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R32など微燃性冷媒の取り扱い|施工・サービス時の注意点

R32など微燃性冷媒の取り扱い|施工・サービス時の注意点

冷媒の世代交代は、現場の作法の交代でもある

業務用・家庭用を問わず、空調機器の冷媒はR22からR410Aへ、そしてR32などの低GWP(地球温暖化係数の低い)冷媒へと世代交代が進んでいます。背景にあるのはフロン類の環境規制で、機器を扱う限りこの流れは止まりません(制度面はフロン排出抑制法の記事を参照)。

現場にとって重要なのは、R32が微燃性(A2Lと呼ばれる区分)の冷媒だということです。従来のR410A・R22は不燃性(A1)でした。「燃えない」を前提に組み立てられてきた現場の作法は、「条件が揃えば燃え得る」を前提に組み直す必要があります。過剰に恐れる必要はありませんが、知らずに従来どおりの作業をするのは危険です。この記事では、微燃性冷媒の性質と、施工・サービスの実務で変わる点を整理します。

A2L冷媒の性質: 「微燃性」の正しい理解

冷媒の安全区分は、毒性と燃焼性で分類されます。R32が属するA2Lは「毒性が低く、燃焼性は弱い」区分です。

実務感覚に翻訳すると、次のようになります。

  • 簡単には着火しません。燃焼範囲の濃度に達し、かつ十分なエネルギーの着火源がある場合に燃焼し得る、という性質です
  • 燃焼速度は遅い区分ですが、燃えないわけではありません。「微燃」を「不燃と同じ」と読み替えるのが、最も危険な誤解です
  • 空気より重く、漏えいすると低所・くぼみに滞留します。換気の悪い空間での滞留が、リスクの主形態です

つまり対策の軸は2つです。濃度を溜めないこと(換気・漏えい管理)、そして着火源を近づけないこと(火気管理)。これは後述の作業手順すべてに通底します。

施工時の注意点

ロウ付け・火気作業

  • 冷媒が入った状態の配管に火気を当てないことが大原則です。ロウ付けは冷媒充填前の配管に対して行い、既設改修では冷媒を回収してから作業します
  • 配管内に冷媒ガスが残った状態での切断・加熱は避け、窒素置換してから作業します。従来冷媒でも分解生成物の危険があるため本来同じ作法ですが、A2Lではより厳格に守ります
  • 作業空間の換気を確保し、漏えいの可能性がある作業では低所の滞留に注意します

機器の設置基準

A2L冷媒の機器には、冷媒量と部屋の大きさに応じた設置の基準(最小床面積の考え方や、漏えい時の安全対策)が規格・メーカー基準で定められています。特に冷媒量の大きいビル用マルチでは、小さな居室に対する冷媒濃度の検討が設計段階の必須項目です。具体の基準値は機器の据付説明書と最新の規格・指針で確認してください。「今までこの部屋サイズで問題なかった」という経験則は、冷媒が変われば通用しません。

工具・部材の対応確認

  • 真空ポンプ・回収機・検知器などのサービス機器は、A2L対応品であることを確認します。着火源になり得る機器の使用は避けなければなりません
  • 配管材・フレア工具はR410A対応のものと共通の場合が多いものの、機器指定の確認が基本です(フレア加工の基本はこちらの記事
  • 冷媒の充填は液充填が指定される冷媒があるなど、冷媒ごとの作法があります。ボンベの表示と機器の指定に従ってください

家庭用・小型機でも作法は同じ

R32は家庭用ルームエアコンで先行して普及したため、「家庭用の小さい機械だから」と軽く扱われがちです。しかし冷媒の性質は機器の大小で変わりません。量販店ルートの取付応援など、短工期・多台数の現場ほど、ポンプダウン・回収の省略や火気の油断が起こりやすくなります。台数をこなす現場にこそ、手順の標準化が必要です。

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サービス・修理時の注意点

サービス作業は、冷媒が入った機器を扱うため、施工よりも注意の比重が上がります。

  • 作業前の換気と検知。室内機まわり・機械まわりの作業では、換気を確保し、必要に応じてA2L対応の漏えい検知器で確認してから作業に入ります
  • 漏えい修理の手順。漏えい箇所の特定・修理は、冷媒を回収し、窒素置換してから火気作業に入るのが原則です。「少し残っているが大丈夫だろう」の省略が、最も避けるべき行動です
  • 回収作業。冷媒回収は換気の確保された環境で、対応した回収機・ボンベを使います。回収ボンベの区分・表示の管理は在庫管理の記事で述べたとおりです
  • 電装作業との分離。漏えいの疑いがある状態で、火花の出得る電気作業(通電確認・部品交換)を行わないこと。順序の設計が安全そのものです

現場の実態: 複数冷媒の混在をどう管理するか

移行期の現場では、R22の老朽機、R410Aの現役機、R32の新設機が同じ建物に同居します。この混在こそ、実務のリスクの震源です。

  • 誤充填の防止。冷媒の取り違えは、性能問題と安全問題の両方を引き起こします。作業前に機器銘板の冷媒種を確認する手順を固定し、ボンベ側も冷媒種ごとの識別(色・表示・置き場)を徹底します。ボンベ台帳に冷媒種の列を持たせるのが確実です
  • ゲージ・ホースの使い分け。冷媒系統ごとに接続規格・耐圧が異なる場合があり、機材の共用には制約があります。機材に対応冷媒を表示し、「どれでも使える」という運用をやめることが、混在期の基本です
  • 回収冷媒の分別。異なる冷媒を同じ回収ボンベに混ぜると、再生処理ができない混合冷媒になります。回収ボンベの冷媒種管理は、環境面でもコスト面でも重要です
  • 見積・提案での説明。旧冷媒機の修理では、冷媒の入手性・価格が年々厳しくなる傾向を顧客に説明し、更新提案の判断材料として示します。冷媒の世代交代は、更新の合理性を裏付ける客観的な材料です

会社として整えるべき体制

微燃性冷媒への対応は、個人の注意ではなく会社の体制の問題として整えます。

  • 教育。A2L冷媒の性質と作業手順の教育を、新人・ベテランを問わず実施します。冷媒の取り扱いに関わる資格・講習(フロン類の充填回収に関する資格など)の取得・更新にあわせて、社内の手順書を整備するのが現実的です
  • 手順書への反映。ロウ付け前の回収・置換、換気確保、検知器の使用を、施工計画書・作業手順書の標準記載に組み込みます
  • 機材の棚卸し。回収機・検知器・真空ポンプのA2L対応状況を一覧化し、更新計画を立てます。「対応機器が1台しかなく、繁忙期に取り合いになる」状態は、省略の誘惑を生みます
  • 情報の更新。冷媒を巡る規制・規格は動き続けています。次世代冷媒の動向を含め、メーカー・業界団体の情報を定期的に確認する担当を決めておきます

まとめ

  • R32などA2L冷媒は「弱い燃焼性を持つ」冷媒です。不燃の感覚のままの作業が最大のリスクです
  • 対策の軸は、濃度を溜めない(換気・滞留対策)と着火源を近づけない(火気・電気作業の管理)の2つです
  • 冷媒入り配管への火気は厳禁。回収・窒素置換・換気・検知の手順を標準化してください
  • 設置の面積基準・工具の対応・充填作法は、機器の据付説明書と最新の規格で確認することが前提です
  • 教育・手順書・機材整備という会社の体制で対応する問題です。個人任せにしないでください

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