冷媒配管の施工手順|吊り間隔・ろう付け・気密試験の基準
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編集・発行:KMC株式会社
結論: 冷媒配管は「支持→接合→気密試験→真空脱気→保温→充塡」の順
冷媒配管(エアコンの室内機と室外機をつなぐ、冷媒が流れる銅管)の施工手順は、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では、配管を敷設・支持し、ろう付け等で接合したあと、「配管完了後、気密試験及び真空脱気し、冷媒の充塡作業を行う」とされ、保温工事は「気密試験完了後に行う」と定められています。気密試験は業界ガイドライン JRA-GL14 によって行い、そのあと全系統の高真空蒸発脱水処理(真空ポンプで管内の水分を蒸発させて抜く作業)を行います。
支持の基準は、銅管の吊り金物の間隔が、基準外径9.52mm以下で1.5m以下、12.70mm以上で2.0m以下です。ろう付けは「配管内に不活性ガスを通しながら行う等の酸化防止措置」を取ります。以下、工程ごとに基準と確認ポイントを整理します。工事ごとの条件は、発注者の仕様書(特記)と機器メーカーの据付説明書で必ず確認してください。
工程と基準の早見表(自社作成)
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版の規定を、工程順に並べ直したものです。
| 工程 | 基準・やること | 根拠(第2編) |
|---|---|---|
| 材料 | 銅管は JIS H 3300。肉厚は冷凍保安規則関係例示基準による。断熱材被覆銅管の断熱厚さは液管10mm以上、ガス管20mm以上 | 2.1.2.4・表2.2.5 |
| 曲げ | 1/2H材(半硬質の銅管)は専用工具で曲げてよい。曲げ半径は管径の4倍以上 | 2.4.6(2) |
| 横引きの支持 | 吊り金物の間隔は外径9.52mm以下で1.5m以下、12.70mm以上で2.0m以下。断熱材と吊り金物の間に保護プレート | 2.6.2(9)・2.4.6(3) |
| 立て管の支持 | 振れ止めは各階1箇所。立て管長の中間部で1箇所固定し、他は伸縮を妨げない支持 | 表2.2.21・2.6.2.3 |
| 継手 | 保守点検できる位置に設ける | 2.4.6(4) |
| 接合 | 原則ろう付け。不活性ガスを通しながら行う等の酸化防止措置。微燃性冷媒は特記による | 2.4.6(10) |
| 試験 | 隠ぺい・保温の前に、JRA-GL14による気密試験。その後、全系統の高真空蒸発脱水処理 | 2.9.1・2.9.2 |
| 保温 | 気密試験の完了後。液管とガス管は共巻きしない(断熱材被覆銅管を除く) | 2.4.6(6) |
| 連絡配線 | 冷媒管と共巻きするなら、保温施工の後に共巻き | 2.4.6(7) |
工程0: 施工前の段取り
配管ルートと管径の確認
着工前に、機器の冷媒配管仕様(管径・最大配管長・最大高低差・追加充塡の要否)をメーカーの技術資料で確認します。実際の配管長と高低差が機器の許容範囲に収まるかを、図面任せにせず自分で照合してください。改修工事でルートが変わると、設計時の前提が崩れていることがあります。
材料の確認と保管
標準仕様書は冷媒用の銅管を JIS H 3300(銅及び銅合金の継目無管)とし、肉厚は冷凍保安規則関係例示基準によるとしています。断熱材被覆銅管(工場で断熱材をかぶせた銅管)は JCDA 0009 によるもので、断熱厚さは液管10mm以上、ガス管20mm以上です。結露のおそれがある箇所の厚さは特記によります。
銅管は内部の清浄が大切です。搬入した銅管は両端の閉止(キャップ等)を保ったまま保管し、雨水や粉じんの侵入を防ぎます。現場で切った端部も、作業を中断するときは閉止しておきます。
工程1: 配管の敷設と支持
横引き管の吊り間隔
| 銅管の基準外径 | 吊り金物の間隔 |
|---|---|
| 9.52mm以下 | 1.5m以下 |
| 12.70mm以上 | 2.0m以下 |
(公共建築工事標準仕様書 第2編 2.6.2(9))
液管とガス管を共吊りする場合、形鋼振れ止め支持(形鋼で組んだ横揺れ止め)の間隔は液管の外径で決めますが、液管が25mm未満ならガス管の外径によります。冷媒管と制御線を共吊りする場合は、支持部で制御線を傷めないようにします。
断熱材被覆銅管を吊るときは、断熱材と吊り金物の間に保護プレートを入れ、自重で断熱材が食い込まないようにします(2.4.6(3))。断熱材がつぶれると、その部分が結露の起点になります。
曲げと立て管
1/2H材は専用工具で曲げ加工してよく、曲げ半径は管径の4倍以上とします。立て管は各階1箇所で振れ止めし、立て管長の中間部で1箇所固定して、ほかは温度変化による伸縮を妨げない支持にします。あわせて頂部と最下部で熱伸縮を吸収する措置をとります(2.4.6(9)、2.6.2.3)。
天井内では、ケーブルラックやダクトとの上下関係を先に決めておかないと、後から無理な曲げやつぶしが起きます。取り合いは図面段階で決めておくのが原則です。
工程2: フレア加工
フレア接続(銅管の端をラッパ状に広げ、ナットで締める接続)は、加工の不良が漏れに直結する箇所です。
- 管はパイプカッターで直角に切断し、バリ取りは切粉が管内に入らないよう管を下向きにして行います
- 頭出し寸法(フレアダイスから管端を出す長さ)は工具で違います。三菱重工サーマルシステムズの冷媒配管工事説明書では、R32用フレアツール(クラッチ式)で0〜0.5mm、従来のフレアツールで0.7〜1.3mmです
- 締め付けはトルクレンチで、据付説明書の規定トルクを守ります
寸法・トルクの比較と失敗例はフレア加工の失敗例と正しいやり方にまとめています。
工程3: ろう付けと窒素ブロー
標準仕様書は、冷媒配管の接合を原則ろう付けとし、ろう付け・溶接は「配管内に不活性ガスを通しながら行う等の酸化防止措置を講ずる」と定めています。微燃性冷媒(R32など)を使う場合の接合は特記によります。
管内に空気が残ったまま加熱すると、内面に酸化皮膜ができます。三菱重工サーマルシステムズの説明書は、酸化皮膜がはがれるとキャピラリチューブ・膨張弁の詰まりや圧縮機の故障の原因になるとし、窒素ガスの流量を「0.05m³/h、又は減圧弁で0.02MPa以下が適当」としています。
- 窒素は減圧弁と流量計を付けた容器から流し、配管側の端部は行き止まりにしない
- 操作弁の近くは、弁本体を濡れタオル等で冷やしながらろう付けする
- 火気作業の許可・消火器の配置は元請のルールに従う
窒素ブローをしたかどうかは、完成後に外から分かりません。流量計とボンベが写る作業写真を残す運用にしておくと、施工品質を説明できます。手順の詳細は窒素ブローとロウ付けの手順を参照してください。
工程4: 気密試験・真空脱気
試験は、隠ぺい、配管完了後の塗装、保温施工のいずれかより前に行います(2.9.1)。冷媒管の気密試験は JRA-GL14「フロン類を用いた冷凍空調機器の冷媒漏えいガイドライン」により、気密試験の後に全系統の高真空蒸発脱水処理を行います(2.9.2)。試験圧力・保持時間・温度補正は機種とガイドラインで決まるので、気密試験と真空引きの手順で確認してください。
工程5: 保温
保温工事は気密試験の完了後に行い、液管とガス管は共巻きしません(断熱材被覆銅管を除く)。断熱材被覆銅管の継目は次のようにして、すき間ができないようにします(2.4.6(6)(8))。
- 断熱粘着テープは、伸縮量を見込んで継目部に1/2重ね巻きする
- 冷媒用断熱材接続テープは断熱材表面に密着させ、端部はテープが重なるように巻き付ける
室内機と室外機の連絡配線を冷媒管と共巻きする場合は、冷媒管の保温施工の後に共巻きします(2.4.6(7))。断熱の詳細は冷媒配管の断熱を参照してください。
写真で残す項目
国土交通省の営繕工事写真撮影要領(令和5年改定)の撮影対象表(機械設備工事編)は、配管工事について次を撮影対象にしています。冷媒配管にもそのまま使える分け方です。
| 撮影項目 | 撮影対象 | 撮影時期 |
|---|---|---|
| 機材 | 規格(表示マーク、種別、口径等)、保管状況等 | 搬入時 |
| 施工 | 工具(規格等) | 施工前 |
| 施工 | 各種接合工法(施工状況、品質管理状況等) | 施工時 |
| 施工 | 支持及び固定(方法、間隔確認状況、伸縮等) | 施工時 |
| 施工 | 隠ぺい(壁埋設、天井内、暗渠内等)配管状況 | 施工時 |
| 試験 | 気密試験等の状況 | 試験開始時・試験中・試験終了時 |
| 保温 | 配管等(作業状況、品質管理状況等) | 施工中 |
隠ぺい部の撮り方は隠蔽部の施工写真管理にまとめています。
典型的な施工不良と防ぎ方
| 施工不良 | 起こること | 防ぐための基準・確認 |
|---|---|---|
| フレアの寸法不足・傷 | 接続部からの冷媒漏れ | 指定の頭出し寸法で加工し、外観を確認 |
| 締め付けトルクの過大・不足 | フレア割れ、漏れ | トルクレンチで規定トルク |
| 窒素ブローの省略 | 酸化皮膜による膨張弁の詰まり・圧縮機の故障 | 不活性ガスを通しながらろう付け(2.4.6(10)) |
| 真空脱気の不足 | 管内に水分が残る | 気密試験後に高真空蒸発脱水処理(2.9.2) |
| 断熱のすき間・食い込み | 結露・天井のシミ | 1/2重ね巻き、保護プレート(2.4.6(3)(8)) |
| 吊り間隔が粗い | 配管の振れ・たわみ | 外径に応じて1.5m以下/2.0m以下(2.6.2(9)) |
どれも施工したその日には運転できてしまう不良です。工程ごとの記録(フレア確認・窒素ブロー・試験値)を残し、会社として品質を示せる状態にしておくことが大切です。
改修工事での既設配管再利用は「診断してから」
空調更新工事で既設の冷媒配管を再利用できれば、工期も費用も下がります。ただし再利用の可否は、メーカー資料に沿った診断で決めます。
- 管径と耐圧の適合。新しい機器の冷媒に対して、既設配管の管径・肉厚が新機器の要求に適合するかをメーカー資料で確認します
- 既設冷媒・冷凍機油の履歴。冷媒の種類が変わる更新では、残った油や汚れが問題になります。洗浄の要否と方法を機種選定と同時に検討します
- 気密の確認。再利用する配管も、接続替えの後は新設と同じく気密試験と真空脱気を行います
- 圧縮機が故障した系統は特に慎重に。配管内に劣化した油や異物が回っている前提で、洗浄・交換を判断します
確認した項目と結果は見積書・打ち合わせ記録に残し、発注者と共有してください。
記録を仕組みにすると、品質は個人技でなくなる
冷媒配管の品質管理は、決めた手順を全員が守り、守った証拠が残ることに尽きます。施工計画書に試験計画と施工基準を書き、現場では工程写真と試験記録を残します。施工計画書の書き方は空調設備工事の施工計画書 作成ガイドにまとめています。
まとめ
- 冷媒配管は、支持・接合のあと気密試験と真空脱気を行い、保温は気密試験の完了後、最後に冷媒を充塡します
- 銅管の吊り間隔は外径9.52mm以下で1.5m以下、12.70mm以上で2.0m以下です。断熱材被覆銅管は保護プレートで食い込みを防ぎます
- ろう付けは窒素などの不活性ガスを通しながら行います。微燃性冷媒の接合は特記を確認します
- 試験は隠ぺい・保温の前に行い、写真と試験記録を残します
出典・参考
- 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部。第2編 2.1.2.4・表2.2.5、2.4.6、2.6.2(9)、2.6.2.3・表2.2.21、2.9.1、2.9.2)
- 営繕工事写真撮影要領 令和5年改定(国土交通省大臣官房官庁営繕部。撮影対象表(機械設備工事編)「配管工事」「保温・塗装工事」)
- 冷媒配管工事説明書 PSC012D007B(三菱重工サーマルシステムズ)(メーカー公表資料。フレア加工の頭出し寸法、窒素ブローの手順と流量)
関連リンク
※ 2026年10月1日:冒頭で施工手順の順番を言い切る形に改め、公共建築工事標準仕様書の吊り間隔・曲げ半径・立て管の支持・ろう付け・試験・保温の規定(工程と基準の早見表)、営繕工事写真撮影要領の撮影項目、出典を追加しました。出典で確かめられない施工不良の発覚時期の記載は削除し、フレア寸法の説明をメーカー説明書の値に改めました。
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