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R32の比重は空気の1.8倍|微燃性冷媒の性質と取り扱い

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R32の比重は空気の1.8倍|微燃性冷媒の性質と取り扱い

結論: R32の比重は1.80(空気=1)。漏れると低い所にたまる

R32(HFC-32、ジフルオロメタン)のガスの比重は、空気を1とした蒸気密度比で1.80です(冷媒メーカーの安全データシート)。空気より重いため、漏れたR32は床付近やピット・くぼみにたまりやすくなります。液の密度は0.961g/cm³(25℃)です。

R32は、国際規格 ISO 817 の燃焼性区分で「微燃性(2L)」に当たり、毒性の区分と合わせて「A2L」と表記されます。地球温暖化係数(GWP、CO2を1とした温暖化への影響の大きさ)は675(IPCC第4次評価報告書の値)で、R410Aの2090より小さい冷媒です。燃えにくいものの燃えないわけではないので、施工・サービスでは「濃度をためない」「着火源を近づけない」の2点が対策の軸になります。

R32の物性早見表(自社作成)

数値はすべて下の出典にある公表値です。

項目R32の値出典
化学名ジフルオロメタン安全データシート
分子量52.02安全データシート
蒸気密度比(比重)1.80(空気=1)安全データシート
液の密度0.961g/cm³(25℃)安全データシート
沸点-51.65℃安全データシート
爆発限界(燃焼範囲)下限13.8vol%、上限29.9vol%(空気中)安全データシート
燃焼下限界濃度(LFL)0.307kg/m³日本冷凍空調工業会
燃焼性区分微燃性(ISO 817 の Class 2L)、表記はA2Lダイキン工業、日本冷凍空調学会
オゾン破壊係数0安全データシート
GWP675(IPCC第4次評価報告書)安全データシート、ダイキン工業
参考: R410AのGWP2090(IPCC第4次評価報告書)ダイキン工業

「比重1.80」が現場で意味すること

比重が空気より大きいので、漏れたR32は上に逃げず、低い所に滞留します。機械室・地下・天井の低い小部屋では、漏れた冷媒が床付近で濃くなる前提で換気と検知を考えます。安全データシートには、多量に吸入すると窒息の危険性があること、液に触れると凍傷のおそれがあることも書かれています。閉鎖空間での作業は酸欠対策の手順にも従ってください。

A2L(微燃性)の正しい理解

ISO 817 と ASHRAE Standard 34(米国の冷媒規格)は、冷媒の安全性等級を毒性と燃焼性の組み合わせで表します。日本冷凍空調学会の報告書によると、毒性の「A」は低慢性毒性(職場曝露限界400ppm以上)、燃焼性の「2L」は、火炎伝ぱがあり、燃焼熱19,000kJ/kg未満で、燃焼速度10cm/s以下のものです。ダイキン工業は、R32の特徴を「燃焼速度が10cm/秒以下と遅く」と説明しています。

実務感覚に直すと、次のようになります。

  • 簡単には着火しない。燃焼範囲の濃度に達し、着火源がある場合に燃え得る
  • 燃焼速度は遅い区分だが、燃えないわけではない。「微燃」を「不燃と同じ」と読み替えるのが最も危険な誤解
  • 空気より重く、換気の悪い低所での滞留がリスクの主な形

高圧ガス保安法上の扱い: 特定不活性ガス

冷凍保安規則(高圧ガス保安法の冷凍設備向けの省令)は第2条で、「特定不活性ガス」を「不活性ガスのうち、フルオロカーボンであつて、温度六十度、圧力零パスカルにおいて着火したときに火炎伝ぱを発生させるもの」と定義しています。

日本冷凍空調工業会の解説資料によると、2016年11月1日の冷凍保安規則改正で、R32・R1234yf・R1234zeが不活性ガスに位置づけられ、あわせて特定不活性ガスにも掲げられました。これにより不活性のフルオロカーボンと同じ区分で扱えるようになった一方、特定不活性ガスの冷凍設備には、漏えいしたガスが滞留しない構造と、滞留するおそれのある場所への検知警報設備の設置が求められます。冷凍能力による適用除外・届出・許可の区分は高圧ガス保安法と空調の冷媒で整理しています。

業務用エアコンの漏えい対策: LFLの1/4が目安

業務用エアコンについては、日本冷凍空調工業会のガイドライン JRA GL-16(微燃性(A2L)冷媒を使用した業務用エアコンの冷媒漏えい時の安全確保のための施設ガイドライン)が、空調システムの選定・施工・換気など設計・施工側の対策を定めています。法律ではありませんが、同工業会のQ&Aは、GL-16 を守れば結果的に JRA GL-20(冷凍保安規則に対応した日冷工のガイドラインで、同Q&Aは「法令に準ずる位置づけ」としています)も守られることになると説明しています。同工業会の補足説明資料(2025年)では、考え方は次のとおりです。

  • 冷媒漏えい時最大濃度 Rf = 総冷媒量 m(kg)÷(室の床面積 A(m²)× 漏えい高さ hs(m))
  • Rf が LFL の1/4以下なら、その部屋の安全対策は不要
  • 1/4を超える場合は部屋ごとに、検知器と警報装置の設置に加え、換気装置か安全遮断弁のどちらかが必要
  • 地下最下層階は LFL を超えてはならない(超えるならシステムの見直し)
  • R32の LFL は0.307kg/m³、総冷媒量の上限は150kg

漏えい高さは床面から冷媒漏えい想定箇所(室内機の設置高さ等)までの高さです。同工業会のQ&Aは、R32を GL-16 に沿って LFL の1/4で評価すれば、酸欠事故による危害も考慮できているとしています。

計算例(数値は説明用の想定)

ある系統の総冷媒量が15kg、室内機を置く部屋の床面積が40m²、漏えい高さが2.6mの場合。

  • Rf = 15 ÷(40 × 2.6)= 15 ÷ 104 ≒ 0.144kg/m³
  • LFLの1/4 = 0.307 ÷ 4 ≒ 0.077kg/m³
  • 0.144 が 0.077 を超えるので、この部屋には安全対策(検知器・警報装置と、換気装置または安全遮断弁)が必要

小さな会議室や個室は床面積が小さく、Rf が大きくなりがちです。ビル用マルチは系統の冷媒量が多いので、設計段階で部屋ごとに確認します。実際の判定は、ガイドライン本文と機器メーカーの技術資料・据付説明書で行ってください。

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施工時の注意点

ロウ付け・火気作業

  • 冷媒が入った状態の配管に火気を当てない。ロウ付けは冷媒充塡前の配管に対して行い、既設改修では冷媒を回収してから作業する
  • 配管内に冷媒ガスが残った状態での切断・加熱は避け、窒素置換してから作業する。安全データシートは、R32が裸火等の高温熱源に触れて加熱・燃焼すると、分解してフッ化水素などの毒性ガスを生じるおそれがあるとしています
  • 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)は、冷媒配管の接合を原則ろう付けとしつつ、微燃性冷媒を使う場合は特記によるとしています。発注者の特記を確認してください

工具・部材の対応確認

  • 真空ポンプ・回収機・検知器などのサービス機器が、R32に対応した製品か確認する
  • フレア加工は工具によって頭出し寸法が違います(三菱重工サーマルシステムズの説明書では、R32用フレアツール(クラッチ式)で0〜0.5mm)。詳しくはフレア加工の記事
  • 充塡方法はボンベの表示と機器の指定に従う

家庭用・小型機でも作法は同じ

R32はルームエアコンで先に普及したため、「家庭用の小さい機械だから」と軽く扱われがちです。冷媒の性質は機器の大小で変わりません。短工期・多台数の現場ほど、ポンプダウン・回収の省略や火気の油断が起こりやすいので、手順を標準化しておきます。

サービス・修理時の注意点

  • 作業前の換気と検知。漏えいの疑いがある場所では、換気を確保し、R32に対応した検知器で確認してから作業に入る
  • 漏えい修理は、冷媒を回収し、窒素置換してから火気作業に入る
  • 回収は換気の確保された環境で、対応した回収機・ボンベを使う
  • 漏えいの疑いがある状態で、火花の出得る電気作業(通電確認・部品交換)を先に行わない

漏えい対応の全体の流れは冷媒漏えい時の対応手順にまとめています。

複数冷媒の混在をどう管理するか

R22・R410A・R32の機器が同じ建物に混在する現場では、取り違えがリスクになります。

  • 作業前に機器銘板の冷媒種を確認する手順を固定し、ボンベ側も冷媒種ごとに識別(表示・置き場)する。ボンベ台帳に冷媒種の列を持たせると確実です
  • ゲージ・ホースに対応冷媒を表示し、「どれでも使える」運用をやめる
  • 異なる冷媒を同じ回収ボンベに混ぜない
  • 旧冷媒機の修理相談では、冷媒転換の状況を更新提案の判断材料として説明する

会社として整えるべき体制

  • 教育。R32の性質と作業手順を、新人・ベテランを問わず教育する
  • 手順書への反映。ロウ付け前の回収・窒素置換、換気、検知器の使用を施工計画書・作業手順書の標準記載に入れる
  • 機材の棚卸し。回収機・検知器・真空ポンプのR32対応状況を一覧にする
  • 情報の更新。JRA GL-16 は2025年にも改正されています。ガイドラインとメーカー資料の改正を確認する担当を決める

まとめ

  • R32の比重(蒸気密度比)は1.80で空気より重く、漏れると低所にたまります
  • 燃焼性区分はA2L(微燃性)、燃焼範囲は13.8〜29.9vol%、GWPは675です
  • 冷凍保安規則では特定不活性ガスに当たり、滞留しない構造と検知警報設備が求められます
  • 業務用エアコンは JRA GL-16 に沿って、部屋ごとの漏えい時最大濃度を LFL の1/4と比べて対策を決めます
  • 冷媒入り配管への火気は厳禁。回収・窒素置換・換気・検知の手順を標準化してください

出典・参考

法令・ガイドラインは改正されることがあります(最終確認:2026-10-01)。個別の設備の判断は、所管の都道府県・高圧ガス保安協会の案内と機器メーカーの資料で確認してください。

関連リンク

※ 2026年10月1日:検索の多い「R32の比重」に冒頭で答える形に改め、安全データシート・業界団体資料で確かめた物性早見表(比重・燃焼範囲・LFL・GWP)、ISO 817 の燃焼性区分の基準、冷凍保安規則の特定不活性ガスの定義、JRA GL-16 の漏えい対策の考え方と計算例、出典を追加しました。出典で確かめられない「従来冷媒は不燃性(A1)」等の比較の記載は削除しました。

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