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厨房換気の設計・施工|グリスフィルター・排気フードの注意点

厨房換気の設計・施工|グリスフィルター・排気フードの注意点

厨房換気は「換気工事の最難関」

同じ換気でも、事務所の換気と厨房の換気は別の競技です。厨房には、大量の熱・湯気・油煙・臭気が狭い空間で同時発生し、火気があり、油がダクト内に堆積し、隣はお客様の飲食スペースという条件が揃っています。換気の失敗がそのまま「暑い厨房」「臭う客席」「油汚れ」「火災リスク」という営業問題に直結する、換気工事の最難関です。

飲食店の内装工事に絡む空調・換気は、空調工事会社にとって件数の多い市場でもあります。この記事では、厨房換気の設計・施工で外してはいけない要点を実務目線で整理します。

原則: 発生源で捕まえ、客席に漏らさない

厨房換気の設計原則は2つだけです。

  1. 油煙・熱は調理機器の直上で捕集する。部屋全体の換気で薄めようとせず、フードで発生源から直接吸う。局所換気の原則そのものです
  2. 厨房は客席より負圧に保つ。厨房の臭気が客席へ流れないよう、厨房の排気を給気より強くして、空気の流れを「客席から厨房へ」の一方通行にします

この2原則から、フードの設計と給排気バランスの計画がすべて導かれます。逆に、臭気クレームの相談を受けたときも、この2原則のどちらが崩れているかを見れば、原因はほぼ特定できます。臭気相談の初動は、営業時間中に現地でドアの開閉の重さと空気の流れ(スモークや線香の煙)を確認すること。図面より先に、実際の気流が答えを教えてくれます。

排気フードの設計・施工

捕集の効くフードの条件

  • 調理機器の範囲より一回り大きく覆う。フードの端から油煙が逃げるのは、フードが機器面より小さい・低すぎる・浅すぎるのが典型原因です
  • 機器の種類に応じて排気量を確保する。中華レンジ・フライヤーなど発熱と油煙の強い機器は、要求される排気能力が大きく変わります。厨房機器のリスト(熱源の種類と台数)を設計の入力情報として必ず入手してください
  • 気流を乱す障害を避ける。フード直下への強い給気の吹き付けやスポットクーラーの風は、せっかくの捕集気流を壊します

グリスフィルターと油対策

排気に含まれる油分は、グリスフィルターで一次捕集します。

  • フィルターは工具なしで着脱・洗浄できる位置・構造にします。洗いにくいフィルターは洗われなくなり、目詰まりと油垂れの原因になります
  • フィルターを通過した油分は、ダクト内面に堆積していきます。厨房排気ダクトの火災は、この堆積油脂に火が入ることで起こります。フィルターの日常清掃と、ダクト内の定期清掃の両方が前提の設備だと、引き渡し時に店側へ明確に伝えてください
  • フード・ダクトの継ぎ目からの油垂れ対策として、フード内の油だまり・排油の処理と、ダクトの気密性(油がにじまない接続)に注意します

防火まわり

厨房排気は火気使用室の排気であり、ダクトの材質・板厚・防火ダンパー・区画貫通処理に、一般空調と異なる防火上の要求が絡みます。具体の仕様は建物の条件と法規・所轄の指導によるため、設計図書と管轄への確認を前提に、少なくとも「一般ダクトの感覚で材料・工法を流用してはいけない領域」という認識を持ってください(ダクト工法の全体像はダクトの種類と規格)。

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給気(補給空気)の計画が半分

厨房換気の失敗事例の半分は、排気ではなく給気の不足です。大風量の排気フードを回すには、同じだけの空気を店に補給しなければなりません。給気計画を忘れると、次の症状が一斉に出ます。

  • ドアが重い・開けると風がうなる(過大な負圧)
  • フードの排気能力が出ない(吸う空気がない)
  • 客席の冷暖房が効かない(すき間から無制御の外気が流入)
  • 出入口から虫・ほこりを吸い込む

対策は、排気量に見合う給気経路(給気ファン・給気ガラリ)を設計に組み込むことです。冬の給気は冷気の吹き込みになるため、給気の加熱(または客席と干渉しない吹き込み位置)まで考えると、クレームのない店になります。厨房と客席の圧力バランスは、換気設備の種類と選定で述べた建物全体の換気計画の、最も分かりやすい実戦例です。

空調との取り合い

  • 厨房の暑さ対策は、換気だけでは限界があります。調理機器の発熱は強烈で、スポット空調・厨房用エアコンの併用が現実解になります。ただし吹き出し位置はフードの捕集を乱さない配置が条件です
  • 客席の空調負荷は、厨房からの熱侵入と換気バランスに影響されます。「客席のエアコンが効かない」の原因が厨房の給気不足だった、という事例は珍しくありません(負荷計算の基本
  • 全熱交換器は厨房排気には使えません。適用限界は全熱交換器の解説のとおりです

居抜き物件の落とし穴

飲食店案件で年々増えているのが、前のテナントの設備を引き継ぐ居抜き出店です。工事費を抑えられる半面、厨房換気には固有の罠があります。

  • 業態が変われば必要排気量も変わる。前がカフェで次が焼肉・中華なら、既存フード・排気ファンの能力はまず足りません。「換気はそのまま使えますよね」という施主の期待に、機器リストベースの再計算で答える必要があります
  • 既存ダクト内の油堆積。前テナント時代の油脂がダクト内に残ったまま営業を始めるのは、火災リスクと臭気の引き継ぎです。引き渡し前のダクト内部確認と清掃の要否判定を、見積の前提に置きます
  • 排気ファン・フードの劣化。長年の油を浴びたファンは、風量低下・異音・ベルト劣化が進んでいます。「動く」と「能力が出る」は別物です
  • 図面がない。居抜き物件は竣工図が残っていないことが多く、既存設備の調査費用と時間を計画に織り込む必要があります

居抜きの換気診断(能力・汚れ・劣化の3点確認)をメニュー化しておくと、出店前の内装業者・不動産会社からの相談窓口になれます。診断で問題を発見してからの改修提案は、価格勝負になりにくい受注経路です。

開業スケジュールに間に合わせる段取り

飲食店案件の特殊性は、オープン日が動かせないことです。逆算の段取りが要ります。

  • 厨房機器リストの確定を急がせる。フード・排気量の設計は機器が決まらないと確定できません。機器選定の遅れは換気工事の遅れに直結します
  • 保健所・消防関係の確認を早めに。厨房・換気まわりは開業前の検査で指摘を受けやすい領域です。手戻りは日程に致命傷になります
  • ダクトルートは躯体・他業種と最初に調整する。営業中ビルへの出店では、既存の排気シャフト・外壁開口の使用可否が計画の前提条件になります
  • 試運転・風量確認をオープン前に。営業が始まってからの調整は、実質できません

まとめ

  • 厨房換気の原則は「発生源で捕集」「厨房を負圧に」の2つ。設計もトラブル診断もここから始まります
  • フードは覆いの大きさと排気量、グリスフィルターは清掃性、ダクトは油堆積と防火。それぞれの急所を押さえてください
  • 給気の計画が厨房換気の半分です。排気だけ増やす設計は必ず失敗します
  • 飲食店はオープン日から逆算する仕事です。機器リストと法規確認の先行が段取りの要です

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