ダクトの漏気対策と気密試験|シール施工の勘所
漏気は「見えない風量泥棒」
送風機は設計どおり回っているのに、末端の吹出口で風量が足りない。この定番トラブルの犯人の一角が、ダクトの漏気です。ダクトの継目・接続部の隙間から漏れた空気は、天井裏に捨てられ、誰の役にも立ちません。
漏気の害は風量不足だけではありません。冷暖房された空気の漏れはエネルギーの直接損失であり、天井内に漏れた冷気は結露の原因になり、漏れ・吸い込みの気流は天井内のほこりを運んで汚損・異臭の経路にもなります。ダクトの気密は、地味ですが風量・省エネ・品質のすべてに効く土台の品質です。この記事では、漏れやすい箇所と施工の勘所、確認の方法を整理します。
どこから漏れるか: 弱点部の地図
ダクトの漏気は、平らな板面からはほぼ起こりません。漏れるのは必ず「つなぎ目」です。
- 角ダクトのフランジ接続部。ガスケットの切れ目・コーナーの重ね不足が定番です。共板フランジのコーナー部は、四隅こそ丁寧に
- ハゼ(板の折り込み接合)部。特に加工精度の低いハゼ、現場で叩いて調整したハゼは漏れます
- スパイラルダクトの差込み接続部。シール材の塗り忘れ・テープの下巻き不足
- 分岐・枝取り出し部。現場加工の取り出し口は、工場製作品より漏れリスクが高い箇所です
- ダンパー軸・測定孔・点検口まわり。可動部・開口部は構造的に漏れやすく、専用の納まりが要ります
- 機器接続のキャンバス継手。劣化・破れの定番箇所で、経年漏気の主役です
新設の施工では、この地図を頭に入れて「つなぎ目を作った人が、その場でシールまで完了する」流れを作るのが基本です。後からまとめてシール、は塗り忘れの母です。シール完了箇所にマーキングを付けて消し込む運用にすれば、塗り忘れは目で見て分かる状態になります。
シール施工の勘所
- シール材は用途適合品を。ダクト用シール材を、内面か外面か・使用温度・不燃性の要件に合わせて選びます。「余っていたコーキング」の流用は、剥がれ・臭気の原因になります
- 塗るタイミングは組み立て時。差込み接続は、差し込む前に継手へシール材を塗るのが原則です。組んだ後から外側に塗る「化粧シール」は、隙間の奥に届いていません
- テープは下地が命。ダクト用テープは、油分・ほこりを拭いてから、押さえ込んで密着させます。冬場は粘着力が落ちるため、貼り付け面を清掃し確実に圧着します。スパイラルの二重巻きの作法のとおりです
- コーナー・貫通部は重ね方を決めておく。漏れやすい形状部は、シール+テープの併用や重ね順を標準化し、職人ごとの我流をなくします
漏気の確認: 試験から簡易チェックまで
漏気試験(要求がある場合)
高い気密性が求められる系統(設計図書で漏気量の基準が指定される場合)では、ダクトの一部区間を閉止して送風・加圧し、漏気量を測定する試験を行います。試験の方法・基準は設計図書・仕様書の指定に従い、実施区間・圧力・結果を試験記録として残します。
一般系統の簡易確認
基準指定のない一般空調でも、確認の習慣は品質を上げます。
- 送風機を運転し、接続部に手をかざして漏れ風を確認する(単純ですが有効です)
- 発煙管・スモークで漏れの可視化を行う
- 運転時の異音(笛のような音・シューという音)は漏気のサインです
- 風量測定で送風機側と末端合計の風量差を見る。差が大きければ、経路のどこかで失われています
漏気を減らす「設計と製作」の工夫
シール施工の腕と同じくらい、つなぎ目の数と質を設計段階で決めることが効きます。
- 接続数を減らす。定尺の使い方・分割位置の工夫で、現場接続の数そのものを減らします。つなぎ目が減れば、漏気のリスクも施工の手間も減ります
- 工場加工率を上げる。現場の手加工より、工場製作の精度の高い接続部のほうが気密は安定します。板金工場との連携で、現場合わせの箇所を最小化する分割計画を立てます
- 測定孔・点検口は最初から。後から開けた孔の塞ぎは漏気源になりがちです。風量測定・ダンパー点検に必要な開口は、施工図段階で計画し、専用のキャップ・蓋で処理します
- 高圧系統は工法から変える。要求気密の高い系統は、シールの頑張りではなく、工法選定(アングル工法・ガスケット仕様)で応えるのが正道です
よくある質問
- どのくらいの漏気なら許容されますか。系統の設計・仕様書の指定によります。基準の指定がない一般空調でも、「手をかざして分かる漏れ」「音のする漏れ」は施工品質として是正すべきレベルと考えてください
- 内貼りダクトのシールはどうしますか。内貼り面を傷めない位置・方法での処理が必要です。内貼りと外貼りの違いを踏まえ、製作段階で気密処理を織り込みます
- 古いダクトのテープがボロボロです。全部やり直しですか。劣化範囲によります。系統単位の巻き直しか部分補修かは、風量測定で実害の程度を確認してから提案すると、費用対効果で説明できます
既存ダクトの漏気診断と改修
「風が弱くなった」という相談の調査では、ファン・フィルターと並んでダクト漏気を疑います。
- 天井内の点検口から、接続部のテープ劣化・シールの剥がれ・キャンバスの破れを目視します。経年建物のテープは硬化・剥離していることが多く、見た目で分かります
- ダクト表面や周辺の汚れの筋は、長期間の漏れ気流の痕跡です。汚れが教えてくれる漏気マップとして読めます
- 補修は清掃+再シール+テープ巻き直しが基本です。広範囲の劣化では、部分補修より系統単位での巻き直し・更新の判断も必要になります。更新調査の観点に「ダクト気密の状態」を含めてください
漏気補修は、機器を替えずに風量と省エネを回復できる、省エネ改修の段階2に相当する提案です。「ファン交換の前に、漏れを止めましょう」と言える会社は、診断力で信頼を得ます。
会社の標準にする
- シール材・テープの指定品を決め、在庫管理の常備品にします。現場ごとの寄せ集め材料が品質のばらつきの元です
- 「つなぎ目はその場でシール」「コーナーは重ねて」「閉じ込み前に運転確認」を作業手順書に明文化します
- 閉じ込み前の写真記録に、接続部・シール状態のカットを含めます
まとめ
- 漏気は風量・省エネ・結露・汚損に効く見えない損失です。弱点はすべて「つなぎ目」にあります
- シールは組み立て時に、テープは清掃と圧着。後からの化粧シールは効いていません
- 基準のある系統は漏気試験、一般系統も運転確認と風量差のチェックを習慣にしてください
- 既存ダクトの漏気診断は、機器更新より安い風量回復・省エネ提案になります
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