冷却塔の保守点検|法定の点検・清掃頻度とレジオネラ対策
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編集・発行:KMC株式会社
冷却塔の保守点検は、建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)の特定建築物では、使用開始時と使用期間中1か月以内ごとに1回、冷却塔と冷却水の汚れを点検し、必要に応じて清掃・換水を行うこと、さらに冷却塔と冷却水の水管の清掃を1年以内ごとに1回行うことが義務です(同法施行規則 第3条の18)。厚生労働省のレジオネラ症防止の技術上の指針も同じ頻度の点検に加え、1年に1回以上の清掃と完全換水を求めています。
この記事では、法令と指針で決まっている頻度・措置と、性能を保つための現場の点検を分けて整理します。
冷却塔の点検・清掃頻度の早見表
| 対象 | 措置 | 頻度 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 冷却塔・加湿装置に供給する水 | 水道法第4条の水質基準に適合させるための措置 | ― | 施行規則 第3条の18第1号 |
| 冷却塔・冷却水 | 汚れの状況を点検し、必要に応じ清掃・換水等 | 使用開始時と、使用開始後1か月以内ごとに1回 | 施行規則 第3条の18第2号 |
| 冷却塔・冷却水の水管 | 清掃 | 1年以内ごとに1回 | 施行規則 第3条の18第5号 |
| 冷却塔・冷却水(指針) | 1か月に1回以上の汚れの点検、1年に1回以上の清掃と完全換水。必要に応じ殺菌剤等で微生物・藻類の繁殖を抑制 | 同左 | レジオネラ症防止の技術上の指針 第三 三 |
| 点検・整備の記録 | 帳簿書類として備え、5年間保存 | ― | 施行規則 第20条 |
1か月を超えて使用しない冷却塔は、その使用しない期間について1か月ごとの点検の対象外です(施行規則 第3条の18第2号ただし書)。ただし再び使い始めるときは「使用開始時」の点検が必要になります。
この義務がかかるのは、空気調和設備を設けた特定建築物(事務所・店舗などの用途で延べ面積3,000平方メートル以上等。詳しくは建築物衛生法と空調管理基準)です。特定建築物に当たらない建物でも、多数の者が使用・利用するものは建築物環境衛生管理基準に従って維持管理するよう努めることとされています(厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」、法第4条第3項)。
冷却塔は「屋上で忘れられる設備」の代表格
水冷式の熱源システムでは、冷凍機が汲み上げた熱を最終的に大気へ捨てる役目を冷却塔が担います。チラーの記事で述べたとおり、水冷式の熱源は冷却塔の状態に左右されます。ところが屋上に置かれて目に入らないため、保守の優先順位が低く扱われがちです。
冷却塔の放置は、2種類のツケになって返ってきます。ひとつは性能の低下です。充填材(冷却水を細かく落として空気に触れさせる部材)の汚れ・スケールで冷却能力が落ちると、冷凍機の凝縮温度が上がり、システム全体の効率と能力が悪化します。もうひとつは衛生リスクです。指針は、冷却塔内は日射・酸素の供給・大気への開放などで微生物や藻類が繁殖しやすく、レジオネラ属菌(肺炎などを起こす細菌)が繁殖しやすい環境になると述べています。
開放式と密閉式: 点検の着眼点が違う
冷却塔には大きく2つの方式があります。
| 項目 | 開放式 | 密閉式 |
|---|---|---|
| 仕組み | 冷却水を直接空気に触れさせて冷やす | 冷却水はコイル内を通し、散布水で冷やす |
| 水質管理 | 冷却水系統全体が汚れ・濃縮の影響を受ける | 系統内の水は空気に触れない。散布水側の管理が必要 |
| 点検の中心 | 冷却水の水質と、水槽・充填材の汚れ | 散布水側とコイル外面の汚れ・スケール |
方式を確認してから点検項目を組む、が基本です。なお建築物衛生法の点検頻度は方式で区別されていません。
レジオネラ対策: 指針が示す3つの柱
厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)は、冷却塔について次の考え方を示しています。
- スケールとスライムの抑制・除去。冷却水の一部が蒸発することで塩類が濃縮し、スケール(水あか状の析出物)が充填材などに付いて微生物が付着しやすくなります。スケールとスライム(微生物の膜)の生成を抑え、除去することが必要です
- 維持管理上の措置。供給水を水道法の水質基準に適合させ、使用開始時と使用期間中は1か月に1回以上汚れを点検し、必要に応じて清掃・換水を行い、1年に1回以上は清掃と完全換水を実施します。必要に応じて殺菌剤等を冷却水に加えます
- 構造設備上の措置。冷却塔の排気に含まれるエアロゾル(細かい水滴)は外気取入口や窓から屋内に入ったり地上に飛散したりするため、設置・修繕の際はエアロゾルの放散量が少ない構造を採用し、風向き等を考えて外気取入口・居室の窓・人が活動する場所から十分な距離を置きます
あわせて、補給水量の記録をおすすめします。補給水が急に増えたら、飛散の異常・オーバーフロー・系統の漏れを疑う手がかりになります。
公共建築工事標準仕様書が求める冷却塔の構造と据付け
更新・新設の際に確認しておきたい仕様です(公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版)。
- 塔本体は内部の点検及び掃除ができる構造とする(第3編 1.6.3)
- 水槽は排水管・オーバーフロー管・補給水管等の接続口を有し、冷却水取出口にはストレーナを備える(第3編 1.6.4)
- 冷却塔用薬液注入装置は薬注ポンプ・薬液タンク・制御装置等で構成し、適用は特記による(第3編 1.6.7)
- 据付けに際し、ショートサーキット(排気を自分で吸い込むこと)、障害物、水滴の飛散、騒音等の影響がないことを確認する。屋上に据え付ける場合は建築基準法施行令第129条の2の6と同令に基づく告示による(第3編 2.1.10)
点検項目: 日常と定期の2階層
月次(使用期間中)の確認
法定の1か月以内ごとの点検に、性能面の確認を合わせて行うと手間が一度で済みます。
- 汚れ: 水槽・充填材のスライム・藻・スケール、冷却水の濁り・着色・臭い(施行規則 第3条の18第2号の点検対象)
- 水位・給水: ボールタップの動作、オーバーフロー・給水の異常、補給水量
- 運転音・振動: ファン・モーター・減速機の異音、ベルトの状態
- 薬注装置がある系統: 薬液の残量・注入動作・設定
- 外観: 飛散水の異常、本体・架台の腐食
定期(シーズン前後・年次)
- 冷却塔と冷却水の水管の清掃(1年以内ごとに1回。施行規則 第3条の18第5号)と完全換水(指針)
- 散布装置(上部水槽・ノズル)の詰まり清掃、エリミネーター(飛散防止板)の汚れ・破損
- ファン・モーター・減速機の整備(ベルト交換・給油・絶縁確認)
- 本体・架台・ボルト類の腐食と締結確認
- 冷却能力の傾向確認(次節)
測定値を記録して前回と比較する。この保守の基本作法は冷却塔でも同じで、点検メニュー設計の考え方がそのまま適用できます。
性能低下を数字で読む: レンジとアプローチ
冷却塔の点検を「掃除の作業」から「診断の仕事」に格上げするのが、温度の読み方です。
- 冷却水の出入口温度差(レンジ)は、冷却塔が実際に捨てている熱量を映します。負荷が同じなのにレンジが縮んでいれば、水量か性能のどこかが変わっています
- 冷却水出口温度と外気湿球温度(蒸発の効果を含めた温度)の差(アプローチ)は、冷却塔の効率の指標です。アプローチが年々広がっているなら、充填材の汚れ・散水の偏り・ファン能力の低下を疑います
- 冷凍機側の凝縮圧力・凝縮温度の上昇は、冷却塔側の不調のもうひとつの現れ方です
正確な性能評価には条件を揃えた測定が必要です(公共建築工事標準仕様書では、冷却塔の冷却能力と騒音の試験は JIS B 8609「強制通風式クーリングタワー性能試験方法」によるとされています。第3編 1.6.9)。保守の現場では、同じ季節・同じ負荷帯での前年比較ができるだけでも、劣化の傾向はつかめます。
冬季の管理: 凍結と休止
- 冬季休止する冷却塔は、水槽・配管の水抜きを確実に行います。残水の凍結は、水槽・配管・ボールタップの破損につながります
- 冬季も運転する系統では、凍結防止ヒーター・水温管理・防風対策の状態確認を冬前点検に入れます
- 休止中も水を張ったまま放置しないこと。再開時は「使用開始時」の点検(施行規則 第3条の18第2号)として、汚れの点検と必要な清掃・換水を行います
保守契約への組み込み方(年間サイクルの例)
法定頻度を土台に、年間の管理サイクルとして契約に組み込むのが双方にとって合理的です。
| 時期 | 作業 | 法令・指針との関係 |
|---|---|---|
| シーズン前(使用開始時) | 汚れの点検、清掃・換水、整備、立ち上げ | 使用開始時の点検(規則 第3条の18第2号) |
| シーズン中(毎月) | 汚れの点検、水質・運転・薬注の確認、記録 | 1か月以内ごとの点検(同号) |
| 年1回(シーズン後など) | 冷却塔・冷却水の水管の清掃、完全換水、水抜き・休止処置 | 1年以内ごとの清掃(同第5号)、完全換水(指針) |
| 通年 | 点検・清掃記録の提出 | 帳簿書類の5年保存(規則 第20条) |
この年間サイクルは、閑散期の仕事づくりとも相性が良く、冷凍機側の点検とセットで提案すれば、熱源まわり一式の管理を任される入口になります。点検・清掃の実施記録(実施日・作業内容・所見)を建物側と共有すれば、管理者の帳簿書類の備付けを支えることにもなります(点検義務の記事)。
まとめ
- 特定建築物の冷却塔は、使用開始時と1か月以内ごとに汚れを点検し、1年以内ごとに冷却塔・冷却水の水管を清掃します(建築物衛生法施行規則 第3条の18)
- 厚生労働省の指針は、1年に1回以上の清掃と完全換水、必要に応じた殺菌剤の使用、外気取入口や窓から離した設置を求めています
- 開放式と密閉式で点検の着眼点が違います。方式の確認から始めてください
- レンジ・アプローチ・凝縮圧力の記録が、性能低下の診断の土台になります
- 冬の水抜き・凍結対策と再開時の点検まで含めた年間サイクルで、保守契約に組み込みます
出典・参考
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行規則(第3条の18、第20条)(厚生労働省 法令等データベース)
- 建築物における衛生的環境の確保に関する法律施行令(第1条、第2条)(厚生労働省 法令等データベース)
- 厚生労働省「建築物環境衛生管理基準について」
- 厚生労働省「レジオネラ症を予防するために必要な措置に関する技術上の指針」(平成15年厚生労働省告示第264号)(PDF) 第三
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」(PDF) 第3編 1.6.3、1.6.4、1.6.7、1.6.9、2.1.10
法令・指針は改正されることがあります(最終確認:2026-10-01)。自治体の条例・指導要綱で上乗せの定めがある場合は、そちらも確認してください。
関連リンク
※ 2026年10月1日:冒頭で冷却塔の法定の点検・清掃頻度を言い切る形に改め、建築物衛生法施行規則第3条の18と厚生労働省のレジオネラ症防止の技術上の指針による頻度の早見表、指針が示すレジオネラ対策の3つの柱、公共建築工事標準仕様書による冷却塔の構造・据付けの要点、法定頻度に合わせた年間サイクルの表、出典を追加しました。
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