ダクトの保温工事|結露・熱損失を防ぐ施工のポイント
ダクト保温の目的は3つある
ダクトの保温は「冷気を逃がさないため」とだけ理解されがちですが、実務では3つの目的を区別して考えると、仕様の判断を間違えません。
- 結露防止。冷房時、ダクト表面は通過する冷風で冷やされ、天井内の湿った空気に触れて結露します。保温はダクト表面を露点以上に保つための皮膜です
- 熱損失の防止。空調機で作った冷温熱が搬送中に逃げれば、その分は電気代の損失です。長いダクトほど効きます
- 結露・熱以外の機能。外気に面するダクトの凍結防止、室内側の吹出し温度の維持、わずかですが消音への寄与もあります
どの目的が主かは系統によって違い、それが「保温する・しない」の判断に直結します。
保温が必要なダクト・不要なダクト
現場でよく迷う判断を整理します。最終的には設計図書の仕様が優先ですが、考え方は次のとおりです。
| 系統 | 保温の要否の考え方 |
|---|---|
| 空調の給気(SA) | 原則必要。冷風で表面結露するため防露が主目的 |
| 空調の還気(RA) | 温度差が小さく省略される場合もあるが、仕様確認が必要 |
| 外気取入(OA) | 夏の高湿外気・冬の低温外気が通るため必要になることが多い |
| 一般換気の排気(EA) | 温度差が小さく不要が基本。ただし外壁貫通部付近は結露に注意 |
| 厨房排気 | 保温ではなく耐火・清掃の要求で別仕様。一般保温の感覚で扱わない |
判断に迷う典型が外気取入ダクトです。梅雨時の外気は露点が高く、冷えた天井内を通る区間で外面結露ではなく内面結露も起こり得ます。外気系統の仕様は「とりあえず給気と同じ」で流さず、設計者に確認する価値があります。
グラスウール保温の標準手順
角ダクトの保温で最も一般的なグラスウール保温材(ボード・マット)の施工手順です。
- 下地確認。ダクト表面の油・水分・ほこりを落とします。接着が命の工法で、下地の汚れは数年後の脱落につながります
- 保温ピンの取り付け。ダクト面に接着式の保温ピンを配置します。ピンの本数と配置は保温材の垂れ下がりを防ぐ要で、底面(下向き面)は特に密に打ちます
- 保温材の張り付け。保温材をダクト寸法に裁断し、ピンに差し込んでワッシャーで固定します。角部は保温材同士を突き付けて隙間を作らないよう裁断精度を上げます
- 継ぎ目処理。突き合わせ部に隙間があればグラスウールを詰め、ガムテープではなくアルミガラスクロステープ等の指定材で目張りします
- 外装仕上げ。仕様に応じて亀甲金網巻き、アルミガラスクロス外装などで仕上げます。人が触れる場所・見える場所は仕上げ材の指定を確認します
スパイラルダクトの場合は筒状の成形保温材(ワンタッチ式)を使うことが多く、施工は速くなりますが、継ぎ目とエルボ部の処理が品質の分かれ目になる点は同じです。
結露事故が起きやすい5つの部位
ダクト保温の結露クレームを部位別に見ると、発生箇所はいつも同じです。
- フランジ部。接続フランジの金属が保温の外に露出していると、そこが熱橋になって結露します。フランジも含めて覆う納まりが原則です
- 吊りボルト・支持金具まわり。保温を切り欠いて支持している納まりは、切り欠き部が弱点になります。支持と保温の取り合いを最初に決めておきます
- ダンパーの操作部・点検口。可動部・開閉部は保温が途切れます。操作性を確保しつつ露出金属面を最小にする納め方を、製作段階から考えます
- チャンバー・ボックス類。現場製作のチャンバーは保温が後回しになりやすく、面積が大きいぶん結露量も多くなります
- 機器接続部のキャンバス継手。防振のためのキャンバス部は保温できない構造のものがあり、周囲環境によっては結露対策の検討が必要です
これらはいずれも「面」ではなく「取り合い」の問題です。保温工の腕だけでなく、ダクト製作と支持計画の段階で保温の納まりを考えているかどうかが品質を決めます。ダクト本体の工法選定についてはダクトの種類と規格をご覧ください。
外貼り保温と内貼り(内張り)を混同しない
ダクトの断熱には、ここまで述べた外貼り保温のほかに、ダクト内面に貼る内貼りがあります。両者は見た目が似ていても役割が違います。
- 外貼り保温: 主目的は防露と熱損失防止。ダクト外面の結露を防ぐには外側に貼るしかありません
- 内貼り: 主目的は消音。送風機の音や風切り音を吸音するため、機械室まわりや居室直前の区間に設けます。副次的に断熱性もありますが、外面の防露は担えません
「内貼りがあるから保温は不要」という判断は、目的の取り違えです。逆に、消音が要求されている系統に外貼りだけで応えることもできません。設計図書で内貼り・外貼りの指定区間を確認し、どちらの目的の仕様なのかを理解して施工することが、手戻りを防ぎます。
内貼りダクトの施工では、吸音材の剥離・飛散防止の処理(表面材の仕様)と、ダクト内寸が内貼り厚さのぶん小さくなる点(風量計算上の有効断面)にも注意が必要です。製作寸法の指示時に「内寸か外寸か」を板金業者と確認しておくのは、内貼りダクトの定番の落とし穴対策です。
工程と検査のポイント
- 保温は天井内の最後発工程になりがちで、閉じ込み直前に突貫になります。ダクト工程と保温工程の間の待ち時間を工程表で見える化し、突貫での目張り省略を防ぎます
- 閉じ込み前検査では、下向き面のワッシャー留め忘れ、フランジ部の覆い、テープ目張りの浮きを重点確認します
- 隠蔽部の保温状態は写真で系統ごとに記録します。冷媒配管の断熱と同様、後から確認できない工程です。記録の残し方は冷媒配管の断熱施工でも触れています
保温材の運搬・保管も品質のうち
保温の品質は、施工前の材料の扱いで既に決まり始めています。グラスウールは水を含むと断熱性能が落ち、乾いても元に戻らないことがあります。現場でありがちな失敗は次のとおりです。
- 屋外仮置きで夜露・雨に当てる。搬入日の調整がつかない場合も、必ず屋内かシート養生下で保管します
- 上に物を載せてつぶす。つぶれた保温材は厚みが戻らず、その部分だけ性能が落ちます
- 開梱後の放置で汚損・吸湿。使う分だけ開ける、が原則です
また、天井内での施工時期にも注意が要ります。建物の外周部が閉じる前(窓ガラスが入る前)に保温を施工すると、雨の吹き込みで濡らすリスクがあります。工程調整では「保温はいつから安全に施工できるか」を建築側と確認しておくと、材料のやり直しを防げます。
見積・積算での注意
保温工事の見積は、ダクトの展開面積に保温仕様を掛けて拾うのが基本ですが、失敗しやすいのは付帯部分です。
- チャンバー・ボックス類の面積の拾い漏れ
- エルボ・分岐の割増を見込んでいない
- 亀甲金網・外装材のグレード指定の見落とし
- 高所・狭所での施工性による歩掛りの差
外注の保温業者に見積を取る場合も、この4点を仕様書に明記しておくと、着工後の追加請求のもめごとを防げます。数量拾いの基本的な考え方は配管長の拾い出しを効率化する方法が参考になります。
まとめ
- 保温の目的は防露・省エネ・機能の3つ。系統ごとに主目的を意識すると要否と仕様を誤りません
- 施工はピン配置と継ぎ目・目張りが品質の核心。下向き面と角部に手を掛けてください
- 事故は面でなく取り合いで起こります。フランジ・支持部・ダンパー・チャンバーを製作段階から設計してください
- 保温は閉じ込み前最後の突貫になりやすい工程です。工程の見える化と閉じ込み前検査で守ってください
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