ドレン配管の勾配基準は1/100以上|ドレンアップの注意点
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編集・発行:KMC株式会社
結論: ドレン配管の勾配は「原則1/100以上」
空調のドレン配管(室内機の結露水を流す配管)の勾配は、国土交通省の公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)で「原則として、1/100以上」と定められています。メーカーの据付説明書も「下り勾配(1/100以上)とし、途中山越えやトラップを作らない」と指定しています(三菱重工サーマルシステムズ、三菱電機の説明書)。1/100は1m進むごとに1cm下がる勾配で、10m横引きすれば10cmの高低差が必要です。
天井懐が浅く1/100が取れないときは、ドレンポンプで排水を持ち上げるドレンアップを使います。ただし持ち上げられる高さ(揚程)は機種ごとに決まっています。発注者の仕様書・機器メーカーの据付説明書で必ず確認してください。
ドレン管と一般の排水管では勾配の基準が違う
「ドレン勾配 基準」を調べると、1/50や1/200といった数字も出てきます。これは一般の排水管の基準で、ドレン管とは別の規定です。
| 配管 | 勾配の基準(公共建築工事標準仕様書 2.6.1) |
|---|---|
| ドレン管 | 原則として1/100以上 |
| 屋内横走り排水管 呼び径65以下 | 最小1/50 |
| 屋内横走り排水管 呼び径75、100 | 最小1/100 |
| 屋内横走り排水管 呼び径125 | 最小1/150 |
| 屋内横走り排水管 呼び径150以上 | 最小1/200 |
空調のドレン管は口径にかかわらず1/100以上、と覚えておけば混乱しません。
勾配の早見表(自社作成)
1/100で計算した、横引き長さごとの必要な高低差です。
| 横引き長さ | 必要な高低差(1/100) |
|---|---|
| 3m | 3cm |
| 5m | 5cm |
| 10m | 10cm |
| 15m | 15cm |
| 20m | 20cm |
見積・施工図の段階で、室内機のドレン口の高さから天井内の最下点までの余裕とこの表を照らせば、自然勾配で行けるか、ドレンアップが必要かを早めに判断できます。
自然勾配の施工ポイント
- 中だるみを作らない。公共建築工事標準仕様書の吊り間隔は、塩ビ管の呼び径80以下で1.0m以下、呼び径100以上で2.0m以下です(表2.2.20)。たるんだ部分に水が溜まると汚泥が堆積し、詰まりの起点になります
- 勾配は水平器で確認しながら吊る。目見当の勾配は、長い横引きの途中で逆勾配の区間を作ります
- 山越えを作らない。途中で上って下る形は空気溜りと滞留の原因です
- 他業種の配管・ダクトとの交差で勾配を犠牲にしない。交差の調整は天井内の取り合い協議で先に解決しておきます
集合ドレンと合流
複数台のドレンを1本にまとめるときは、合流後の口径を接続する室内機の容量に合わせて選定します。日本建設業連合会の設備工事情報シート(ダイキン工業編)は、集合ドレン配管を機器のドレン出口より約10cm低い位置で接続すること、同一系統で二重トラップにしないことを施工要領として挙げています。合流は流れの向きに沿わせ、流れを正面からぶつけない形にします。
トラップと空気溜りの考え方
公共建築工事標準仕様書は、ユニット形・パッケージ形・マルチパッケージ形空気調和機などのドレン管に、送風機の全静圧以上の落差をとった空調機用トラップを設けるとしています(2.4.8、形式は特記)。送風機の静圧で機内が負圧になる機種では、トラップがないと運転中に空気を吸い込んで水が流れなくなるためです。一方、天井カセット形(天井埋込で四方に吹き出す室内機)などトラップ不要の機種も多く、上の設備工事情報シートでも「一部の天井埋込ダクト型はトラップが必要」とされています。要否と形状は機種の据付説明書で確認します。
トラップを設けるときは、指定の落差を確保し、点検・清掃ができる位置と構造にします。掃除できないトラップは汚泥詰まりを起こします。
「通気を取れば流れが良くなる」と考えがちですが、三菱重工サーマルシステムズの説明書は「ドレン配管にエア抜きは、絶対に設けない」と明記しています。空気溜りは勾配と山越え防止で作らないのが基本で、エア抜きを付けるかどうかは自己判断しないでください。
ドレンアップの注意点とデメリット
天井カセット形などでドレンポンプを使って排水を持ち上げる場合、自然勾配とは別の制約が加わります。
揚程は機種で違う
| 機種の例 | 最大揚程 | 出典 |
|---|---|---|
| 三菱重工サーマルシステムズ 天吊形ドレンアップセット | ユニット上面から最大500mm | 据付説明書 MR17959 |
| 三菱電機 壁掛形用ドレンアップメカ PAC-SK01DM | 本体下面から最大850mm | 技術資料 |
同じ「ドレンアップ」でも、測る基準点も上限値も違います。三菱重工の説明書は「経年使用していくと性能は低下していきます」として上限を超えないよう求めています。カタログの最大値ぎりぎりの計画は、ポンプの劣化で最初に破綻します。
立ち上げ位置とその後の勾配
- 立ち上げは機器の直近で。設備工事情報シート(ダイキン工業の例)は、ドレンソケット根元から300mm以下の位置で垂直に立ち上げるとしています。数値は機種で異なるので説明書で確認します
- 立ち上げ後の横引きは下り勾配に戻す。三菱電機の資料も排水側は下り勾配(1/100以上)としています。ポンプ停止時に水がスムーズに抜ける形にしておくのが原則です
ドレンアップのデメリット
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 保守が必要 | 三菱重工の説明書は定期的な内部洗浄を求め、1年以上清掃しないと故障して排水できなくなる場合があるとしています |
| 性能が落ちる | 経年でポンプ性能は低下します。揚程に余裕を持たせる必要があります |
| 故障時に溢れる | ポンプが止まれば排水も止まります。停止時に逆流しにくい配管形状が欠かせません |
| 電源と部品が増える | ポンプの電源・配線と、別売部品の費用がかかります |
自然勾配が取れるなら自然勾配を優先し、ドレンアップは「勾配が取れない場合の手段」と位置づけるのが無難です。
露付き対策と材質
ドレン水は冷たいため、配管表面は結露します。ドレン配管自体が第二の水漏れ源になり得ます。
- ドレン配管は断熱(防露)します。メーカー説明書もドレン配管の断熱を指定しており、公共建築工事標準仕様書は空調用ドレン管の保温を「給排水衛生設備工事」の排水管の項によるとしています
- 断熱材の継ぎ目・支持部の処理を丁寧に。隙間が一点でもあればそこに結露します
- 材質は一般に硬質塩ビ管を使います。機器接続部は点検・交換を考慮して確実に固定します
- 空気調和用機器の排水は、排水管に直結せず間接排水とします(公共建築工事標準仕様書 2.4.8)
通水試験までがドレン工事
公共建築工事標準仕様書は「ドレン管は、通水試験を行う」と定め、試験は隠ぺい・保温施工の前に行うとしています(2.9.1、2.9.4)。各室内機のドレンパンに実際に水を注ぎ、次を確認します。
- 末端まで水が流れ、途中で滞留・逆流しないこと
- 合流部・接続部から漏れがないこと
- ドレンアップ機はポンプ運転で正常に排水され、停止時に逆流しないこと
系統ごとの実施記録と写真を残してください。天井を閉じた後にシミが出たとき、通水試験の記録があるかどうかで原因協議での立場がまるで違います。隠蔽前の記録写真の残し方はCloudCameraの紹介記事も参考にしてください。
改修工事では「既存ドレンの再利用判断」が分かれ目
空調更新工事で既存ドレンを深く考えずに「既存流用」で見積もると、引き渡し後の水漏れを自社が背負うことになります。確認すべきは次の4点です。
- 通水確認。汚泥で半分詰まった配管は、新しい機器をつないだ瞬間から水漏れの予備軍です
- 勾配の実測。躯体のたわみや支持の脱落で勾配が失われていることがあります
- 接続位置の適合。新しい機器のドレン口の位置・高さ、ドレンアップ仕様の変更に既存配管が合うか
- 材質と劣化。保温の劣化・割れ・接着部の状態
グレーなら、見積に「既存ドレン再利用の場合は通水確認のうえ、不良時は別途協議」と明記し、リスクの所在を発注者と共有してください。
よくある失敗と対策
| 失敗 | 起こること | 対策 |
|---|---|---|
| 中だるみ | 汚泥堆積から詰まり・逆流 | 吊り間隔を守り、水平器で確認 |
| 逆勾配・山越え | 滞留水があふれる | 長い横引きは途中でも勾配を実測 |
| トラップなし(必要な機種) | 空気を吸って排水不能 | 据付説明書と特記で要否を確認 |
| 自己判断のエア抜き | 排水不良 | メーカー指定に従う |
| 揚程の上限超え | 経年でポンプが排水できない | 機種の最大揚程に余裕を持たせる |
| 断熱の省略 | 配管表面の結露で天井シミ | ドレン配管も防露を標準に |
| 通水試験の省略 | 引き渡し後に発覚 | 隠ぺい前に試験し記録を残す |
まとめ
- ドレン管の勾配基準は原則1/100以上。一般排水管の1/50〜1/200とは別の規定です
- 中だるみと山越えを作らず、エア抜きは自己判断で付けないこと
- トラップの要否、ドレンアップの揚程は機種依存。据付説明書の確認を習慣にしてください
- ドレンアップは保守が前提の設備。自然勾配が取れるならそちらを優先します
- 断熱と通水試験の記録までを工事の範囲と捉えると、天井シミ事故は防げます
出典・参考
- 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(国土交通省) … 2.4.8 排水及び通気配管、2.6.1 勾配、2.6.2 吊り及び支持、2.9 試験、3.1.4 保温
- 天吊形 ドレンアップセット据付説明書 MR17959(三菱重工サーマルシステムズ)(メーカー公表資料)
- ドレンアップメカ PAC-SK01DM 技術資料(三菱電機)(メーカー公表資料)
- 設備工事情報シート 空調機のドレン配管(日本建設業連合会、ダイキン工業編)(業界団体の情報シート。同シートは日建連の基準・規格ではないと明記)
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