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厨房換気の施工ポイント|排気フード・グリスフィルターと法令基準

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厨房換気の施工ポイント|排気フード・グリスフィルターと法令基準

厨房換気の施工は、火を使う調理室に法令の基準を満たす換気設備を設けることが出発点です(建築基準法 第28条第3項、同法施行令 第20条の3)。こんろ等の近くに排気フードを付ける場合、フードは不燃材料で造り、換気扇の必要有効換気量は告示の式 V=NKQ(排気フードⅠ型はN=30、Ⅱ型はN=20、フードがない場合は40KQ)で求めます(昭和45年建設省告示第1826号)。施工では、フードで発生源から捕集すること、排気に見合う給気を確保すること、油のたまるダクトを点検・清掃できるようにすることが要点です。

この記事では、法令と公共建築工事標準仕様書で確かめられる基準と、現場で外せない段取りを分けて整理します。

厨房換気の基準早見表

項目基準根拠
換気設備が必要な室調理室等でかまど・こんろその他火を使う設備・器具を設けたもの(密閉式燃焼器具等だけの室など令で除外されるものを除く)建築基準法 第28条第3項、施行令 第20条の3第1項
給気口の位置天井の高さの2分の1以下(換気扇等を設ける場合は適当な位置)。燃焼を妨げない位置施行令 第20条の3第2項第1号イ(1)・第2号
排気口の位置天井または天井から下方80cm以内(排気フードを有する排気筒を設ける場合は適当な位置)施行令 第20条の3第2項第1号イ(2)
発熱量12kWを超える器具煙突を設ける。用途上・構造上著しく困難な場合は排気フードを有する排気筒でもよい施行令 第20条の3第2項第1号イ(5)
排気フードの材料不燃材料で造る施行令 第20条の3第2項第4号
必要有効換気量(換気扇等あり)フードなし V=40KQ/排気フードⅠ型 V=30KQ/排気フードⅡ型 V=20KQ/煙突 V=2KQ告示第1826号 第3
他の系統との連結火を使う室の排気筒・煙突は、他の換気設備の排気筒・風道等に連結しない告示第1826号 第4第3号

V・K・Qは、Vが換気扇等の必要有効換気量(1時間あたりの立方メートル)、Kが燃料の単位燃焼量あたりの理論廃ガス量、Qが火を使う設備・器具の実況に応じた燃料消費量(キロワットまたは1時間あたりのキログラム)です。告示の別表では、Kは都市ガスとLPガス(プロパン主体)で1キロワット時につき0.93立方メートル、灯油で1キログラムにつき12.1立方メートルとされています。2023年の改正(令和5年国土交通省告示第207号)で「有効換気量」が「必要有効換気量」という表記に改められましたが、式の係数は変わっていません。

排気フードⅠ型・Ⅱ型の違い(告示第1826号 第3第4号)

要件Ⅰ型(N=30)Ⅱ型(N=20)
フードの高さ(火源等の中心からフード下端まで)1m以下1m以下
覆う範囲火源等を覆う火源等と、その周囲(火源等からフードの高さの2分の1以内の水平距離)を覆う
形状集気部分は廃ガスを一様に捕集できる形状下部に5cm以上の垂下り部分があり、集気部分は水平面に対し10度以上の傾斜

火源等に面して下地と仕上げを不燃材料とした壁などがある場合は、その部分を覆わなくてもよいとされています。Ⅱ型は覆う範囲が広く形状の条件も多い代わりに、必要換気量が少なく済みます。

計算例: 都市ガスのこんろ・フライヤー等の合計が30kWの場合

燃料消費量Qは機器ごとの実況の値を合計して使います。ここでは計算方法を示すための例として、Q=30kW、K=0.93(都市ガス)とします。

フードの種類式必要有効換気量
フードなし40×0.93×301,116 立方メートル毎時
排気フードⅠ型30×0.93×30837 立方メートル毎時
排気フードⅡ型20×0.93×30558 立方メートル毎時

これは建築基準法の最低限の値です。実際の設計では、厨房機器リスト(熱源の種類・台数・消費量)を設計者・厨房業者から入手し、確認申請図書や特記仕様書の値を優先してください。

原則: 発生源で捕まえ、客席に漏らさない

  1. 油煙・熱は調理機器の直上でフードを使って捕集します。部屋全体の換気で薄めるより、発生源で吸うほうが効率的です(局所換気の考え方は換気設備の種類と選定)
  2. 厨房は客席より負圧に保ち、空気の流れを「客席から厨房へ」にします。臭気の苦情を受けたときは、この2点のどちらが崩れているかを現地の気流で確かめます

排気フードの施工(公共建築工事標準仕様書)

国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」は、公共工事の排気フードを次のように定めています。民間工事でも、特記がない場合の品質の目安として使えます。

  • 材料・構造: 厚さ1.0mm以上のステンレス鋼板(SUS430またはSUS304)を溶接加工し、フード囲いを設けた二重構造(第3編 1.14.8(1))
  • 形状: 下部に50mm以上の垂れ下がり部、集気部分の傾斜は水平面に対し10度以上(同(3))。フードの内側周囲に、凝縮水等を受けるといを設ける(同(4))
  • 吊り: アングルフランジ工法ダクトの吊りに準じ、吊り間隔は1,500mm以下、かつ四隅(第3編 2.2.5.2(1))
  • 取付け時期: 天井下地の施工後に取り付ける(同(2))

フードが機器より小さい、高すぎる、フード直下に給気やスポットクーラーの風が当たる、の3つは捕集を損なう典型です。

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グリス除去装置(グリスフィルター)

同じ仕様書の第3編 1.14.11は、調理で出る油脂分を分離・除去するグリス除去装置を、捕集した油脂分が滴下しない構造とし、次の2種類のいずれかとしています(適用は特記)。

種類仕組み排気フード内での油脂分等の除去率その他
グリスエクストラクター気流を縮流加速し、遠心力で油脂分を分離。除去した油脂分を自動洗浄90%以上ステンレス鋼板等の不燃材料
グリスフィルター排気時に油脂分を分離・付着させ、自動的に回収。容易に取り外して清掃できる構造75%以上ステンレス鋼板等の不燃材料

グリスフィルターを通り抜けた油脂分はダクト内面にたまっていきます。フィルターの日常清掃とダクト内部の定期清掃が前提の設備であることを、引き渡しの際に店側へ書面で伝えてください。

厨房排気ダクトの施工

  • 板厚: 厨房用排気ダクトの板厚は特記による(仕様書 第3編 1.14.3.5)。一般の空調ダクトの板厚表をそのまま流用しません
  • シール: 厨房・浴室等の多湿箇所の排気用の長方形ダクトは、Nシール+Aシール+Bシールとする(第3編 2.2.1(3))。シールの考え方はダクト施工の基本を参照
  • 点検: 厨房の排気ダクトは、ダクト内の点検が可能な措置を講じる(第3編 2.2.1(5))。点検口の位置は、清掃業者が実際に手を入れられる場所にします
  • 材料: グラスウール製ダクト(円形ダクト)は厨房等の火気使用室や多湿箇所に使用してはならない(第3編 2.2.5.4)。ダクトの種類はダクトの種類と規格で解説しています
  • 系統: 火を使う室の排気筒は、他の換気設備の排気筒や風道に連結しない(告示第1826号 第4第3号)。厨房排気は専用の系統とし、全熱交換器にもつなぎません

防火ダンパーの要否・区画貫通・ダクトの防火上の仕様は、建物の条件と所轄消防の火災予防条例・指導によって決まります。設計図書と所轄消防への確認を前提にしてください。

給気(補給空気)の計画

大風量の排気フードを回すには、排気に見合う空気を店に補給しなければなりません。給気が足りないと、次の症状が出ます。

  • ドアが重い、開けると風がうなる(過大な負圧)
  • フードの排気量が出ない
  • 客席の冷暖房が効かない(すき間から外気が入る)
  • 出入口から虫やほこりを吸い込む

排気量に見合う給気経路(給気ファン・給気口)を計画し、給気口は燃焼を妨げない位置に設けます(施行令 第20条の3第2項第2号)。冬の給気は冷気の吹き込みになるため、給気の加熱か、客席と干渉しない吹き込み位置まで考えます。客席の空調負荷は、厨房との換気バランスの影響を受けます(空調負荷計算の基本)。

居抜き物件の注意点

  • 業態が変われば必要換気量も変わります。前のテナントと熱源の種類・消費量が違えば、上の式で計算し直してから既存フード・排気ファンを使えるか判断します
  • 既存ダクト内の油の堆積は、火災の危険と臭気をそのまま引き継ぎます。引き渡し前にダクト内部を確認し、清掃の要否を見積の前提にします
  • 長年油を浴びた排気ファンは、風量低下やベルトの劣化が進んでいることがあります。「動く」と「必要な風量が出る」は別物なので、風量を測って確認します
  • 竣工図が残っていないことが多いため、既存設備の調査費用と時間を計画に入れます

施工前後のチェックリスト

  • 厨房機器リスト(熱源の種類・台数・燃料消費量)を入手し、V=NKQで必要有効換気量を確認した
  • フードがⅠ型・Ⅱ型のどちらの要件を満たすかを確認した(高さ1m以下、覆う範囲、垂下り5cm以上・傾斜10度以上)
  • フードは不燃材料。仕様書による場合はステンレス鋼板1.0mm以上の二重構造、吊り間隔1,500mm以下かつ四隅
  • グリス除去装置の種類(エクストラクター/フィルター)と清掃方法を決め、店側に説明した
  • 厨房排気ダクトは専用系統で、内部を点検できる点検口がある。グラスウール製ダクトを使っていない
  • 給気経路と給気口の位置を決め、燃焼を妨げないことを確認した
  • 防火ダンパー・区画貫通の仕様を設計図書と所轄消防で確認した
  • オープン前に試運転と風量測定を行い、厨房が客席より負圧になっていることを確かめた

開業スケジュールに間に合わせる段取り

  • 厨房機器リストの確定を急いでもらう。Qが決まらないと必要換気量が決まりません
  • 保健所・消防の確認を早めに行う。開業前の検査での手戻りは日程に響きます
  • ダクトのルートは、既存の排気シャフト・外壁開口の使用可否を含めて最初に調整する
  • 試運転・風量確認をオープン前に終える

まとめ

  • 火を使う調理室には、建築基準法施行令第20条の3の基準を満たす換気設備が必要です。排気フードは不燃材料で造ります
  • 必要有効換気量は V=NKQ(Ⅰ型30、Ⅱ型20、フードなし40)。Kは都市ガス・LPガスで0.93、Qは器具の燃料消費量の合計です
  • 公共建築工事標準仕様書では、フードはステンレス鋼板1.0mm以上の二重構造、垂れ下がり50mm以上・傾斜10度以上、グリス除去装置の除去率はエクストラクター90%以上・フィルター75%以上とされています
  • 厨房排気は専用系統とし、ダクト内を点検できるようにします。給気の計画が欠けると排気も働きません

出典・参考

法令・仕様書は改正されることがあります(最終確認:2026-10-01)。

関連リンク

※ 2026年10月1日:冒頭で厨房換気の法令上の要件を言い切る形に改め、建築基準法施行令第20条の3と昭和45年建設省告示第1826号による基準の早見表(必要有効換気量V=NKQ、排気フードⅠ型・Ⅱ型の要件、他系統との連結禁止)、計算例、公共建築工事標準仕様書による排気フード・グリス除去装置・厨房排気ダクトの仕様、施工前後のチェックリスト、出典を追加しました。出典で確かめられない「失敗の半分は給気不足」等の記述は削除しました。

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