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窒素ブローとは|冷媒配管ロウ付けの目的・流量・手順

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窒素ブローとは|冷媒配管ロウ付けの目的・流量・手順

結論: 窒素ブローは「管の内側を酸化させない」ための作業

窒素ブローとは、ロウ付け(または溶接)の間、配管内に窒素ガスを流して管内の酸素を追い出し、内面に酸化皮膜(黒いスケール)ができるのを防ぐ作業です。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)は、冷媒管のろう付け及び溶接作業は「配管内に不活性ガスを通しながら行う等の酸化防止措置を講ずる」と定めています。流量の目安は、三菱重工サーマルシステムズの冷媒配管工事説明書で「0.05m³/h、又は減圧弁で0.02MPa以下が適当」とされています。

流量や手順は機種・メーカーで指定が異なることがあります。発注者の仕様書・機器メーカーの据付説明書で必ず確認してください。

ロウ付けはどんな接合か

冷媒配管の接続方法は、大きくフレア接続とロウ付けです(フレアの実務はこちらの記事)。公共建築工事標準仕様書は、冷媒配管の接合を「原則として、ろう付け」としています。ビル用マルチや大型機の現場では、1系統で多数のロウ付けが発生し、その全数が健全であることが求められます。

ロウ付けは、母材(銅管)を溶かさず、母材より低い温度で溶けるロウ材を継手の隙間に流し込む接合法です。現場では「溶接」と呼ばれることもありますが、母材を溶かさない点が溶接とは違います。窒素ブローが必要なのはロウ付けでも溶接でも同じです。なお、三菱重工の説明書は、ロウ付けは高度な技術と経験を要するため、溶接技能士またはガス溶接技能講習を修了した者が作業するよう求めています(資格と安全の枠組み)。

なぜ窒素ブローが必要なのか

銅管を大気中で加熱すると、管内面に酸化皮膜ができます。三菱重工の説明書は、酸化皮膜がはがれてキャピラリチューブ(細管の絞り部品)や膨張弁の詰まり、圧縮機の故障の原因になるとしています。三菱電機の施工マニュアルも、窒素を通さずにロウ付けすると配管内部に多量の酸化被膜が生成すると説明しています。症状が出るのは運転を始めてからで、原因の特定は困難です。完成後に外から確認できない工程だからこそ、省略してはいけません。

市販の酸化防止剤で代用する方法もありますが、三菱電機の据付説明書は「市販の酸化防止剤は配管腐食や冷凍機油の劣化の原因になることがある」として、窒素置換による無酸化ロウ付けを求めています。

窒素ブローの手順

三菱重工サーマルシステムズの冷媒配管工事説明書の手順を整理します。

  1. 窒素容器に減圧弁と流量計を付けます
  2. 配管材に窒素を導く管は細い銅管を使い、容器側に流量計を付けます
  3. 配管材と窒素用導管のすき間はシールして、外から空気が入らないようにします
  4. 配管側の端部は行き止まりにせず、抵抗を付けて開放します(テープなどで絞って管内を窒素で満たす)
  5. 流量は0.05m³/h、または減圧弁で0.02MPa以下が適当です
  6. ロウ材に適した温度でロウ付けします
  7. 操作弁と配管のロウ付けは、弁本体を濡れタオル等で冷やしながら行います
  8. 作業後、配管が手で触れる程度に冷えるまで窒素を流し続けます
  9. フラックスを使った場合は完全に除去します

端部を完全にふさぐと管内の圧力が上がり、健全なロウ付けになりません。「流れている」状態を保つのがポイントです。三菱電機の据付説明書は、接続管を操作弁から外し、ユニットの外でロウ付けするよう指定している機種もあります。

はまり込み深さとすき間の目安

ロウは毛細管現象で隙間に流れ込むため、差し込み深さと隙間が品質を左右します。三菱重工の説明書の表です。

配管径(mm)最小はまり込み深さ(mm)すき間(mm)
5以上8未満60.05〜0.35
8以上12未満70.05〜0.35
12以上16未満80.05〜0.45
16以上25未満100.05〜0.45
25以上35未満120.05〜0.55
35以上45未満140.05〜0.55

同説明書は、銀ロウの場合のすき間は0.05〜0.1mm程度が接続強度を最も高くできるとしています。

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実技の手順とポイント

  1. 差し込みと隙間。上の表のはまり込み深さを確保します。管の変形・傷は差し込み前に直します
  2. 清掃。接合部の油・酸化膜・汚れを落とします。汚れはロウをはじく原因です
  3. 加熱。接合部全体を均一に温めます。ロウ材を炎で直接溶かすのではなく、母材の熱でロウを溶かすのが原則です。三菱重工の説明書は、適正温度で、必要最小限の加熱面積でロウ付けするよう求めています
  4. ロウの供給。適温を確認してからロウ材を当て、必要量だけ流します。盛りすぎは品質ではありません
  5. 固定と冷却。溶けたロウが固まる間に配管が動いたり振動したりすると、割れが入って漏れの原因になります。加熱直後に水をかけると配管が劣化する場合があるため、水はかけないことが推奨されています(三菱重工説明書)
  6. 後始末。フラックスの残渣を除去し、周囲の焦げ・養生の状態を確認します。残火確認までがロウ付け作業の範囲です

ロウ材の選び方の注意

三菱重工の説明書は、ロウ材について次の注意を挙げています。

  • 亜硫酸ガス濃度が高いなど腐食性の雰囲気では、りん銅ロウ(BCuP)はイオウと反応してもろい化合物を作り、冷媒漏えいの原因になるため、銀ロウなど他のロウ材にし、ロウ付け部の塗装などの対策をとる
  • 低温ロウ(溶融温度450℃未満のもの、いわゆる「はんだ」)は強度が弱いので使わない
  • 修理で再ロウ付けする場合は同一のロウ材を使う。名称が同じでも号数が違うと再ロウ付けできない場合がある
  • フラックスは母材・ロウ材・方法に合ったものを選び、塩素含有率の低いものにする。残った塩素は冷凍機油劣化の原因になる

「どのロウ材をどこに使うか」を会社の標準として決め、在庫管理の常備品と対応させておくと、現場ごとの迷いと誤用が減ります。

悪条件でのロウ付け: 風・上向き・狭所

  • 屋外の風。風は炎を流し、母材の温度を安定させません。防風の養生をしてから加熱します。火力で押すのは過加熱と酸化のもとです
  • 上向き姿勢。天井内の上向きは、重力でロウが垂れやすく最も難しい姿勢です。練習段階で経験させてから現場に出します
  • 狭所・仕上げ近接。周囲の部品や可燃物は、金属板での遮蔽や濡れウエスで保護します(三菱重工説明書の過熱保護)。火気管理の手順も確実に。作業性が悪い場所ほど、配管ルート設計の段階で接続位置を見直す価値があります

失敗モードの見分け方

失敗見た目・症状主な原因
ロウの未回り全周にロウが見えない加熱不足・不均一、隙間過大
ピンホール微細な穴・巣汚れ、加熱ムラ、ロウ不足
過加熱母材の変色・溶け・変形炎の当てすぎ、細径管への過剰火力
割れ冷却後の漏れ凝固中の振動・移動
酸化スケール外からは見えない窒素ブローの省略
もらい熱の損傷近接部品の変形・焦げ弁類・断熱材の保護不足

完成後の健全性は気密試験で全数確認します。日本冷凍空調設備工業連合会のガイドライン(JRC GL-01)は、ロウ付け部から漏えいした場合は接続部を外し、付着したスラッジ(汚れ)を除去・洗浄して再施工するよう定めています。見た目が良くても、試験に通るまでは合格ではありません。

窒素ブローのチェックリスト(自社作成)

  • 減圧弁と流量計を付けたか
  • 導管と配管のすき間をシールしたか
  • 配管の端部を行き止まりにせず、抵抗を付けて開放したか
  • 流量はメーカー指定の範囲か(三菱重工の例: 0.05m³/h、または減圧弁で0.02MPa以下)
  • 加熱前から窒素を流し、冷えるまで流し続けたか
  • 弁類を濡れタオル等で保護したか
  • 実施状況を写真に残したか

品質を「証明できる」状態にする

ロウ付けと窒素ブローは、完成後には確認できない工程の代表です。記録が品質の一部になります。

  • 窒素ブローの実施状況(ボンベ・流量計・配管を同じ画角に入れた写真)を系統ごとに残す
  • ロウ付け箇所数と施工者を記録し、VRF等の大規模系統では試験記録とセットで保管する
  • 端材での練習・水没確認・先輩の合格判定という段階を踏ませ、新人の練習手順と同様に教育記録も残す

まとめ

  • 窒素ブローは、ロウ付け・溶接中に管内の酸素を追い出し、酸化皮膜を防ぐ作業です。公共建築工事標準仕様書も酸化防止措置を求めています
  • 流量はメーカー指定に従います(三菱重工の例: 0.05m³/h、または減圧弁で0.02MPa以下)。端部は行き止まりにしません
  • はまり込み深さと隙間、母材で溶かす加熱、凝固中に動かさないことが健全な接合の条件です
  • 見えない工程だからこそ、写真と記録で品質を証明できる状態にしてください

出典・参考

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