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空調の試運転調整(TAB)とは|風量・水量調整の手順と報告書

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空調の試運転調整(TAB)とは|風量・水量調整の手順と報告書

空調の試運転調整(TAB:Testing, Adjusting and Balancing=測定・調整・バランシング)とは、据え付けた空調設備の風量・水量などを測定し、ダンパーやバルブで調整して、設計図書の目標値に合わせる工程です。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では「総合試運転調整」として、総合試運転調整計画書の提出、各機器の個別運転調整、風量調整・水量調整と室内外の温湿度・気流・じんあい・騒音の測定(適用は特記)、測定報告書の提出までが定められています(第1編 1.5.6)。

機器を据え、ダクトと配管をつなぎ、電源を入れれば空調は動きます。しかし空気も水も抵抗の小さい経路に偏って流れるため、調整しなければ「同じフロアなのに暑い席と寒い席がある」「奥の部屋だけ効かない」という、引き渡し直後からのクレームになります。

公共建築工事標準仕様書の総合試運転調整(早見表)

段階内容根拠
計画調整方法・調整時期・日程・人員・安全対策を含む総合試運転調整計画書を監督職員に提出し、品質計画にかかる部分の承諾を受ける第1編 1.5.6.1
個別運転調整総合試運転調整に先立ち、各機器の個別運転調整を行う第1編 1.5.6.2
総合試運転調整装置全体の施工完了時に、設計図書の目標値等と照合しながら、各機器相互間の調整を行う第1編 1.5.6.3(1)
調整・測定の項目(適用は特記)風量調整/水量調整/室内外空気の温湿度の測定/室内気流及びじんあいの測定/騒音の測定(ほか飲料水・雑用水の水質の測定)第1編 1.5.6.3(2)
測定報告書機器等の運転状態の記録表と、系統ごとの測定結果をまとめる。測定器名・測定日時・測定者名を記入し、測定点を示した図面を添付第1編 1.5.6.4
立会い総合試運転調整を行う場合は監督職員の立会いを受ける第1編 1.5.8(1)(エ)
自動制御設備全体の総合試運転調整に併せて行い、機器の発停・連動、設定値、制御状態を確認し、制御・計測調整報告書を提出第4編 2.6.2
引渡し保全に関する資料に総合試運転調整報告書を含める第1編 1.7.3

民間工事でも、発注者の仕様書に「標準仕様書による」とあれば同じ扱いになります。調整項目の「適用は特記による」とされている点に注意し、特記仕様書で何を測るかを最初に確認してください。

TABの3要素: 測る・調整する・釣り合わせる

  • Testing(測定): 風量・水量・温湿度・圧力・電流など、系統の実際の状態を測ります。測定なしの調整は当てずっぽうです
  • Adjusting(調整): ダンパー・バルブ・プーリー・機器設定を操作し、測定値を設計値に近づけます
  • Balancing(バランシング): 系統内の各末端(吹出口・ファンコイル)への配分を釣り合わせます。合計風量が合っていても、配分が偏っていれば快適性は出ません

重要なのは順序です。末端をいくら調整しても、大元(送風機の全体風量・ポンプの全体流量)がずれていれば徒労になります。幹から枝へ、が調整の基本です。

風量調整の手順

  1. 事前確認。フィルターの汚れ・ダンパーの開度・ダクトの施工完了(漏気がないか)を確認します。施工不良を残したまま調整に入ると、調整で施工不良を隠すことになります
  2. 全体風量の確認。送風機の運転状態(回転数・電流)と主ダクトの風量を測り、設計全体風量と比べます。大きくずれる場合は、ファンの設定・プーリー・機外静圧の想定と実際の差を疑います
  3. 分岐バランスの調整。系統の分岐ダンパーで、各ゾーンへの配分を設計比率に合わせます
  4. 末端の調整。各吹出口の風量を測定し、風量調節ダンパーで整えます。風の来にくい末端を基準に、他の末端を絞って配分を整えます
  5. 再測定と記録。調整後の全末端を再測定し、設計値・実測値を記録します。調整は一巡では収束しないことが多く、二巡目の微調整までを想定した時間取りが現実的です

ダクトの風量は、風量測定口から測ります。標準仕様書では、風量測定口は熱線風速計(風速を測る計器)とマノメーター(圧力計)で風量等を測定できる構造とし(第3編 1.14.13)、取付け個数はダクトの取付け辺(長辺)の寸法で決まります(第3編 2.2.5.5)。

取付け辺(長辺)の寸法300mm以下300mmを超え700mm以下700mmを超えるもの
風量測定口の取付け個数123

取付け位置は特記によります。測定器の扱いと測定点の考え方は風量測定の方法と器具で詳しく解説しています。

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水量調整の手順

冷温水系統(チラー+ファンコイル・空調機)の水量調整も、考え方は風量と同じです。

  1. 系統の水張り・エア抜きの完了確認。エアが噛んだ系統は流量が安定せず、調整になりません
  2. ポンプの全体流量の確認。ポンプの運転点(圧力・電流)から全体流量を確認します
  3. 各系統・各機器のバルブ調整。定流量弁が入っている系統はその動作確認、手動バルブの系統は機器ごとの流量(または出入口温度差)を見ながら配分を整えます
  4. 温度差での検証。冷温水の往き還りの温度差が設計値に近いかは、流量の妥当性を裏側から確認する指標になります。温度差が小さすぎる機器は流れすぎ、大きすぎる機器は流量不足を疑います

熱源まわりの基礎はチラーの基礎知識を参照してください。

調整で直るもの・直らないものを見分ける

調整で追い込めるのは、設計と施工が概ね正しい系統の配分の乱れです。次の症状は、調整ではなく上流の問題として扱います。

  • 全開でも全体風量が大きく足りない。ダクト圧損の過大(曲がりの多いルート・フレキの過長・つぶれ)や送風機の選定不足が疑われます。ダンパーをいくら触っても、無い風は配れません
  • 特定系統だけ極端に弱い。ダンパーの閉まり込み・ダクト内の養生材残置・接続ミスなどの施工不良を疑い、調整の前に点検口から目視確認します
  • 能力はあるのに部屋が冷えない。風量ではなく負荷の問題(負荷計算の見立て)や吹出し気流の問題のことがあります

「これは調整で直る範囲を超えている」と早く報告することも、調整担当者の重要な仕事です。

小規模現場でも「ミニTAB」を

大規模ビルと同じことを小さな店舗でやる必要はありませんが、考え方は縮小して適用できます。全吹出口の風量測定と、明らかな偏りの調整、結果の記録。小規模現場ほど調整が省略されがちだからこそ、やっている会社の品質は際立ちます。

測定報告書と写真のチェックリスト

標準仕様書と営繕工事写真撮影要領で求められている事項を、提出前の確認表にしました。

確認事項根拠
機器等の運転状態の記録表がある標準仕様書 第1編 1.5.6.4
系統ごとに測定結果をまとめている(設計値と実測値を並べる)同上
測定器名・測定日時・測定者名を記入している同上
測定点を示した図面を添付している同上
自動制御は、日時・系統名・機器名称・型番・据付位置・状態・設定値・実測値・制御動作状態を記入した制御・計測調整報告書がある標準仕様書 第4編 2.6.2(2)
試験用機器(規格・銘板等)を試験前に撮影している営繕工事写真撮影要領 撮影対象表(機械設備工事編)総合調整
総合試験(風量・騒音・水量・温度・湿度・振動試験等)の状況を、試験開始時・試験中・試験終了時に撮影している同上

設計値に届かなかった箇所は、理由(ダクト圧損・機器能力・施工上の制約)と対応方針を書いておきます。この報告書は引き渡し時の品質証明であると同時に、数年後の「効かない」相談のときの基準データになります(記録の残し方は試運転記録の効率化と共通です)。

TABを工程に織り込む段取り

  • 調整日程を工程表に明記する。標準仕様書では、概成工期(総合試運転調整を行うために関連工事を含めて支障のない状態まで完了しているべき期限)が特記された場合、実施工程表等に概成工期・受電日・総合試運転調整に要する工程を明記するとされています(第1編 1.1.2、1.2.1(6))
  • 建物条件を整えてから測る。窓・ドアの開放、天井の未閉鎖、仮設換気の運転は測定値を狂わせます。測定時の建物状態を関係者と合意しておきます
  • 調整に必要な情報を先に確保する。設計風量・水量の一覧表、ダンパー・バルブの位置図がなければ調整はできません。総合試運転調整計画書と施工計画書の品質計画に、調整の方法と時期を書いておきます

まとめ

  • TABとは、風量・水量などを測定・調整して設計図書の目標値に合わせる工程です
  • 公共建築工事標準仕様書では、計画書→個別運転調整→総合試運転調整(風量・水量調整、温湿度・気流・じんあい・騒音の測定。適用は特記)→測定報告書の流れです
  • 調整は幹から枝へ。全体風量・全体流量を合わせてから末端のバランスに進みます
  • 報告書には測定器名・測定日時・測定者名と測定点の図面を付け、写真は試験開始時・試験中・試験終了時に撮ります

出典・参考

調整・測定の項目と方法は、発注者の特記仕様書・監督職員との協議が優先します(最終確認:2026-10-01)。

関連リンク

※ 2026年10月1日:冒頭で試運転調整(TAB)の定義を言い切る形に改め、公共建築工事標準仕様書の総合試運転調整の早見表(計画書・個別運転調整・調整項目・測定報告書・立会い・自動制御)、風量測定口の取付け個数の表、測定報告書と工事写真のチェックリスト、概成工期と工程表の規定、出典を追加しました。

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