換気設備の種類と選定|第1種から第3種換気の違いと用途
換気は「空気の出入りの設計」で決まる
空調が温度をつくる仕事だとすれば、換気は空気そのものを入れ替える仕事です。在室者の呼吸・臭気・湿気・粉じん・燃焼ガスを排出し、新鮮な外気を取り入れる。コロナ禍以降、発注者の換気への関心は明確に高まり、空調工事会社が換気の提案力を問われる場面は増えています。
換気設備の選定は、機器のカタログ比較から入ると迷子になります。先に決めるべきは方式、すなわち「どこから空気を入れ、どこから出すか」の設計です。この記事では、方式の分類から用途別の選定、施工の注意点までを一気に整理します。
第1種・第2種・第3種換気の違い
機械換気の方式は、給気と排気のどちらを機械(ファン)で行うかで3種類に分かれます。
| 方式 | 給気 | 排気 | 室内の圧力 | 主な用途 |
|---|---|---|---|---|
| 第1種換気 | 機械 | 機械 | 制御可能 | 事務所・店舗・会議室など全般 |
| 第2種換気 | 機械 | 自然 | 正圧 | クリーンルーム・手術室系 |
| 第3種換気 | 自然 | 機械 | 負圧 | トイレ・湯沸室・住宅など |
選定の勘所は、室内を正圧にしたいか負圧にしたいかです。
- 汚れた空気を外に出したくない部屋(臭気・湿気・汚染源のある部屋)は負圧にする。トイレ・喫煙室・厨房・ゴミ置場は第3種または排気強めの第1種で、周囲より気圧を下げて臭気の漏出を防ぎます
- 外から汚れを入れたくない部屋は正圧にする。清浄度が要る部屋は第2種または給気強めの第1種です
- 給排気のバランスを制御したい一般居室は第1種が基本。全熱交換器を使えるのも第1種だけです
この圧力関係の設計を「換気計画」と呼び、部屋単位でなく建物全体の空気の流れ(清浄な場所から汚れた場所へ)として組み立てるのが本来の姿です。
全体換気と局所換気
もうひとつの分類軸が、部屋全体の空気を入れ替える全体換気と、汚染源の近くで捕まえて排出する局所換気です。
厨房のレンジフード、溶接ヒュームの排気、実験室のドラフトチャンバーは局所換気の代表です。局所換気の鉄則は、汚染源のできるだけ近くで、拡散する前に捕捉することです。部屋全体の換気回数を増やしても、発生源で捕まえ損ねた油煙や熱は室内に回ってしまい、効率は桁違いに悪くなります。
空調工事の実務では、「全体換気で希釈するべきもの」と「局所換気で捕まえるべきもの」の切り分けを誤った改修依頼に出会うことがあります。臭気クレームの相談を受けたら、まず発生源と気流を見る。この視点だけで提案の質が変わります。
全熱交換器という選択肢
第1種換気の発展形として、給気と排気の間で熱(と湿度)を交換する全熱交換器があります。夏は冷房した室内の涼しさを、冬は暖房の暖かさを排気から回収して給気に移すため、換気による空調負荷を大幅に減らせます。
提案時に押さえるべき特性は次のとおりです。
- 空調負荷の削減効果は、室内外の温度差が大きいほど効きます。中間期は普通換気(バイパス)モードに切り替えられる機種が主流です
- 厨房・喫煙など油分・臭気の強い排気には使えません。エレメントが汚損します
- エレメントとフィルターの定期清掃が前提の機器です。保守の説明とセットで提案しないと、数年後に「効かない換気扇」になります
省エネへの関心が高い顧客には、換気の更新と同時に全熱交換器化を提案できると、単価も提案価値も上がります。保守メニューへの組み込みは業務用エアコンの保守メンテナンス項目の考え方が流用できます。
建物用途別の典型パターン
- 事務所ビル: 居室は全熱交換器付き第1種、トイレ・給湯室は第3種で負圧維持が定番構成です
- 飲食店: 厨房の排気フードが主役。排気量が大きいため、給気の補給(外気導入)を計画しないと、ドアが重い・冷房が効かない・フードが吸わないの三重苦になります
- 工場・作業場: 発生源対策の局所換気を先に設計し、全体換気で補完します。夏の暑さ対策の換気は気流計画(どこから入れてどこへ抜くか)が効きます
- 会議室・多目的室: 在室人数の変動が大きく、CO2濃度連動の風量制御が省エネと快適性を両立させます
なお、居室の必要換気量・シックハウス対策の24時間換気など、換気には建築基準法をはじめとする法規の要求が絡みます。基準値の適用は建物の用途・規模で変わるため、設計図書と最新の法令情報での確認を前提にしてください。
「換気を良くしたい」と相談されたときの調査手順
換気の相談は「なんとなく空気が悪い」「臭いが気になる」という曖昧な形でやってきます。機器の増設提案に飛びつく前に、現状を測って原因を特定する手順を持っておくと、提案の精度と信頼が変わります。
- ヒアリング。いつ・どこで・何が不快か(臭い・暑さ・こもり感・結露)。発生の時間帯と場所の特定が第一歩です
- 既設換気設備の棚卸し。図面と現地で、給気口・排気ファン・フードの位置と仕様を確認します。フィルターの目詰まりやファンの停止など、「壊れているだけ」の発見も珍しくありません
- 実測。CO2濃度計で在室時の濃度推移を、風量計またはスモークテスターで実際の空気の流れを確認します。ドアの開閉が重い・隙間風の音がするといった圧力バランスの症状も記録します
- 原因の切り分け。換気量の不足か、給排気バランスの崩れか、局所換気での捕捉失敗か、単なる設備不良か。原因ごとに対策はまったく違います
測定データ付きの改善提案は、「換気扇を増やしましょう」という感覚の提案と、顧客から見た信頼度が段違いです。測定器は高価なものでなくても始められます。調査を有償メニュー化すれば、それ自体が換気改修の入口商品になります。
施工・改修で失敗しやすいポイント
- 給気の忘れ物。排気ファンだけ増設して給気経路がなく、計画風量が出ないケースは改修工事の定番失敗です。空気は出した分しか入りません
- ダクト圧損の過小評価。曲がりの多いルートや長いフレキ配管で、ファンのカタログ風量と実風量が乖離します。ダクト設計の基本はダクトの種類と規格を参照してください
- 外壁側の処理。給排気口(ベントキャップ)の防雨・防虫・逆風対策と、外壁貫通部の防水は、換気工事のクレーム多発点です
- 完成後の風量測定の省略。風量を測らずに引き渡した換気は、効いているかどうか誰にも分かりません。測定記録までを工事範囲としてください
換気とエアコンはセットで考える
換気は空調(冷暖房)と別物のようでいて、実際には互いの成績に影響し合います。空調工事会社が両方をセットで見ると、原因究明も提案も一段深くなります。
- 「エアコンが効かない」の何割かは換気の問題です。排気過多で外気がすき間から流れ込んでいる建物では、いくら能力を上げても冷えません。逆に換気不足の会議室の「暑い・息苦しい」は、エアコンの増強ではなくCO2連動換気で解決します
- 外気は最大の空調負荷です。換気量を増やす提案には、空調負荷の増加という代償があります。全熱交換器の併用や、必要なときだけ換気量を上げる制御で、空気の質と電気代のバランスを設計します
- 更新工事の同時提案。エアコン更新の現地調査で換気設備の劣化(ファンの停止・フィルターの目詰まり)を見つけたら、同時改修を提案します。足場・天井開口・停止調整を共用でき、別々にやるより顧客の総費用は下がります
「空調屋だが換気も診られる」ではなく「空気のことは全部任せられる」という見え方を作ることが、換気知識の営業上の価値です。
まとめ
- 換気の設計は方式選定が先、機種選定は後です。正圧・負圧の圧力関係で建物全体の空気の流れを組み立てます
- 汚染源があるものは局所換気で捕捉が鉄則。全体換気での希釈に頼らないでください
- 全熱交換器は省エネ提案の主力。ただし用途制限と保守前提を必ずセットで説明します
- 改修では給気経路・圧損・外壁処理・風量測定の4点が失敗の常連です。チェックリスト化をおすすめします
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