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空調の省エネ改修|運用改善・インバータ化・機器更新と補助金
公開日:最終更新日:
編集・発行:KMC株式会社
空調の省エネ改修は、運用改善 → 保守による性能回復 → インバータ化・制御追加などの部分改修 → 高効率機器への更新、の順に、投資の小さい手から無駄を消していく仕事です。高効率機への更新には国の省エネ補助金(設備単位型)が使える場合があり、令和7年度補正予算の公募では「高効率空調(業務・産業用エアコン等)」が対象設備に含まれています。
この記事では、改修の4段階と、法令・公的資料で確かめられる制度・補助金の要点、効果の示し方を整理します。
省エネ改修の4段階(早見表)
| 段階 | 主な手 | 投資 | 前提・注意 |
|---|---|---|---|
| 1 運用改善 | 運転スケジュール・設定温度・外気導入量の見直し、中間期の外気利用 | ほぼなし | 外気量はビル管法の基準(CO2 1000ppm以下)を守る範囲で |
| 2 保守による回復 | 熱交換器・フィルター清掃、冷媒漏えいの修理、冷却塔の清掃・水管理、断熱補修 | 小 | 「今の機械を本来の性能に戻す」段階 |
| 3 部分改修 | ファン・ポンプのインバータ化、CO2連動外気制御・スケジュール制御・台数制御の追加 | 中 | 風量・流量を絞れる運転条件と、絞る制御があること |
| 4 機器更新 | 高効率機への更新、熱源方式の見直し | 大 | 運転時間が長く効率の悪い系統から段階的に。補助金の要件を確認 |
段階1: 運用改善(投資ほぼゼロ)
- 運転スケジュールの適正化。営業時間と空調の発停のずれ、休日の無駄な運転を、集中リモコン・制御の設定で正します
- 設定温度の適正化と管理。建築物衛生法の特定建築物では、居室の温度の管理基準は18℃以上28℃以下で、冷房時は外気との差を著しくしないこととされています(ビル管法の基準)
- 外気導入量の見直し。過剰な外気導入は空調負荷そのものです。CO2濃度を確認しながら適正化します
- 中間期の外気利用。外気が涼しい季節・時間帯は、換気・外気冷房で冷房負荷を減らします(全熱交換器のバイパス運転の発想です)
- フィルターサイン・警報の放置解消。異常を知らせているのに誰も見ていない状態を直します
段階2: 保守による回復(投資小)
- 熱交換器・フィルターの清掃。汚れは能力低下と消費電力増の両方を招きます。保守の基本は、それ自体が省エネ施策です
- 冷媒量の適正化。漏えいによる冷媒不足は効率を悪化させます。点検での発見と修理が省エネにつながります
- 冷却塔の清掃・水管理。水冷系では冷却水側の汚れが熱源効率を左右します
- ダクト・配管の断熱補修。断熱の劣化・欠損は搬送のロスです
この段階を飛ばした省エネ提案は、診断をしていないのと同じです。
段階3: 部分改修(投資中)
- ファン・ポンプのインバータ化。送風機・ポンプの回転数を制御して搬送動力を減らします。風量・流量を絞れる運転条件があるかの確認が前提です
- 制御の追加。CO2連動外気制御、スケジュール制御、台数制御の追加・改修。中央監視・BEMSのデータがあれば、効果の推定精度が上がります
- 照明のLED化との連動。照明の発熱が減れば空調負荷も減ります。他工事と連動した提案は、顧客の投資全体を最適化します
段階4: 機器更新(投資大)
- 高効率機への更新。電気代・故障リスク・部品供給の3本柱で語ります(更新提案の作法)
- 熱源方式の見直し。中央熱源の更新・個別分散化は、省エネと運用性を同時に変える一手です
- 対象の優先順位づけ。全館一斉ではなく、運転時間が長く効率の悪い系統から。効果の出る順に更新する段階計画が、予算の現実に合います
省エネ改修に関わる制度の要点
| 制度 | 確かめられる要点 | 空調改修との関係 |
|---|---|---|
| 省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律) | 原油換算で年1,500kl以上のエネルギーを使用する事業者に、エネルギー使用状況等の定期報告を求める。工場等の設置者には取組の目安となる判断基準を示す。令和5年4月から非化石エネルギーも報告対象 | 顧客が対象事業者なら、空調改修は報告・計画の材料になる |
| 建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律) | 2025年4月以降に工事に着手するものから、原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付け。増改築は、増改築を行う部分のみが適合の対象 | 既存建物の空調設備だけの更新は「新築」ではない。増築を伴う改修では増築部分の設備も基準の対象になりうるため設計者に確認 |
| 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)〔令和7年度補正予算〕 | SIIが公表した「指定設備」への更新が対象(対象設備に高効率空調を含む)。省エネ要件は、省エネ率10%以上・省エネ量1kl以上・経費当たり省エネ量1kl/千万円以上のいずれか。補助対象経費は設備費(設計費・工事費は対象外)で、補助率は1/3以内、上限1億円・下限30万円(従来枠) | 高効率空調への更新提案で活用を検討できる。工事費は補助対象外なので、見積では設備費と工事費を分けて示す |
補助金は年度・公募回ごとに要件や期間が変わります。上の数値は令和7年度補正予算の公募要領の記載で、提案時は一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)の最新の公募要領と、対象機種が指定設備に登録されているかを必ず確認してください。採択や金額を顧客に断定しないことも大切です。
効果の示し方: 前提を明記する
- 現状把握から始める。電気料金明細・デマンドデータ・運転時間の実態を確認し、空調分を推定します。簡易計測器で機器別に実測できれば、提案の説得力が上がります
- 削減見込みは前提つきで示す。「〇%削減保証」のような断定は避け、計算の前提(運転時間・負荷率・電力単価)を明記します。前提が示された見込みは、外れても信頼を失いません
- 効果検証をセットで提案する。改修前後の使用量比較までを提案に含めます
効果検証のチェックリスト
- 比較の物差し(改修前の同月の使用量など)を改修前に決めた
- 外気温の違い(冷夏・猛暑)を併記して解釈できるよう、気温データを用意した
- 営業時間の変化・テナントの入れ替わり・設備の増減など、空調以外の変動要因を記録する欄を設けた
- 可能なら対象系統だけを改修前後で計測する方法を決めた
- 補助金を使う場合は、公募要領で求められる省エネ量の算定方法・報告の要否を確認した
- 検証結果を年1回の報告書として出す段取りを決めた(保守契約の報告と合わせる)
よくある失敗3パターン
- 部分最適の罠。ファンをインバータ化したのに、風量を絞る制御がなく回転数が下がらない。設備だけ入れて運用条件を設計しない改修は、投資が寝ます
- 過剰設備の罠。省エネを口実に、実負荷に対して大きすぎる機器を入れる。過大選定は部分負荷運転を増やします。「高効率機なら大きくても省エネ」ではありません
- 検証なしの罠。効果を測らない改修は、成功しても次につながらず、失敗しても気づけません
提案を通す組み立て: 経営の言葉に翻訳する
- 電気代の削減額だけでなく、デマンド(契約電力)の抑制、設備停止リスクの低減、暑熱環境の改善(工場の暑さ対策)、環境対応の対外説明に接続します
- 4段階の全体地図を先に見せ、今年やること・来年やることを分けます。段階1〜2で信頼と実績を作り、段階3〜4に進むのが現実的です
- 段階1〜2の成果報告を必ず挟むこと。小さな成功の数字が、次の投資の稟議を通します
- 削減効果は保守契約の更新材料にもなります(ストック関係)
まとめ
- 省エネ改修は、運用・保守・部分改修・機器更新の4段階で、投資の小さい順に無駄を消す仕事です
- 省エネ法は原油換算年1,500kl以上の事業者に定期報告を求め、建築物省エネ法は2025年4月以降着工の新築に省エネ基準適合を義務付けています
- 高効率空調への更新には、国の省エネ補助金(設備単位型)が使える場合があります。要件は公募ごとに確認します
- 効果は前提つきの見込みで示し、検証までセットで提案してください
出典・参考
- 資源エネルギー庁「省エネ法の概要」
- 国土交通省「建築物省エネ法第10条 省エネ基準適合義務の対象拡大について」
- 国土交通省「2025年4月からルールを改正します!全ての新築で省エネ基準適合を義務化!」(PDF)
- 一般社団法人環境共創イニシアチブ(SII)「令和7年度補正予算 省エネ・非化石転換補助金(設備単位型)」、同 公募要領(PDF)(補助金の執行団体の公表資料)
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令 第2条(厚生労働省 法令等データベース)
制度・補助金は年度ごとに改正・変更されます(最終確認:2026-10-01)。
関連リンク
※ 2026年10月1日:冒頭で空調の省エネ改修の進め方を言い切る形に改め、改修の4段階の早見表、省エネ法・建築物省エネ法・国の省エネ補助金(設備単位型)の要点の表、効果検証のチェックリスト、出典を追加しました。出典で確かめられない「建物のエネルギーに占める空調の割合は大きい」「機器効率の世代差は大きい」等の記述は削除しました。
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