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吸収式冷凍機の仕組み|二重効用・希釈運転と冷温水機との違い

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吸収式冷凍機の仕組み|二重効用・希釈運転と冷温水機との違い

吸収式冷凍機は、圧縮機の代わりに「熱」で冷凍サイクルを回す冷凍機です。真空に近い機内で冷媒の水を蒸発器で蒸発させて冷水をつくり、その水蒸気を吸収器で臭化リチウム水溶液(吸収液)に吸わせ、薄まった吸収液を再生器で加熱して水分を追い出し、追い出した水蒸気を凝縮器で水に戻す。この「蒸発・吸収・再生・凝縮」の4工程を繰り返すのが仕組みのすべてです。

ビルの機械室で見かける「吸収冷温水機」は、この原理でガスなどを燃やして冷水と温水をつくる機械です。この記事では、一重効用と二重効用の違い、希釈運転、冷凍機と冷温水機の違い、保守の急所までをまとめます(熱源全体はチラーの記事参照)。

仕組み:4つの工程で冷水をつくる

圧縮式は冷凍サイクルを圧縮機(電気)で回し、吸収式は吸収液と熱で回します。

工程機器中で起きていること
1. 蒸発蒸発器真空に近い容器内で冷媒の水を散布し、蒸発させる。蒸発の際に冷水配管の水から熱を奪い、冷水ができる
2. 吸収吸収器蒸発した水蒸気を濃い臭化リチウム水溶液が吸い取る。吸い続けるので蒸発器の低い圧力が保たれ、蒸発が続く
3. 再生再生器水蒸気を吸って薄くなった吸収液を加熱し、水分を追い出して濃い液に戻す。ここが熱で駆動する部分
4. 凝縮凝縮器再生器で追い出した水蒸気を冷却水で冷やして水に戻し、蒸発器へ送る

水が低い温度で蒸発する理由は圧力です。パナソニックの解説では、水は大気圧では100℃で沸騰しますが、1/10気圧では46℃、1/100気圧では6.5℃で蒸発するとされています。川重冷熱工業の解説では、蒸発器の中は真空で、水は約5℃で蒸発し、機内の圧力は0.7〜0.8kPaとされています。

国交省の公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では、吸収冷凍機の構成を「蒸発器、吸収器、再生器、凝縮器、溶液熱交換器、溶液ポンプ及び冷媒ポンプ(強制循環式のものに限る)、自動抽気装置、容量調整装置、安全装置、制御盤等」と定め、吸収剤は臭化リチウム水溶液に腐食防止剤を添加したもの、冷媒は純水としています。冷媒が水なので、フロン類を使いません。フロン冷媒の機器に求められるフロン点検義務とは別の管理体系になる点も、顧客説明で整理しておきたいポイントです。

凝縮器では、冷却塔から送られてくる冷却水で水蒸気を冷やして水に戻します(川重冷熱工業の解説)。吸収式の性能が冷却水と冷却塔の管理に左右されるのはこのためです。

一重効用と二重効用の違い

吸収式は、再生器の数(駆動熱の使い方)で一重効用と二重効用に分かれます。公共建築工事標準仕様書は、一重効用・二重効用の吸収冷凍機を対象とし、二重効用では高温再生器と高温溶液熱交換器を備えると定めています。

項目一重効用(単効用)二重効用
再生器1つ高温再生器と低温再生器の2つ
加熱の仕方駆動熱で再生器を加熱高温再生器をバーナー等で加熱し、そこで出た冷媒蒸気で低温再生器を加熱する
特徴構造が単純。温水など比較的低い温度の熱でも動く機種がある駆動熱を2段で使うため効率が高い
主な用途排熱・温水の利用ガス直焚の冷温水機、蒸気焚の冷凍機

パナソニックは自社製品で「再生器を2つに分け、バーナーと冷媒蒸気による加熱方式」の二重効用型を採用していると説明しています。

効率の違いは、メーカーの製品一覧に表示された成績係数(COP=投入した熱量に対して得られる冷房能力の比)で確かめられます。川重冷熱工業の製品一覧では、低温水利用一重効用吸収冷凍機がCOP 0.8、二重効用のガス直焚冷温水機の最高効率機がCOP 1.51、三重効用のガス吸収冷温水機がCOP 1.74と表示されています。COPの算定条件は機種・メーカーで異なるため、比較するときは同じ条件のカタログ値で見てください。公共仕様書では、能力と成績係数はJIS B 8622「吸収式冷凍機」により、冷凍能力は冷水入口12℃・出口7℃・冷却水入口32℃の標準定格条件で表すとしています。

希釈運転とは

希釈運転とは、吸収式を停止するときに、濃い吸収液を薄めてから止める運転です。中部電力と荏原冷熱システムの発表(2017年)では、ガス焚吸収冷温水機は再生器でつくられた高濃度の吸収溶液の温度が停止中に下がって結晶化するのを防ぐため、停止時に希釈運転を行うと説明しています。公共建築工事標準仕様書も、安全装置として「溶液の結晶による故障防止装置(停止時には溶液の希釈運転を行う。)」を求めています。

実務で押さえるべきは次の3点です。

  • 希釈運転を省略した急停止や、停電後の放置は結晶化の引き金になります。結晶化すると流路が塞がり、復旧に手間がかかります
  • 同じ発表では、始動時に薄めた吸収液を再び濃縮する必要があることが、ガス焚吸収冷温水機の始動時間が長い主な原因とされ、従来は始動に20〜30分程度かかっていたと記されています。朝の冷房立ち上げの運転開始時刻は、この特性を前提に組みます
  • 計画停電や電気設備点検の日程は事前に共有してもらい、正しい停止と復旧の手順に保守会社が関与できる体制にします
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吸収冷凍機と吸収冷温水機の違い

川重冷熱工業の説明では、吸収冷温水機は冷水と温水をつくるもの、吸収冷凍機は冷水のみをつくるものを指します。

項目吸収冷凍機吸収冷温水機
つくるもの冷水のみ冷水と温水(1台で冷暖房)
主な駆動熱蒸気・温水などガス・油などの燃焼(直焚)
公共仕様書の区分1.3.4 吸収冷凍機(一重効用・二重効用)1.3.5 吸収冷温水機(二重効用)
構成に燃焼装置含まない(公共仕様書1.3.4)含む(公共仕様書1.3.5)

冷温水機は冷暖房を1台で賄えるのが利点です。一方、トレインの解説では、冷凍機単体の効率はターボ冷凍機(電動の圧縮式)のほうが高いとされています。駆動が熱なので受電容量が小さくて済む(GHPの選定理由と同じ構造)、排熱を使える、といった条件がそろうときに吸収式が選ばれます。更新時に電動へ転換するかどうかは、熱源更新の記事の枠組み(エネルギー単価・受電容量・2次側の状態)で判断します。

保守の3つの急所:真空・溶液・水質

1. 真空の維持

吸収式の生命線は機内の真空です。空気などの不凝縮ガス(冷やしても液体に戻らない気体)が入ると、蒸発圧力が上がり能力が落ちます。公共仕様書は、不凝縮ガスを自動的に抽気して機外に排出し、停止時に外気が逆流しない自動抽気装置と、附属品としての真空計を求めています。

  • 抽気装置の動作確認は日常管理の中心です
  • 抽気の頻度が増えてきたら、気密の劣化や機内の腐食によるガス発生を疑います
  • 「能力が出ない」の相談で、圧縮式の感覚で冷媒不足を探しても答えは出ません。真空度と抽気状況から入るのが定石です

2. 溶液の管理

臭化リチウム水溶液には腐食を抑えるための腐食防止剤(インヒビター)が添加されており(公共仕様書)、温度が下がると結晶化する性質もあります。防食剤の状態と溶液の濃度は定期的な溶液分析で管理します。分析はメーカー・専門会社と連携する領域ですが、「分析をしているか」を確認するのは保守会社の役目です。

3. 冷却水の水質と伝熱面

冷却水系の水質不良は、伝熱管のスケール(水垢)・腐食として蓄積し、能力低下と寿命の短縮に直結します。冷却水温度は低ければよいわけではなく、メーカー指定の範囲を守る運用が必要です。冷却塔のファン制御・水量管理と合わせて管理します。

不調のサイン早見表

症状まず見るところ次に見るところ
能力が出ない真空度・抽気頻度冷却水の温度・水質、溶液の状態
立ち上がりが遅い運転開始時刻の設定(始動に時間がかかる特性)熱源側(バーナー・蒸気供給)、伝熱面の汚れ
停止後に再始動できない停止時の希釈運転が行われたか(停電・急停止の有無)メーカーに結晶化の点検を依頼
抽気の回数が増えた気密の劣化機内の腐食(溶液分析の結果)

温度・圧力・抽気の記録を点検の型で継続していれば、劣化はゆっくり見えてきます。吸収式の内部整備・溶液の取り扱いは専門性が高いため、自社の守備範囲(日常管理・外回り・冷却水系)とメーカー・専門業者に任せる範囲(機内整備・溶液処理)の線引きを明確にした保守体制が現実的です。廃棄・更新時の溶液も専門ルートでの適正処理が前提です。

まとめ

  • 吸収式冷凍機は、蒸発・吸収・再生・凝縮の4工程を熱で回す機械です。冷媒は水、吸収液は臭化リチウム水溶液、生命線は真空です
  • 二重効用は高温・低温の2つの再生器で駆動熱を2段で使い、一重効用より効率が高い方式です
  • 希釈運転は停止時の結晶化を防ぐための運転です。省略した急停止・停電後の放置が事故の引き金になります
  • 吸収冷凍機は冷水のみ、吸収冷温水機は冷水と温水をつくります。更新時は電動転換も含めて判断してください

出典・参考

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