チラーとは|空冷・水冷の違いと能力の条件・設置の注意点
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編集・発行:KMC株式会社
結論: チラーは「冷水をつくって送る熱源機」。能力は温度条件つきで読む
チラーとは、冷凍サイクルで冷水(ヒートポンプ式なら温水も)をつくり、その水を配管で空調機・ファンコイル・生産設備へ送る熱源機のことです。JIS(日本産業規格)では「ウォータチリングユニット」(JIS B 8613)と呼ばれます。排熱を外気に捨てる空冷式と、冷却塔を介して捨てる水冷式があり、公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では、冷凍能力を冷水入口12℃・出口7℃に、空冷式は外気乾球温度35℃、水冷式は冷却水入口30℃を組み合わせた条件で表すと定めています。カタログの能力は、この条件での値として読みます。
パッケージの先にある「熱源」の世界
業務用エアコン(直膨方式)は、冷媒が室内機まで届いて空気を直接冷やします。一方、規模の大きい建物や工場のプロセス冷却では、チラー(冷凍機)で冷水をつくり、その冷水を配管で送って空調機・ファンコイルや生産設備を冷やす方式が使われます。熱を「冷媒で直接」運ぶか「水に載せ替えて」運ぶかが、パッケージと熱源方式の分かれ目です。
空調工事会社にとってチラーの知識は、ビル・工場案件への入口です。エアコンの感覚のまま扱うと、搬入・基礎・水配管・水質管理といった別の常識で足をすくわれます。この記事では、チラーの分類と能力の考え方、設置工事の注意点を基礎から整理します。
分類1: 空冷式と水冷式
チラーは、凝縮器の排熱をどう捨てるかで大きく2つに分かれます。
| 項目 | 空冷式チラー | 水冷式チラー |
|---|---|---|
| 排熱方法 | 屋外の空気に放熱 | 冷却水を介して冷却塔で放熱 |
| 付帯設備 | 少ない(本体+冷水配管) | 冷却塔・冷却水ポンプ・水処理が必要 |
| 効率 | 標準的 | 一般に高効率 |
| 設置 | 屋外(屋上・地上) | 機械室+屋上冷却塔の組み合わせが典型 |
| 向く規模 | 小〜中規模、分散設置 | 中〜大規模の集中熱源 |
実務での判断はシンプルで、冷却塔とその維持管理を持てるかどうかが分かれ目です。空冷式は据えれば動く手軽さで、中小規模やリニューアルの分散化で主流です。水冷式は効率で勝りますが、冷却水系統の水質管理(スケール・スライム・レジオネラ対策)という運用負担が付きます。点検を測定と記録で回す考え方は保守メンテナンス項目の設計と共通です。
分類2: 圧縮式と吸収式
熱を汲み上げる原理でも分かれます。
- 圧縮式(電動チラー): 圧縮機で冷媒を循環させる方式。エアコンと同じ原理で、スクロール・スクリュー・ターボと圧縮機の形式が規模に応じて変わります。電気で駆動します
- 吸収式(吸収冷温水機): 水を冷媒、臭化リチウム溶液を吸収剤として、ガス・蒸気・排熱などの「熱」で駆動する方式。電気容量が小さくて済み、冷暖房を1台で賄える冷温水機として中大規模ビルで使われてきました
空調工事会社が触る機会が多いのは圧縮式ですが、既存ビルの更新案件では吸収式からの置き換え(またはその逆)の比較検討に出会います。エネルギー単価(電気とガス)・電気容量の制約・運転資格の要否まで含めた比較になるため、この判断はメーカー・エネルギー会社も交えて行うのが実務です。
能力の読み方: 「冷凍トン」と温度条件
チラーの能力表示では、kWのほか冷凍トンという単位に出会います。高圧ガス保安法の区分で使う「法定冷凍トン(1日の冷凍能力)」は法令の基準で算定する別の値なので、空調の能力表示の冷凍トンと混同しないでください(区分は高圧ガス保安法の記事)。また、カタログ能力は定格の温度条件での値です。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)は、能力と成績係数(COP)をJIS B 8613によるものとし、条件を次のように定めています。
| 機種 | 冷凍能力の条件 | 加熱能力の条件 | 標準仕様書の章節 |
|---|---|---|---|
| 空気熱源ヒートポンプユニット(空冷) | 冷水入口12℃、出口7℃、外気乾球35℃、外気湿球24℃、能力100% | 温水入口40℃、出口45℃、外気乾球7℃、外気湿球6℃、能力100% | 第3編 1.3.1.12 |
| 水冷チリングユニット | 冷水入口12℃、出口7℃、冷却水入口30℃、能力100% | ― | 第3編 1.3.2.11 |
同じ仕様書は、空気熱源ヒートポンプユニットの項を冷凍能力60kW以上のものに適用し(30kW以上60kW未満は制御盤のみ)、高圧冷媒を使うものは高圧ガス保安法・冷凍保安規則・冷凍保安規則関係例示基準によるとしています(第3編 1.3.1.1)。水冷チリングユニットも同様です(第3編 1.3.2.1)。
この温度条件から、実務上の注意が2つ生まれます。
- 温度条件が変われば能力は変わる。冷水出口温度を低く取るほど、外気温が高いほど、能力は下がります。「カタログの数字=いつでも出る数字」ではありません
- プロセス用途は条件確認が命。工場の生産設備冷却では、要求される冷水温度・流量・許容温度変動が空調用と違います。用途の要求条件を聞かずに空調用の感覚で選定すると、能力はあっても使えない機械になります
必要能力の算定は、空調用途なら建物の熱負荷から(負荷計算の基本)、プロセス用途なら設備の発熱量と運転パターンから積み上げます。
設置工事の注意点
搬入・基礎・据付
- チラーはトン単位の重量物です。搬入経路の床荷重・開口寸法・揚重計画(クレーン・道路使用)を最初に確認します。屋上設置では建物の構造検討(積載荷重)が前提になります
- 基礎は水平・強度・防振を満たす設計とし、運転重量(水を含む重量)で検討します
- 空冷式は放熱スペースが命です。壁からの離隔・ショートサーキット防止・複数台の配置間隔をメーカー基準どおりに確保します。詰めて置いた空冷チラーは夏の一番暑い日に能力を落とします
水配管まわり
チラーの現場は、冷媒配管より水配管が主戦場になります。
- ポンプ・膨張タンク・エア抜き・水抜きの計画。水系統はエアが噛むと流量が出ません。配管の高所にエア抜き、低所に水抜きを配置します
- 保温と凍結対策。冷水配管の結露防止保温は必須です。冬季の凍結リスクがある屋外設置では、凍結防止ヒーター・不凍液・水抜き運用を検討します
- フロースイッチ・ストレーナの設置。断水運転はチラーの重大故障につながるため、保護装置の設置と配管内の異物対策(フラッシング)を施工手順に組み込みます
- 水質管理の引き継ぎ。冷水・冷却水の水質基準と補給水の扱いを、引き渡し時に管理者へ説明します。水質起因の腐食・スケールは保証の争点になりやすい領域です
能力確認のチェックリスト
- カタログ能力の温度条件(冷水入口・出口温度、外気温度または冷却水温度)を確認したか
- 実際の運転条件(要求する冷水出口温度、夏の外気温度、冷却水温度)がカタログ条件と違わないか
- プロセス用途なら、要求される冷水温度・流量・許容温度変動を発注者から聞き取ったか
- 能力と成績係数の数値が、仕様書(特記)の指定を満たしているか
- 法定冷凍トンを確認し、高圧ガス保安法の区分を把握したか
チラー案件の現地調査チェック
パッケージの更新調査とは見る場所が変わります。チラー案件で最初の訪問時に確認すべき項目です。
- 銘板と仕様: 型式・冷凍能力・冷媒種・製造年。冷媒種は更新提案の方向性(規制対応)を左右します
- 運転状態: 冷水出入口の温度差、異音・振動、保温の状態、過去の運転日誌の有無
- 付帯設備: ポンプ・冷却塔・膨張タンク・水処理装置の状態。チラー本体より先に付帯側が寿命というケースも多くあります
- 設置環境: 搬入経路(機械室の開口・通路幅・エレベーター)、屋上ならクレーンの設置可否と作業半径
- 電源・制御: 受電容量の余裕、中央監視との連携の有無
- 運用体制: 誰が日常管理をしているか、冷凍機械責任者の選任状況(資格の話は冷凍機械責任者の解説)
とくに搬入経路は、チラー更新の見積金額を大きく振らす要素です。機械室から出せない・入れられない場合、分割搬入対応機や現地組立、壁開口という選択肢まで含めた計画になり、費用は大きく変わります。「本体価格の比較」だけで概算を出すと、ここで足をすくわれます。
保守と更新提案の視点
チラーは長寿命の設備ですが、放置されがちな設備でもあります。定期的な運転データ(冷水出入口温度差・圧力・電流)の記録があれば、能力低下・熱交換器の汚れ・冷媒漏えいの予兆を早期につかめます。ここはパッケージの保守と同じ「測って比べる」の世界です(点検メニューの設計)。
更新提案では、単純入替のほかに、大型1台から空冷モジュール複数台への分散化という選択肢があります。公共建築工事標準仕様書でも、複数台で構成する「モジュール形」は、代表機または総合盤で各機器の運転状態を一括管理し、発停・運転状態表示・自動容量制御などができるものとされています(第3編 1.3.1.1)。段階更新が可能、部分負荷効率が良い、1台故障時も全停止しない、といった利点があり、既存機械室の制約を外せるケースもあります。フロン規制の流れで冷媒種の確認も必須です(フロン排出抑制法の実務対応)。
まとめ
- チラーとは冷水(温水)をつくって送る熱源機です。能力は冷水12℃→7℃などの条件つきの値として読みます
- チラーは熱を水に載せ替えて運ぶ方式の心臓部です。空冷か水冷か、圧縮式か吸収式かで運用の常識が変わります
- カタログ能力は温度条件付きの数字です。用途の要求条件(冷水温度・流量)の確認から始めてください
- 設置は重量物の搬入・放熱スペース・水配管(エア・凍結・保護装置・水質)が三大注意点です
- 運転データの記録が保守と更新提案の土台になります。分散化更新という提案カードも持っておきましょう
出典・参考
- 国土交通省「公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版」(PDF) 第3編 1.3.1 空気熱源ヒートポンプユニット・1.3.2 水冷チリングユニット
能力の条件や適用範囲は、発注者の特記仕様書・メーカーの技術資料が優先します(最終確認:2026-10-01)。
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