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クリーンルーム空調の基礎|清浄度クラスと気流設計

クリーンルーム空調の基礎|清浄度クラスと気流設計

クリーンルームは「ほこりと戦う空調」の最前線

半導体・電子部品・食品・医薬品・化粧品。製品の品質が空気中の微粒子や微生物に左右される産業では、空調が生産設備の一部です。クリーンルームとは、空気中の粒子濃度を管理レベルに保つよう設計された部屋であり、その心臓部はフィルターと気流、すなわち空調そのものです。

本格的なクリーンルームの設計・検証は専門領域ですが、地域の空調工事会社にも接点は多くあります。食品工場の準クリーン化、工場内のクリーンブース設置、既設クリーンルームの空調保守・改修。基礎の考え方を知っているかどうかで、これらの引き合いに立てるかが決まります。清浄度クラスの具体値・検証方法は規格(ISO等)と設計図書によるため、本記事は考え方の骨格に絞ります。

清浄度クラス: 「どれだけ粒子が少ないか」の等級

クリーンルームの性能は、単位体積の空気に含まれる一定粒径以上の粒子数で等級づけられます(ISO規格のクラス表記が広く使われます)。実務者が押さえるべきポイントは次の3点です。

  • クラスは部屋の名前ではなく状態の名前です。設計上のクラスを満たすには、フィルター・換気回数・気流・室圧・持ち込み管理のすべてが機能している必要があります
  • 測定の条件(施工完了時か、設備稼働時か、作業員がいる運用時か)で結果は大きく変わります。引き渡し時の検証条件は契約段階で明確にすべき事項です
  • 清浄度が上がるほど、換気回数と設備コストは急激に増えます。「とにかくきれいに」ではなく、製品・工程が要求するクラスを見極めることが、提案の出発点です

気流の2方式: 乱流と一方向流

清浄度をつくる気流には2つの型があります。

方式仕組み用途の目安
乱流(非一方向流)方式天井のフィルター付き吹出口から清浄空気を供給し、希釈して清浄度を保つ中程度の清浄度の部屋全般
一方向流(層流)方式天井(または壁)一面から一方向の気流を流し、粒子を押し流す高清浄度の部屋・局所(ブース)

乱流方式は「汚れを薄める」、一方向流は「汚れを運び去る」と覚えると設計の意図が読めます。実務では、部屋全体は乱流で中程度に保ち、重要な工程だけ一方向流のクリーンブースで囲う、という組み合わせが費用対効果の定石です。この「全体+局所」の発想は、局所換気の考え方と同じ構造です。

清浄度を支える4つの要素

  1. フィルター。最終段に高性能フィルター(HEPA・ULPA)を置き、前段に中性能・プレフィルターを重ねて延命します。フィルターは設置枠との密着(シール性)まで含めて性能です。枠から漏れた空気は、どれだけ高級なフィルターでも素通りです
  2. 換気回数と室圧。清浄度クラスに応じた大きな循環風量と、隣接区域より高い室圧(清浄側を陽圧に)で、外からの侵入を防ぎます。室圧管理の考え方は病院空調と共通です
  3. 内装と気密。粒子を発生させない・溜めない内装材、掃除しやすい納まり、気密性。空調と建築が一体で性能を作ります
  4. 運用管理。人と物の持ち込みが最大の汚染源です。前室・エアシャワー・着衣ルールなど、運用の仕組みまで含めてクリーンルームです
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施工の作法: 「作る過程」が性能を決める

クリーンルーム関連の工事では、施工プロセスそのものに清浄の作法が求められます。

  • ダクト・機器の清浄管理。搬入前の内部清掃、開口部の養生(キャップ・フィルム)、現場での開放時間の最小化。ダクト内に持ち込んだほこりは、竣工後に吹き出し続けます
  • 施工順序とクリーンアップ。粉じんの出る作業を先行させ、清掃(クリーンアップ)を段階的に行い、フィルター設置は最終盤に。フィルターを早く付けて工事のほこりを吸わせるのは、高価な部材の無駄遣いです
  • 検証への備え。風量・室圧・清浄度の測定は引き渡しの関門です。TABの実務に加えて、測定条件・判定基準を事前合意しておくことが、竣工間際のもめごとを防ぎます
  • 既設稼働ゾーンの隣での改修は、病院改修と同じ発想で、仕切り・負圧養生・動線分離を計画します。生産中の製品を工事のほこりで汚染すれば、損害は工事代金の比ではありません

よくある相談: 「部屋の一角だけきれいにしたい」への現実解

地域の空調会社に来るクリーン系の相談で最も多いのは、本格的なクリーンルームではなく「検査コーナーだけ」「充填作業の周りだけ」清浄にしたい、という部分クリーン化です。この相談への現実解がクリーンブースです。

  • 構成はシンプルです。骨組み+ビニールカーテン等の囲いに、天井へFFU(ファンフィルターユニット: ファンとHEPAフィルターの一体機器)を載せ、清浄空気を吹き降ろします
  • 設計の勘所は、囲いの気密より空気の押し出しです。ブース内を陽圧に保ち、開口から常に空気が吹き出す状態を作れば、簡易な囲いでも清浄度は維持できます
  • 落とし穴は熱です。FFUの発熱と作業者・機器の発熱でブース内は暑くなりがちで、空調との組み合わせ(ブース外の空調強化・ブース給気の冷却)まで考えて初めて実用になります。ここが空調会社の出番です
  • 用途の要求クラスと検証方法(簡易パーティクルカウンターでの確認など)を発注者と合意してから作ること。「なんとなくきれい」では、後で「これで大丈夫なのか」というもめごとになります

数十万円台から始められる部分クリーン化は、製造業顧客との関係の入口として優秀で、本格的なクリーン空調・工場空調への展開にもつながります。

保守の実務: フィルター管理が中心

既設クリーンルームの保守は、空調会社にとって安定した業務領域です。

  • フィルターの管理。前段フィルターの定期交換で高性能フィルターを延命し、差圧計の指示で交換時期を判断します。交換作業は、清浄度を落とさない手順(区画・清掃・確認測定)までがセットです
  • 定期測定。風量・室圧・(契約により)粒子数の定期測定と記録。性能の推移が見えることが、フィルター交換・改修提案の根拠になります(測定記録の考え方
  • 機器保守。循環ファン・空調機・加湿装置の保守は一般空調と同じ骨格ですが、部屋に入る作業のルール(着衣・工具の清浄)が上乗せされます

「クリーンルームの保守ができる」ことは、食品・製造業の顧客に対する強い差別化です。一般空調の保守契約から一段単価の高い領域へ、技術で登る道筋になります。

まとめ

  • クリーンルームは粒子濃度を管理する空調です。クラスは部屋の状態の名前であり、フィルター・気流・室圧・運用の総合力で維持されます
  • 乱流は希釈、一方向流は押し流し。全体+局所ブースの組み合わせが費用対効果の定石です
  • 施工では、部材の清浄管理・施工順序・検証条件の事前合意が品質そのものです
  • 保守はフィルター管理と定期測定が中心。一般空調より一段上の業務領域として育てる価値があります
  • クラスの具体値・検証方法は規格と設計図書で確認してください

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