かで選びます
  • 能力は負荷計算が基本。更新提案は、配管再利用・停止可能時間・冷媒処理の3点確認で事故を防げます

出典・参考

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