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冷却塔(クーリングタワー)の保守点検|レジオネラ対策と清掃手順

冷却塔(クーリングタワー)の保守点検|レジオネラ対策と清掃手順

冷却塔は「屋上で忘れられる設備」の代表格

水冷式の熱源システムでは、冷凍機が汲み上げた熱を最終的に大気へ捨てる役目を冷却塔が担います。チラーの記事で述べたとおり、水冷式の効率の高さは冷却塔あってのものです。ところがこの設備、屋上に置かれて目に入らないためか、保守の優先順位が驚くほど低く扱われがちです。

冷却塔の放置は、2種類のツケになって返ってきます。ひとつは性能の低下です。充填材の汚れ・スケールで冷却能力が落ちると、冷凍機の凝縮温度が上がり、システム全体の効率と能力が悪化します。「冷凍機の調子が悪い」の原因が冷却塔だった、という診断は定番中の定番です。もうひとつは衛生リスクです。冷却塔の水はレジオネラ属菌の増殖環境になり得るため、管理を怠れば、建物の衛生問題という設備トラブルとは次元の違う事態につながります。

空調工事会社にとって、冷却塔の保守は技術と衛生の両面から顧客を守る仕事であり、水冷式システムを持つ顧客との保守契約の柱になる業務です。

開放式と密閉式: 点検の着眼点が違う

冷却塔には大きく2つの方式があります。

項目開放式密閉式
仕組み冷却水を直接空気に触れさせて冷やす冷却水はコイル内を通し、散布水で冷やす
効率・コスト高効率・安価やや劣る・高価
水質管理冷却水系統全体が汚染・濃縮の影響を受ける系統内はきれいに保てる。散布水側の管理は必要
主な用途一般ビル・工場の熱源水質を守りたい系統・小規模

開放式は、冷却水が大気に開かれているため、粉じん・スケール・藻・菌の影響を系統全体が受けます。点検の中心は水質と汚れです。密閉式は系統内の水質は守られますが、散布水側とコイル外面の汚れ・スケールが性能低下の主因になります。方式を確認してから点検項目を組む、が基本です。

レジオネラ対策: 「清掃と水管理」が本体

冷却塔の衛生管理で最重要なのがレジオネラ属菌への対策です。菌は水温・汚れ・滞留の条件が揃うと増殖し、冷却塔の飛散水(エアロゾル)を介して周囲に広がるリスクが知られています。建築物衛生法の管理基準や関係指針で冷却塔の維持管理(定期的な点検・清掃・水管理)が求められており、具体の頻度・方法は最新の公的資料・指針で確認する必要がありますが、実務の骨格は次の3点です。

  1. 定期的な清掃。水槽・充填材・エリミネーターの汚れ・スライムを物理的に除去します。汚れは薬剤の効きも悪くするため、清掃は水処理の前提です
  2. 水管理。冷却水の入れ替え(ブロー)による濃縮管理と、スライム・スケール・レジオネラ対策の薬注管理。水処理業者と連携する場合も、何をどの頻度で入れているかは把握しておきます
  3. 運転管理。長期間停止していた冷却塔の再稼働時は、系統内で水が滞留していた前提での清掃・水入れ替えが重要です。シーズン初めの立ち上げ手順に組み込んでください

あわせて、補給水量の記録をおすすめします。補給水が急に増えたら、飛散の異常・オーバーフロー・系統の漏れのサインです。水道メーターの月次記録という地味な数字が、異常の早期発見器になります。

点検・清掃の実施記録は、性能管理と衛生管理の両方の証拠です。実施日・作業内容・水質の測定値を建物側と共有する運用が、管理者の法令対応を支えることになります(記録の考え方は点検義務の記事と共通です)。

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点検項目: 日常と定期の2階層

日常・月次レベルの確認

  • 外観: 充填材の汚れ・藻の発生、飛散水の異常、本体・支持の腐食
  • 水位・給水: ボールタップの動作、オーバーフロー・給水の異常
  • 運転音・振動: ファン・モーター・減速機の異音、ベルトの状態
  • 水質の簡易確認: 冷却水の濁り・着色・臭い

定期(シーズン前後・年次)レベル

  • 水槽・充填材・エリミネーターの清掃
  • ファン・モーター・減速機の整備(ベルト交換・給油・絶縁確認)
  • 散布装置(上部水槽・ノズル)の詰まり清掃
  • 本体・架台・ボルト類の腐食と締結確認。屋上の強風対策として据付の健全性は特に重要です
  • 冷却能力の確認: 外気湿球温度に対する冷却水の出入口温度から、能力低下の傾向を読みます

測定値を記録して前回と比較する。この保守の基本作法は冷却塔でも同じで、点検メニュー設計の考え方がそのまま適用できます。

性能低下を数字で読む: 温度差とアプローチ

冷却塔の点検を「掃除の作業」から「診断の仕事」に格上げするのが、温度の読み方です。

  • 冷却水の出入口温度差(レンジ)は、冷却塔が実際に捨てている熱量を映します。負荷が同じなのにレンジが縮んでいれば、水量か性能のどこかが変わっています
  • 冷却水出口温度と外気湿球温度の差(アプローチ)は、冷却塔の効率の指標です。アプローチが年々広がっているなら、充填材の汚れ・散水の偏り・ファン能力の低下を疑います
  • 冷凍機側の凝縮圧力・凝縮温度の上昇は、冷却塔側の不調のもうひとつの現れ方です。「冷凍機の高圧カットが頻発する」という相談で、原因が冷却塔の汚れだったという診断は定番中の定番です

正確な性能評価には条件を揃えた測定が必要ですが、保守の現場では「同じ季節・同じ負荷帯での前年比較」ができるだけでも、劣化の傾向はつかめます。ここでも、測定値を記録し続けることが診断力の土台になります。薬注装置がある系統では、薬液の残量・注入動作・設定の確認も点検項目に含めてください。装置はあるのに薬液が空のまま数カ月、という現場は珍しくありません。

冬季の管理: 凍結と休止

  • 冬季休止する冷却塔は、水槽・配管の水抜きを確実に行います。残水の凍結は、水槽の割れ・配管破損・ボールタップ損傷という春先の定番トラブルを生みます
  • 冬季も運転する系統(年間冷房のある建物)では、凍結防止ヒーター・水温管理・防風対策の状態確認が冬前点検の必須項目です
  • 休止期間中も、水を張ったまま放置しないこと。滞留水は衛生面でも設備面でも悪さをします

保守契約への組み込み方

冷却塔の保守は、単発の清掃仕事で終わらせず、年間の管理サイクルとして契約に組み込むのが双方にとって合理的です。

  • シーズン前(春): 清掃・整備・立ち上げ
  • シーズン中: 月次の水質・運転確認
  • シーズン後(秋): 清掃・水抜き・休止処置
  • 通年: 水処理の管理状況の確認と記録

この年間サイクルは、閑散期の仕事づくりとも相性が良く、冷凍機側の点検とセットで提案すれば、熱源まわり一式の管理を任される入口になります。冷却塔を診られる会社は、水冷式システムの顧客にとって代えの利かない存在になれます。

まとめ

  • 冷却塔の放置は、システム効率の低下と衛生リスクの2つのツケになります
  • 開放式と密閉式で点検の着眼点が違います。方式の確認から始めてください
  • レジオネラ対策の本体は定期清掃と水管理・運転管理です。実施記録が管理者の法令対応を支えます
  • 冬の水抜き・凍結対策まで含めた年間サイクルで、保守契約に組み込むのが実務の正解です
  • 管理基準・指針の具体的な頻度・数値は、最新の公的資料で確認してください

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