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保守契約の管理術|点検スケジュールと更新漏れの防止

保守契約の管理術|点検スケジュールと更新漏れの防止

保守契約は「取る」より「回す」が難しい

空調工事会社にとって、保守契約は貴重なストック収益です。工事が受注の波に左右されるのに対し、保守は毎年の売上が読め、点検先はそのまま更新工事の見込み客になります。ところが実際の現場では、せっかく取った保守契約が次のような状態になっていないでしょうか。

  • 点検の時期になっても気づかず、顧客からの連絡で慌てて訪問する
  • 契約の更新月を把握しておらず、いつのまにか他社に切り替えられていた
  • 過去の点検で何を指摘したか、担当者の記憶にしかない
  • 点検報告書は出しているが、その後の提案につながっていない

保守契約の価値は、契約書の枚数ではなく運用の質で決まります。この記事では、保守業務を「担当者の頑張り」から「会社の仕組み」に変えるための管理術を解説します。

保守管理で持つべき4つの台帳情報

保守業務の管理は、突き詰めると次の4つの情報を誰でも引き出せる状態にすることです。

台帳中身抜けると起こること
契約台帳契約先・範囲・金額・契約期間・更新月更新漏れ・失注に気づかない
機器台帳設置機器の機種・台数・設置年・冷媒種点検の準備不足、提案の根拠喪失
点検予定表年間の点検予定と担当割り時期遅れ、繁忙期との衝突
対応履歴点検結果・指摘・修理・部品交換の記録同じ質問に毎回現場確認、引き継ぎ不能

多くの会社では、この4つがExcel・紙の契約書綴り・担当者の頭の中に分散しています。分散している限り、担当者の退職や長期休みが、そのまま契約先との関係の断絶になります。

点検スケジュールの組み方

空調の点検は「季節の山」を外して組む

空調保守の点検予定には、他の設備業にない制約があります。冷房シーズン直前(5〜6月)と暖房シーズン前(10〜11月)に点検需要が集中し、7〜8月は修理対応で人が取られることです。

実務的な組み方は次のとおりです。

  1. 法定・契約上の実施時期が決まっているもの(フロン排出抑制法の定期点検など)を先にカレンダーへ固定する
  2. シーズン前点検は4月と9月に前倒しで山を平らにする。「冷房前点検は6月」と全件を思い込みで並べると、繁忙の谷がなくなります
  3. 地域・建物のまとまりで訪問日を束ねる。移動時間は点検原価の中で最も削りやすいコストです
  4. 点検予定は年初に全件分を仮置きし、顧客との日程確定は2カ月前に行う運用にする

点検準備を属人化させない

点検当日の質は、前日の準備で決まります。機器台帳から対象機器のリストを出力し、前回指摘事項を確認してから向かう。この当たり前の準備が、台帳が整っていない会社では毎回「前回行った人に聞く」作業になります。台帳と履歴が整えば、点検は若手でも一定品質で回せる業務になります。

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更新漏れを防ぐ仕組み

契約更新の失注は、サービスへの不満よりも「単純に忘れられていた」ことが原因になりがちです。防ぐ仕組みはシンプルです。

  • 更新月の3カ月前に自動でアラートを出し、担当者と上長の両方が見える場所に表示する
  • 更新提案時には、この1年の対応実績(点検・修理・緊急出動)を一覧で添える。実績が見えると価格だけの比較になりません
  • 値上げ・条件変更が必要な契約は、更新月ではなく点検訪問のタイミングで先に話しておく

特に2つ目の対応実績の一覧は、対応履歴が記録されていて初めて作れる資料です。ここでも台帳の整備が営業力に直結します。

失注の典型例をひとつ挙げます。ある設備会社(K社)は、長年の保守先だったビルの管理会社が交代した際、新しい担当者に自社の対応実績を示す資料を何も出せませんでした。新担当者は前任者との人間関係を知らないため、判断材料は書面だけです。結果、相見積で年額の安い業者に切り替えられました。関係で維持していた契約は、関係が切れた瞬間に価格勝負へ落ちます。実績を書面にできる体制は、この「担当者交代リスク」への保険でもあります。

報告書を「次の仕事」につなげる

点検報告書を提出物で終わらせている会社と、営業資産にしている会社では、数年後の売上が変わります。

  • 指摘事項には必ず「放置した場合に起こること」と「推奨時期」を書く。単なる不良指摘は読み飛ばされますが、判断材料は読まれます
  • 設置15年前後の機器には、修理費の累積と更新費用の比較を提示する。更新工事の受注は、この積み重ねの先にあります
  • 指摘事項の一覧を会社側でも管理し、翌年の点検・提案時に進捗を確認する。「去年指摘した件、どうなりました?」と言える会社は信頼されます

保守の採算を「感覚」から「数字」に変える

保守契約は安定収益と言われますが、採算を測らずに受けている契約が混ざっていると、点検に行くほど赤字という状態が静かに進行します。管理術の仕上げとして、契約ごとの採算把握を仕組みに入れてください。

見るべき数字はシンプルです。契約金額に対して、年間の訪問回数×(作業時間+移動時間)×人数で人件費を概算し、部品・消耗品と車両費を足したものが契約原価です。これを契約台帳に1列足すだけで、契約ごとの粗利が並びます。

採算の悪い契約が見つかったときの選択肢は、値上げだけではありません。

  • 訪問を近隣の契約先と同日に束ねて移動原価を下げる
  • 点検内容を契約書どおりに見直す(契約範囲を超えたサービス作業が常態化していないか)
  • 簡易な確認を顧客側のセルフチェックに切り替え、訪問回数を適正化する
  • 更新時期の機器なら、更新工事の提案に切り替えて契約の性質を変える

なお、緊急対応の駆けつけが契約に含まれている場合、その工数は年によって大きく振れます。夏の出動記録を契約別に残しておくと、次回更新時の条件交渉(出動回数の上限設定や超過時の別途精算)に説得力のある根拠を出せます。ここでも対応履歴の記録が効いてきます。

担当者依存から抜け出す管理体制へ

ここまでの仕組みは、Excelでも作れます。実際、契約一覧・点検予定表・履歴シートをExcelで整備するだけでも、何もない状態からは大きく前進します。

ただしExcel運用には限界も来ます。担当者ごとにファイルが分かれて最新版が分からなくなる、現場から履歴を確認・入力できない、アラートが人力になる、といった壁です。契約・機器・予定・履歴を案件や顧客に紐づけてクラウドで一元管理すれば、事務所でも現場でも同じ情報を見られ、更新アラートも仕組みで回ります。当サイトで紹介しているツナギーは、こうした保守・修理・工事が並行する空調業の管理を想定したツールです。

仕組み化の順序としては、まず紙とExcelで4つの台帳を揃える、運用が回り始めたらクラウドに載せ替える、の二段階が現実的です。ツールを先に入れても、台帳の中身が空なら何も起こりません。

まとめ

  • 保守契約の価値は運用で決まります。契約・機器・予定・履歴の4台帳を誰でも引ける状態が土台です
  • 点検予定は法定分を固定してから、山を崩して平準化。移動の束ねが利益を守ります
  • 更新漏れは仕組みで防ぐもの。3カ月前アラートと対応実績の一覧提示が効きます
  • 報告書は営業資産です。指摘に判断材料を添え、翌年に進捗を追うことで更新工事につながります

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