グラスウール製ダクトとは?ダクトの種類・規格と使い分け
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編集・発行:KMC株式会社
グラスウール製ダクトとは、高密度のグラスウール(ガラス繊維の断熱材)を板状または筒状に成形し、外面をアルミ箔クラフト紙、内面をガラス不織布で仕上げたダクトです。ダクト工事・保温工事・消音工事を一度に済ませられるのが最大の特長で、国交省の公共建築工事標準仕様書では「消音を考慮する低圧ダクトで、吹出口ボックスへ単独で接続する円形ダクト」として、板厚25mmで規定されています。
ただし、鉄板ダクトの代わりにどこにでも使えるわけではありません。この記事では、その使える範囲を整理したうえで、スパイラル・角・扁平・フレキシブルの各ダクトの違いと、板厚などの規格の読み方をまとめます。
グラスウール製ダクトとは:構造と使える範囲
構造と種類
グラスウール製ダクトには、ボードを現場や工場で切って組み立てる長方形ダクト(角ダクト)と、工場で筒状に成形された円形ダクト(丸ダクト)があります。メーカー(マグ・イゾベール)の技術解説では、製品厚さは長方形・円形とも25mm、円形の内径は100mmから1,000mmまでの品揃えとされています。内面にもアルミ箔を貼った「両面貼り」の製品もあります。
- 長所: 保温工事と消音器を減らせる。軽量で、現場加工できるため改修にも向く
- 短所: 使える圧力・風速・温度に上限がある(下表)
公共建築工事標準仕様書での位置づけ
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版では、グラスウール製ダクト(円形ダクト)について次のように定めています。
- 適用: 風量調節ダンパー等より下流の、消音を考慮する低圧ダクトで、吹出口ボックスへ単独で接続する場合(第3編1.14.10)
- 材料: JIS A 4009「空気調和及び換気設備用ダクトの構成部材」によるもので、内面に飛散防止処理を施したもの。建築基準法上の不燃材料に適合するもの
- 施工: 板厚25mm。同士は突合わせて接着しアルミニウムテープ巻き、スパイラル・フレキとは差込み継手に接着・鋼帯とビスで固定してテープで覆う(第3編2.2.5.4)
つまり公共工事の標準では「末端の消音用の丸ダクト」という位置づけです。
使用範囲の目安(メーカー公表値)
同社の技術解説が示す使用可能範囲です。製品ごとに異なるため、採用製品のカタログで確認してください。
| 項目 | 使用可能範囲(マグ・イゾベール公表値) |
|---|---|
| ダクト内風速(最大) | 角ダクト13m/s以下、丸ダクト15m/s以下 |
| ダクト内全圧 | 500Pa以下 |
| ダクト内温度 | 70℃以下 |
| ダクト周辺温度 | -30〜70℃ |
厨房排気や排煙ダクトは、これらの範囲や仕様書の適用範囲から外れます。施工は、グラスウールダクト工業会の「グラスウール製ダクト標準施工要領」に拠るのが公共仕様書の考え方です。
主要なダクトの種類と違い
スパイラルダクト
亜鉛鉄板(亜鉛めっき鋼板)を帯状にしてらせん状に巻き、はぜ(板の縁を折り曲げて噛み合わせた継目)で機械巻きした円形ダクトです。公共仕様書では呼称寸法を内径基準とし、接合は差込み継手接合またはフランジ継手接合としています。
既製品で継手も揃い施工が速い一方、円形のため天井懐の高さを食います。換気・排気系統全般、露出ダクト、竪ダクト(シャフト内を上下に通す縦方向のダクト)に多く使われます。
角ダクト(長方形ダクト)
亜鉛鉄板を現場寸法に合わせて製作する長方形ダクトです。公共仕様書では、アングルフランジ工法ダクトとコーナーボルト工法ダクト(共板フランジ工法・スライドオンフランジ工法)に区分し、コーナーボルト工法は長辺1,500mm以下のダクトに適用するとしています。
| 項目 | アングルフランジ工法 | コーナーボルト工法(共板フランジ等) |
|---|---|---|
| フランジ | 山形鋼を溶接加工して取り付け | ダクト本体の板を折り曲げて成形(共板) |
| 適用寸法(公共仕様書) | 長辺1,500mmを超える大断面にも使う | 長辺1,500mm以下 |
| 重量・コスト | 重く高い | 軽く安い |
| 使いどころ | 大断面・排煙など強度が要る系統 | 一般空調の低圧ダクト |
扁平ダクト
扁平ダクトは、天井懐の浅い場所に通すために高さを抑えた平たい断面のダクトの呼び名です。長方形ダクトを横長にしたもののほか、楕円断面のオーバルダクト(丸ダクトと角ダクトの長所を併せ持つとうたうメーカー製品)を指すこともあります。
長方形ダクトを扁平にする場合の上限として、公共仕様書は「長方形ダクトの縦横比は、原則として、4以下とする」(第3編1.14.3.3)と定めています。梁下の余裕がないからといって極端に平たくすると、この原則から外れます。縦横比を守れない納まりは、ルート変更や2本に分けるなどの設計調整が必要です。
フレキシブルダクトとスパイラルダクトの違い
フレキシブルダクトは、蛇腹状で自在に曲げられるダクトです。断熱付き・アルミ製などがあります。スパイラルダクトとの違いは「どこまで使ってよいか」にあります。
| 項目 | スパイラルダクト | フレキシブルダクト |
|---|---|---|
| 形状 | 硬い円筒(らせん状のはぜ) | 蛇腹状で曲げられる |
| 公共仕様書での用途 | 主管・枝管全般 | 吹出口・吸込口ボックスの接続用 |
| 長さの規定 | 規定なし(吊り間隔4,000mm以下) | 1.5m以下で使用してもよい |
| 曲げの規定 | 湾曲部の内側半径はダクト半径以上 | 湾曲部の内側半径はダクト半径以上、有効断面を損なわない |
(公共仕様書 第3編1.14.1・1.14.9・2.2.2.4・2.2.5.3)フレキを長く引き回したり潰して曲げたりすると、有効断面が減って風量不足の原因になります。
規格と板厚の考え方
圧力区分
公共仕様書はダクトを常用圧力で3つに区分しています(第3編1.14.1 表3.1.13)。
| 区分 | 正圧 | 負圧 |
|---|---|---|
| 低圧ダクト | +500Pa以下 | -500Pa以内 |
| 高圧1ダクト | +500Paを超え+1,000Pa以下 | -500Paを超え-1,000Pa以内 |
| 高圧2ダクト | +1,000Paを超え+2,500Pa以下 | -1,000Paを超え-2,000Pa以内 |
板厚早見表(低圧ダクト)
同仕様書の低圧ダクトの最小板厚を、長方形ダクトとスパイラルダクトで並べると次のとおりです(表3.1.14・表3.1.23より)。
| 板厚(mm) | 長方形ダクトの長辺(mm) | スパイラルダクトの呼称寸法(mm) |
|---|---|---|
| 0.5 | 450以下 | 450以下 |
| 0.6 | 450を超え750以下 | 450を超え710以下 |
| 0.8 | 750を超え1,500以下 | 710を超え1,000以下 |
| 1.0 | 1,500を超え2,200以下 | 1,000を超え1,250以下 |
| 1.2 | 2,200を超えるもの | 該当なし |
高圧1・高圧2ダクトは板厚が別表になり、厨房用排気ダクトの板厚は特記(設計図書で個別に指定)です。排煙ダクトは亜鉛鉄板製または1.5mm以上の鋼板製で特記によるとされています。民間工事では設計図書がどの基準に拠るかを最初に確認し、指定がなければ発注者の仕様書・最新の規格で確認してください。
使い分けの実務判断:選定チェック表
施工者側で種類を提案・調整するときは、次の順で確認すると判断がぶれません。
| 確認項目 | 判断の目安 |
|---|---|
| 1. 圧力区分は低圧か | 高圧1・高圧2ならグラスウール製ダクトは候補外。板厚は高圧用の表で確認 |
| 2. 長辺は1,500mmを超えるか | 超えるならコーナーボルト工法(共板等)は公共仕様書の適用外 |
| 3. 天井懐は足りるか | 足りなければ扁平化を検討。ただし縦横比は原則4以下 |
| 4. 末端で消音が要るか | 要るならグラスウール製の丸ダクトで吹出口ボックスへ接続 |
| 5. 器具への最終接続か | フレキは1.5m以下で、潰さずに曲げる |
| 6. 厨房排気・排煙か | 一般空調とは別基準。公共仕様書では亜鉛鉄板製排煙ダクトの長方形はアングルフランジ工法の高圧ダクト。設計図書と所轄の指導に従う |
改修工事では、既存ダクトの工法・寸法の事前調査が選定の前提になります。
現場でよくある失敗例
ダクト工事の失敗は、種類の選定よりも段取りの詰め漏れから起こります。
- 製作寸法と現場実測の食い違い。改修工事では製作発注前の現場実測を省略しないでください
- 搬入経路の確認漏れ。大きな角ダクトがエレベーターや階段を通らない場合は分割製作になり、現場接続が増えます
- ダンパーの点検口忘れ。ダンパー位置が決まった時点で内装業者と点検口位置を調整します
- 吊りの取り合い。天井内の取り合い調整にダクト施工図を持ち込み、ルートを先に押さえます
段取り事項を施工計画書に落とし込む方法は施工計画書の作成ガイドを参照してください。
積算・見積での注意点
ダクトの数量は、スパイラルは長さとサイズ、角ダクトは展開面積で拾うのが一般的です。継手・分岐・ダンパー類の拾い漏れは、そのまま利益の目減りになります(配管長の拾い出しを効率化する方法)。グラスウール製ダクトを使う場合は、減る保温工事・消音器と材料・手間の違いを見積上で整理しておくと説明しやすくなります。角ダクトは板金工場の製作リードタイムも見積段階で確認します。
まとめ
- グラスウール製ダクトは、断熱・消音を兼ねたガラス繊維製のダクトです。公共仕様書では末端の消音用丸ダクト(板厚25mm)の位置づけで、圧力・温度に上限があります
- スパイラルは既製品で速い円形の主力、角ダクトは断面の自由度、扁平ダクトは天井懐対策(縦横比は原則4以下)、フレキは1.5m以下の末端接続用です
- 板厚は圧力区分と長辺(スパイラルは呼称寸法)で決まります。設計図書の指定基準を最初に確認してください
- 厨房排気・排煙は別基準です。一般空調の感覚で流用しないでください
出典・参考
- 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部。第3編1.14「ダクト及びダクト附属品」、2.2「ダクトの施工」)
- 公共建築工事標準仕様書 掲載ページ(国土交通省)
- グラスウール製ダクトの音響性能(音響技術 No.189, 2020年3月)(日本音響材料協会 会員の頁。マグ・イゾベール株式会社によるメーカー解説)
- オーバルダクト製品情報(アローエム。メーカー公表資料)
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