気密試験と真空引きの手順|圧力・保持時間の目安と判定の考え方
この2つの試験だけは、絶対に手を抜けない
冷媒配管工事の最終関門が、気密試験と真空引きです。気密試験は「漏れる配管をボードの裏に隠さない」ための試験、真空引きは「配管内の空気と水分を冷媒系統に持ち込まない」ための作業です。
どちらも省略や短縮が外から見えないため、工程が押した現場でしわ寄せを受けやすい工程でもあります。しかし気密不良は冷媒漏れとして、水分残留は膨張弁の氷結・冷凍機油の劣化・酸による腐食として、必ず後から請求書になって返ってきます。この記事では、両者の手順と判定の考え方を、現場でそのまま使える粒度で整理します。
なお、試験圧力や判定基準は機器メーカーの据付説明書・設計図書の指定が最優先です。本記事の数値は一般的な実務の目安として読み、実際の現場では必ず該当機器の技術資料で確認してください。
気密試験の手順
準備
- 試験媒体は乾燥窒素を使います。酸素・空気・冷媒での加圧は厳禁です(酸素は爆発の危険、冷媒は漏れ探知と環境の両面で不可)
- 機器側を試験圧力に耐えられない場合は切り離すか、サービスバルブを閉じて配管側のみを試験区間にします
- ゲージマニホールド・圧力計は試験圧力に対して適切なレンジのものを使います
段階昇圧
いきなり試験圧力まで上げず、段階的に昇圧して各段階で漏れを確認します。一般的な進め方は次の3段階です。
| 段階 | 圧力の目安 | 確認内容 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 0.3MPa程度 | 大きな漏れの有無(音・ゲージ低下) |
| 第2段階 | 1.5MPa程度 | 中程度の漏れの確認 |
| 第3段階 | 規定試験圧力 | 全接続部の発泡確認と保持試験 |
R410A・R32系の機器では、第3段階の試験圧力が4MPa前後に指定されることが多く、使用する窒素調整器・ホースもその圧力に対応している必要があります。段階を踏む理由は安全のためだけでなく、低圧で見つかる大漏れを高圧まで上げる前に潰したほうが窒素も時間も節約できるからです。
接続部の確認と圧力保持
規定圧力に達したら、フレア・ロウ付け部・フランジなどすべての接続部に発泡液を塗布し、泡の発生がないかを確認します。そのうえで規定時間(メーカー指定。数時間から24時間程度)の圧力保持に入ります。
温度補正を忘れない
保持試験で最も多い誤判定が、温度変化による圧力低下を漏れと勘違いする(またはその逆の)ケースです。窒素の圧力は温度でおよそ変動し、目安として温度1°Cの変化で約0.01MPa動きます。朝に加圧して夕方に確認すれば、漏れがなくても圧力は動いて見えます。加圧完了時と判定時の周囲温度を必ず記録し、補正後の圧力で判定してください。判定式と温度を試験記録に残しておくと、監督員への説明も一度で済みます。
真空引きの手順
真空引きの目的は「乾燥」
真空引きの目的を「空気を抜く作業」とだけ理解していると、時間を短縮したくなります。本当の目的は配管内の水分を沸騰蒸発させて排出する乾燥作業です。真空度が上がるほど水の沸点が下がり、常温でも水分が気化して排出されます。だから到達真空度と、そこからの時間が重要になります。
実務手順
- 真空ポンプはゲージマニホールドを介して接続し、可能なら液側・ガス側の両方から引きます
- 到達目安は マイナス0.1MPa(ゲージ読み)ではなく、真空計で5 torr(約667Pa)以下、メーカーによってはさらに低い指定です。連成計の針が振り切れた状態は真空の証明になりません
- 規定真空度に達した後も、配管長に応じて1時間以上を目安に運転を継続し、水分を確実に排出します
- ポンプ停止後、バルブを閉じて放置し、真空度の戻りを確認します。数時間放置して真空度がほとんど戻らなければ合格。じわじわ戻る場合は水分残留または微少漏れを疑います
冬場・雨天後の注意
低温時は水の蒸発が遅く、同じ真空度でも乾燥に時間がかかります。また、施工中に雨水が入った疑いがある配管は、通常の真空引きでは乾き切りません。窒素で加圧と破壊(ブレーク)を繰り返して内部の水分を追い出してから真空引きをやり直すなど、時間を惜しまない対応が必要です。ここで焦った現場は、ほぼ確実に数年後にやり直しています。
失敗パターン別の切り分け
| 症状 | 疑うべき原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 加圧直後に圧力が下がる | 大きな漏れ、ホース接続部の緩み | 第1段階からやり直し、石けん水で特定 |
| 保持試験で緩やかに低下 | 温度低下、微少漏れ | 温度補正で再判定、補正後も低下なら探知 |
| 真空度が規定まで上がらない | ポンプ能力不足、オイル劣化、大漏れ | ポンプ単体の到達度を確認して切り分け |
| 真空放置で徐々に戻る | 水分残留、微少漏れ | 窒素ブレークで乾燥後に再試験 |
| 発泡確認で泡が消えない | フレア不良、ロウ付けピンホール | 増し締めでなく再加工が原則 |
注意したいのは、フレア部の漏れを増し締めで止めようとする対応です。規定トルクを超えた増し締めはフレア割れを招き、事態を悪化させます。漏れたフレアは切り落として再加工が原則です。
工程に試験時間を正しく織り込む段取り
気密試験と真空引きの品質は、技術より工程の余裕で決まる面があります。保持試験には数時間から24時間、真空引きにも配管長に応じた時間が必要で、これを工程表に載せていない現場は、内装業者のボード工程に追われて試験を短縮する誘惑と戦うことになります。
段取りの要点は次のとおりです。
- 気密試験の保持時間を工程表に明記する。「配管完了」と「断熱・隠蔽開始」の間に試験日程が線として入っていれば、他業種との調整も交渉ではなく確認になります
- 系統ごとに区切って試験する。全系統の配管完了を待って一括試験にすると、1カ所の漏れで全体が止まります。完了した系統から順に試験すれば、手直しと後工程が並行できます
- 加圧は前日の夕方、判定は翌朝の同温度帯に。温度補正の誤差を減らし、日中の作業時間も潰しません
- 真空引きは電源計画とセットで。仮設電源しかない時期の真空引きは、ポンプの連続運転時間を確保できるかを先に確認します
「試験は工程の調整弁ではなく、動かせないマイルストーン」として扱う。この一点を現場の共通認識にできれば、品質問題の大半は起こる前に消えます。
試験記録を「会社の資産」にする
気密試験と真空引きは、記録が残っていて初めて品質の証明になります。最低限、次を記録に残してください。
- 試験区間・使用機材・試験圧力・開始と終了の日時
- 加圧時と判定時の周囲温度、温度補正後の判定値
- 真空引きの到達真空度・運転時間・放置後の戻り
- 立会者と、発泡確認の実施範囲
これらを毎現場で確実に残すには、試験計画の段階で様式を決めておくのが早道です。施工計画書に試験計画として盛り込む書き方は空調設備工事の施工計画書 作成ガイドを参考にしてください。記録写真の撮り方・整理は電子黒板アプリを使うと現場の負担が減ります。
まとめ
- 気密試験は段階昇圧と温度補正が肝。補正なしの判定は誤判定のもとです
- 真空引きの目的は乾燥。到達真空度と継続時間、放置確認までがワンセットです
- 漏れたフレアは再加工。増し締めで逃げないことが結局いちばん安上がりです
- 数値はメーカー指定が最優先。本記事の目安は社内基準づくりの叩き台にしてください
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