GHPとEHPの違い|ガスヒーポンの特徴と提案時の比較ポイント
同じヒートポンプ、違うのは「エンジンかモーターか」
業務用の空調方式を提案していると、必ず出会うのがGHPとEHPの比較です。どちらも冷媒のヒートポンプサイクルで冷暖房する点は同じで、違いは圧縮機を何で回すかにあります。EHP(Electric Heat Pump)は電気モーター、GHP(Gas engine Heat Pump)はガスエンジンで圧縮機を駆動します。
この一点の違いが、電力契約・暖房能力・メンテナンス・ランニングコストの構造まで、提案の景色を大きく変えます。既設がGHPの建物の更新相談では「次もGHPか、EHPに切り替えるか」が必ず論点になるため、空調工事会社としては両者の特性を構造から説明できる必要があります。
特性の違いを構造から理解する
| 観点 | EHP(電気式) | GHP(ガス式) |
|---|---|---|
| 駆動源 | 電気モーター | ガスエンジン |
| 電力契約への影響 | 消費電力が大きい | 消費電力が小さい(補機のみ) |
| 寒い日の暖房 | 外気温低下で能力低下、デフロスト運転あり | エンジン排熱を活用し低外気温に強い |
| メンテナンス | 比較的シンプル | エンジンオイル交換など定期整備が必須 |
| ランニングコスト | 電気料金に依存 | ガス料金に依存 |
| 初期費用 | 標準的 | 一般に高め |
GHPの強みが活きる場面
- 電力契約に余裕がない建物。GHPは空調の駆動エネルギーをガスに移すため、受電設備の増強なしに空調を増やしたい場面で強力な選択肢になります。既設の受変電設備がネックの増築・テナント改修は典型例です
- 寒冷地・暖房重視の用途。ガスエンジンの排熱を暖房に活用できるため、低外気温での暖房立ち上がりに強く、デフロスト(霜取り)による暖房の中断が少ない特性があります。朝一番に暖めたい施設(店舗・事務所・学校)で体感差が出ます
- 電気とガスのエネルギー分散。光熱費を一方のエネルギー価格に集中させたくない、という経営判断でGHPが選ばれることもあります
EHPの強みが活きる場面
- メンテナンスを軽くしたい建物。GHPはエンジンである以上、オイル・プラグ等の定期整備が前提です。整備の手当てが難しい施設では、EHPのシンプルさが効きます
- 機器効率の進化を取り込みたい更新。EHPは製品の更新サイクルが速く、高効率機の選択肢が広い傾向があります
- ガスの引き込みがない・容量が足りない建物。当然ながら、ガスインフラの条件はGHPの前提条件です
提案時の比較の見せ方
GHPかEHPかの提案は、カタログ効率の比較だけでは決められません。判断材料を顧客の条件に沿って集めます。
- 電力契約と受電容量の確認。EHPへの切り替えで契約電力が上がる場合、その増分コストと設備改修(幹線・変圧器)の要否までが比較対象です。逆にGHPからEHPに変えて受電増強が必要になった、という見落としは、更新提案の重大事故です
- エネルギー単価の前提を示す。電気・ガスの単価は契約と時期で変わります。ランニング比較は「現在の御社の単価での試算」と明記し、断定を避けて前提つきで示します(更新提案書のつくり方の誠実な数字の見せ方と同じ作法です)
- メンテナンス費を含めた総額で見せる。GHPの定期整備費は、ランニング比較に必ず含めます。含めない比較は、導入後に必ず「聞いていない」となります
- 暖房の実感値をヒアリングする。既設EHPで「冬の朝が寒い」という不満があるなら、GHPの低温暖房性は刺さる提案軸になります。逆に不満がなければ、暖房性能の差は決め手になりません
施工・更新時の注意点
- ガス配管工事の分担。GHPはガス供給工事が絡みます。ガス事業者・ガス工事店との工事区分と日程調整を、見積段階で明確にします(見積書の書き方の工事範囲の考え方です)
- 排気と設置環境。ガスエンジンの排気・騒音・重量はEHPと条件が異なります。設置場所の離隔・防音・構造の確認は機種資料に沿って行います
- 冷媒配管の流用判断。GHPからEHP(またはその逆)への切り替え更新では、冷媒配管の再利用可否をメーカー資料で必ず確認します。系統の考え方は同じでも、適合条件は機種ごとに違います(冷媒配管の施工手順)
- エンジン整備の体制。GHPを納めるなら、定期整備を自社でやるのか、メーカー・整備店と組むのかの体制をセットで設計します。売った後の整備体制がない提案は、保守契約の機会を逃すだけでなく、顧客の設備リスクになります(保守契約の管理術)
既設GHP更新の判断フロー: 実務ではこう進める
提案の現場で最も多い「既設GHPの更新、次はどうするか」の検討手順を示します。
- ガス契約と受電容量の現状を確認する。EHP化した場合の契約電力の増分を電力会社・電気設備の資料から見積もります。受電設備の改修が必要なら、その費用と工期が比較の土俵に乗ります
- 既設の使われ方を聞く。暖房の立ち上がり・冬の効きへの不満、エンジン整備の実施状況と費用感、ガス料金の推移。これで顧客の「痛み」がどこにあるかが分かります
- 配管・設置条件を調査する。冷媒配管の再利用可否(GHP・EHPそれぞれの機種で)、室外機置場の重量・スペース・排気条件を確認します
- 3案で比較を出す。GHP更新・EHP切り替え・段階更新(フロア単位で切り替え)を、初期費用・光熱費の傾向・整備費・受電改修の要否で並べます
この手順を踏むと、結論はたいてい建物ごとに違うものになります。だからこそ、手順そのものを標準化しておけば、担当者が誰でも同じ品質の提案ができます。
停電時・災害時という第三の視点
比較軸としてもうひとつ、非常時の視点があります。GHPは発電機能付きの機種があり、停電時に自立運転できるタイプは災害時の事業継続(BCP)の文脈で価値を持ちます。福祉施設・避難所指定の建物・止められない事業所では、この一点が決め手になることがあります。逆に、非常時の要求がない建物でこの機能に費用をかける必要はありません。機能の有無でなく、顧客の事業にとっての意味で語るのが提案の作法です。
「どちらが得か」への正しい答え方
顧客からの「結局どっちが得なの?」に対する誠実な答えは、「御社の電力契約・エネルギー単価・使い方次第です。条件を確認して比較表を作ります」です。
即答できないことは弱さではありません。条件確認の丁寧さは、機器を売る会社と設備を任せられる会社の分かれ目として顧客に映ります。逆に、条件を聞かずにどちらかを断言する業者は、在庫や仕切りの都合で話している可能性を疑われます。電力契約・ガス契約・使用時間・暖房への不満。この4点を聞いてから比較を出す手順そのものが、提案の信頼性です。
まとめ
- GHPとEHPの違いは圧縮機の駆動源です。この一点が電力契約・暖房特性・整備・コスト構造まで変えます
- GHPは受電に余裕がない建物と暖房重視の用途、EHPは整備の軽さと機器選択肢の広さが強みです
- 比較は機器価格でなく、受電設備・整備費・エネルギー単価を含む総額で。前提を明記し断定を避けます
- GHPを提案するなら整備体制までセットで設計する。それが売り切りでない空調屋の仕事です
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