GHPとEHPの違い|仕組み・特長・比較と選び方
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編集・発行:KMC株式会社
結論: 違いは「圧縮機をガスエンジンで回すか、電動機で回すか」
GHPとEHPの違いは、室外機の圧縮機を動かす原動機です。日本冷凍空調工業会は、空調機を「圧縮機の駆動源に電気を使用した電動機駆動式のエアコン『電気モータヒートポンプ(EHP)』」と「ガスを使用したガスエンジン駆動式のエアコン『ガスヒートポンプ(GHP)』」に分けて説明しています。どちらも冷媒のヒートポンプ(冷媒を圧縮・膨張させて熱を運ぶ仕組み)で冷暖房する点は同じです。
この違いから、GHPは消費電力が小さい(日本冷凍空調工業会の説明ではEHPの約10分の1)、エンジン排熱を暖房に使える、その代わりエンジンの定期点検が必要、という特徴が生まれます。どちらが得かは建物の電力契約・ガスの条件・使い方で変わるので、条件をそろえて比較します。
GHPとEHPの比較表(自社作成)
| 観点 | EHP(電気式) | GHP(ガス式) | 出典 |
|---|---|---|---|
| 圧縮機の駆動 | 電動機(モーター) | ガスエンジン(都市ガスまたは液化石油ガスを燃料とする水冷4サイクル式内燃機関) | 日本冷凍空調工業会、標準仕様書 第3編1.7.7.4 |
| 消費電力 | 圧縮機も電気で動かす | EHPの約10分の1。発電機付GHPは約100分の1以下・100W程度まで低減できる機種もある | 日本冷凍空調工業会 |
| 暖房 | 機種の暖房能力特性による(メーカー資料で確認) | エンジン排熱を利用。寒冷地でも霜取りをほとんど必要とせず、暖房運転可能外気温度の下限を-15℃まで拡大 | 日本冷凍空調工業会、日本冷凍空調学会 |
| メンテナンス | 機器メーカーの点検基準による | エンジンオイル交換、冷却水レベルの点検等の定期点検が必要。点検間隔はほとんどの機種で5年または10,000時間 | 日本冷凍空調学会、日本冷凍空調工業会 |
| 燃料・インフラ | 電気 | 電気に加えガス供給(LPガス・都市ガス・天然ガス) | 日本冷凍空調学会 |
| 停電時 | 電源の確保方法(非常用電源の有無等)による | 停電時に自立起動して空調・発電できるタイプがある | 日本冷凍空調工業会 |
| 規格 | 製品ごとの規格による | JIS B 8627(定格冷房標準能力85kW以下)、JRA 4058(発電機付)等 | 日本冷凍空調工業会 |
| フロン排出抑制法 | 業務用エアコンとして対象 | 業務用エアコンとして対象 | フロン排出抑制法 第2条第3項 |
消費電力の「約10分の1」「約100分の1以下」は、日本冷凍空調工業会が示す一般的な説明です。個別の機種の値は、メーカーの技術資料で確認してください。
GHPの仕組みと特長
日本冷凍空調学会の用語解説では、GHPは「室外機内のコンプレッサの駆動をガスエンジンにて行うヒートポンプエアコン」で、エンジンの廃熱を「ヒートポンプ運転時の熱源として使用する」ため効率的に運転できるとされています。日本冷凍空調工業会は特長として次を挙げています。
- 省電力。総消費電力はEHPの約10分の1で、契約電力を50kW未満に抑えることも可能とし、受変電設備(高圧で受電して変圧する設備)が不要になる場合があるとしています
- 急速暖房。エンジン排熱を活用し、寒い冬の朝でも素早く温風を出せる
- 霜取りがほとんど不要。エンジン排熱を利用した暖房運転のため
- ラインアップ。発電機付タイプ、既設冷媒配管を利用するリニューアルタイプ、点検時も運転を続けられる複数台連結タイプ、冷暖同時タイプ、停電自立起動タイプ
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)では、GHPは「ガスエンジンヒートポンプ式空気調和機」として、JIS B 8627 によるものとされています(第3編1.7.7)。ガス供給の内部配管には自動閉止弁を直列に2個設け、原動機停止時にはガスを遮断すること、排気装置は排ガスと凝縮水を分離し凝縮水を中和・排水できる構造とすることも定められています。停電時に運転する機能(電源自立型)は、屋外機(冷房能力45kW以上)に消費電力自給装置と蓄電池を備えるもので、適用は特記によります。
GHPのメンテナンス
GHPはエンジンで圧縮機を動かすため、日本冷凍空調工業会は「自動車のエンジンを定期点検するのと同様に、ガスヒートポンプ(GHP)用エンジンも定期点検が必要」としています。定期点検の間隔は、同会によればほとんどの機種で5年または10,000時間まで延長されてきました。具体的なメンテナンス内容はメーカー・機種で異なるため、各メーカーの技術資料と説明書で確認します。
GHPを納めるなら、定期点検を自社で行うのか、メーカー・整備会社と組むのかの体制を、提案の段階でセットにしておきます。売った後の整備体制がない提案は、顧客の設備リスクになります(保守契約の管理術)。
なお、GHPもEHPも業務用エアコンなので、フロン排出抑制法の第一種特定製品(業務用のエアコンディショナー等でフロン類が冷媒として充塡されているもの)に当たり、簡易点検・定期点検などの義務は同じようにかかります(業務用エアコンの点検義務)。
GHPが向く場面、EHPが向く場面
上の比較表から、次のような整理ができます。
- 電力契約・受電設備に余裕がない建物。GHPは空調の駆動エネルギーをガスに移すため、受電設備を増強せずに空調を増やしたい場面で選択肢になります
- 冬の朝の暖房の立ち上がりに不満がある建物。GHPはエンジン排熱を使う暖房が特長です
- 停電時にも空調を止めたくない建物。停電自立起動タイプが選択肢になります。非常時の要求がない建物なら、この機能に費用をかける必要はありません
- エンジンの定期点検の手当てが難しい建物、ガスの引き込みがない・容量が足りない建物。EHPが現実的です
提案時の比較の見せ方
カタログの数値だけでは決められません。判断材料を顧客の条件に沿って集めます。
- 電力契約と受電容量を確認する。GHPからEHPに切り替えると、空調の消費電力が電気側に移ります。契約電力の増分と、幹線・変圧器の改修の要否まで比較に含めます
- エネルギー単価は「御社の現在の単価での試算」と明記する。電気・ガスの単価は契約と時期で変わるため、前提つきで示します(更新提案書のつくり方)
- メンテナンス費を含めた総額で見せる。GHPの定期点検費をランニング比較に必ず入れます
- 暖房の実感をヒアリングする。冬の朝の不満があるかどうかで、暖房の比重が変わります
施工・更新時の注意点
- ガス配管工事の分担。GHPはガス供給工事が絡みます。ガス事業者・ガス工事会社との工事区分と日程を見積段階で明確にします(見積書の書き方)
- 屋外機の設置条件。標準仕様書は、屋外機の据付けでショートサーキット(吹き出した空気を再び吸い込むこと)、障害物、騒音等の影響がないことを確認するとしています(第3編2.1.13)。GHPはさらに排気の条件が加わるので、機種資料で離隔・排気・重量を確認します
- 冷媒配管の再利用。GHPとEHPを切り替える更新では、冷媒配管の再利用可否をメーカー資料で確認します(冷媒配管の施工手順)
既設GHP更新の判断手順
- 電力契約・ガス契約と受電容量の現状を確認する。EHP化した場合の契約電力の増分を、電気設備の資料から見積もります
- 既設の使われ方を聞く。暖房への不満、エンジン点検の実施状況と費用、ガス料金の推移
- 配管・設置条件を調査する。冷媒配管の再利用可否、屋外機置場のスペース・重量・排気条件
- GHP更新・EHP切り替え・段階更新(フロア単位の切り替え)を、初期費用・光熱費の試算・点検費・受電改修の要否で並べて比較する
手順を標準化しておけば、担当者が誰でも同じ品質の提案ができます。
「どちらが得か」への答え方
「結局どっちが得なの?」への誠実な答えは、「御社の電力契約・エネルギー単価・使い方次第です。条件を確認して比較表を作ります」です。電力契約・ガス契約・使用時間・暖房への不満の4点を聞いてから比較を出す手順そのものが、提案の信頼性になります。
まとめ
- GHPとEHPの違いは圧縮機の駆動源です。GHPはガスエンジン、EHPは電動機で圧縮機を回します
- GHPは消費電力が小さく(日本冷凍空調工業会の説明でEHPの約10分の1)、エンジン排熱を暖房に使えます
- GHPはエンジンの定期点検が必要です。点検間隔はほとんどの機種で5年または10,000時間とされています
- 比較は機器価格でなく、受電設備・点検費・エネルギー単価を含めて、前提を明記して行います
出典・参考
- ガスヒートポンプ(GHP)エアコン(日本冷凍空調工業会)(業界団体。GHPとEHPの定義)
- ガスヒートポンプ(GHP)の特長(日本冷凍空調工業会)(業界団体。消費電力、暖房、ラインアップ)
- 定期的なメンテナンスのおすすめ(日本冷凍空調工業会)(業界団体。定期点検の間隔)
- ガスヒートポンプ(GHP)の規格(日本冷凍空調工業会)(業界団体。JIS B 8627 等)
- GHP(ガスヒートポンプエアコン)(日本冷凍空調学会 用語解説)(学会。仕組み、メンテナンス)
- 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部。第3編 1.7.7、2.1.13)
- e-Gov法令検索 フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律 第2条第3項
関連リンク
※ 2026年10月1日:冒頭でGHPとEHPの違いを言い切る形に改め、日本冷凍空調工業会・日本冷凍空調学会の公表資料と公共建築工事標準仕様書で確かめた比較表、GHPの仕組み・特長・メンテナンス(点検間隔)、標準仕様書の規定、出典を追加しました。出典で確かめられない「初期費用は一般に高め」「EHPは高効率機の選択肢が広い」等の記載は削除しました。
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