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病院の空調工事|清浄度クラス・陰圧室と改修時の感染対策

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病院の空調工事|清浄度クラス・陰圧室と改修時の感染対策

病院の空調工事は、部屋ごとに決められた清浄度(空気のきれいさの等級)と室圧(陽圧・陰圧)を、施工・調整・改修で崩さないことが要点です。国内の設計・管理の指針は、日本医療福祉設備協会の「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022」(2022年発行の第5版)で、改修工事では工事内容と場所からリスクを分析して対策する感染管理リスクアセスメント(ICRA)も記述されています。

清浄度クラスごとの換気量や室圧の目標値は、設計図書とこのガイドラインの最新版で確認するのが前提です。この記事では、公表資料で確かめられる範囲の基準と、空調工事会社が現場で守るべき作法を整理します。

病院空調が一般ビルと違う3つの前提

  1. 室圧(空気の流れの方向)が仕様である。清潔な区域を陽圧(周囲より気圧を高くして空気を外へ押し出す)に、汚染のおそれがある区域を陰圧(周囲より気圧を低くして空気を外へ漏らさない)にし、空気の流れで汚染の拡散を防ぎます。ダンパーひとつの調整ミスが、安全要件の崩れになります
  2. 止めにくい。病棟・救急・検査部門は空調を止められる時間が限られます。改修は系統の切り替え計画と仮設が前提の仕事になります
  3. 清浄度の等級がある。室用途ごとに求められる清浄度が異なり、フィルターの等級・換気量・気流の設計が変わります

清浄度クラスと室圧の早見表

HEAS-02の2013年版の清浄度区分を、日本環境感染学会のセミナー資料(アズビル社作成)が引用して公表しています。そこから区分・代表的な室・室圧・給気の最終フィルターを抜き出しました。

清浄度クラス名称代表的な室室圧給気最終フィルター
Ⅰ高度清潔区域バイオクリーン手術室、易感染患者病室陽圧HEPA
Ⅱ清潔区域一般手術室陽圧高性能
Ⅲ準清潔区域未熟児室、ICU・CCU・NICU、分娩室など陽圧中性能(高性能に近い)
Ⅳ一般清潔区域一般病室、診察室、待合室、救急外来など等圧(新生児室は陽圧)中性能
Ⅴ汚染管理区域RI管理区域諸室、細菌・病理検査室、感染症用隔離病室、隔離診察室、解剖室など陰圧中性能
―拡散防止区域患者用便所、使用済リネン室、汚物処理室、霊安室陰圧特に規定しない

出典の資料は2013年版(第4版)の表で、現行は2022年版(第5版)です。換気量の目安や室圧の目標値を含め、設計・施工では最新版と設計図書の数値を使ってください。HEPAフィルター(高性能の粒子除去フィルター)について、公共建築工事標準仕様書は空気漏れのない構造とし、JIS B 9927規格群によるものとしています(第3編 1.8.2)。

すべてを空調会社が設計するわけではありませんが、「この部屋の圧はどちら向きか」「この排気は何系統か」を図面から読み、施工でそれを壊さないことが、医療案件に関わる最低条件です。

陰圧・陽圧の実務: 圧力は「作って終わり」ではない

  • 室圧は給気と排気の差で作られます。フィルターの目詰まり・ファンの劣化・ダンパーのずれで、室圧は運用中に変化します。竣工時の測定値だけでなく、定期的な確認が前提の設備です
  • 建具・隙間が圧力を左右します。ドアのアンダーカットや気密性は空調と一体の設計要素であり、内装改修で建具が変わると圧力バランスも変わります
  • 陰圧室の排気は、他系統と混ぜず、排気口の位置(人の立ち入る場所・給気口から離す)まで含めて安全設計の一部です
  • 測定・記録が信頼の証明です。室圧・風量の測定記録(風量測定の実務、試運転調整(TAB))は、引き渡しで重視される書類です

なお、病院は建築物衛生法施行令第1条の特定建築物の用途(興行場・店舗・事務所・学校・旅館など)に挙がっていません。そのため病院の用途部分は、特定建築物かどうかを判定する延べ面積の算定に入りません(同じ建物に事務所・店舗などがある場合の扱いは所管の保健所に確認してください)。病院の室ごとの空気環境の目標は、ガイドラインと設計図書で決まると考えておきます(建築物衛生法と空調)。

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改修工事の作法: 感染管理リスクアセスメント(ICRA)

HEAS-02-2022は、改修工事の内容と工事場所からリスクを分析して対策を実施する感染管理リスクアセスメント(ICRA:Infection Control Risk Assessment)を記述しています。空調工事会社は、病院側(施設管理・感染対策担当)がこの考え方で工事を評価することを前提に、次の項目を事前協議と施工計画に入れます。

改修前の協議チェックリスト

  • 工事区域と隣接区域の清浄度クラス・室圧を図面で確認した
  • 施工区画の仕切り・養生と、区画内の負圧化(集じん機での排気)の方法を決めた
  • 天井開放・ダクト切断など粉じんの多い作業の時間帯・区画・清掃手順を協議した
  • 系統の停止範囲と時間、仮設空調・仮設排気の要否を確認した
  • 既設ダクト内の堆積じんの扱いと、撤去材の搬出経路(患者動線との分離)を決めた
  • 作業員の入退室ルール・服装・使用エレベーターなど院内ルールを新規入場教育に入れた
  • 工事後の室圧・風量の測定と記録の方法を決めた

この協議と計画を施工計画書に明記できることが、医療案件で選ばれる会社の条件です。

クリニック案件の実務: 病院の縮小版ではない

診療所・クリニックの空調は、大病院の基準をそのまま縮小するのではなく、用途に応じた現実的な設計が求められます。

  • 換気の確保。待合室の換気量・気流の向き(受付スタッフを守る配置)を意識します。換気設備の選定と全熱交換器の提案が生きる領域です
  • 診療科による個別要件。発熱外来の分離換気、処置室の排気、レントゲン室の機器発熱など、科目ごとの要件をヒアリングで拾います
  • 静音性。診察室・待合の運転音は環境品質として重視されます。据付の防振・機種選定で応えます
  • 休診日工事の段取り。稼働中クリニックの更新は休診日と夜間の短期集中が基本です。更新の現地調査と事前段取りの精度が勝負になります

見積で織り込むべき医療案件特有の費目

  • 感染対策の養生費。仕切り・負圧養生・集じん機・清掃の費用と手間は、一般現場の養生とは別物です
  • 作業時間帯の制約。診療時間外・夜間・休日作業の割増と、細切れ工程による効率低下
  • 立会・調整の工数。施設側との事前協議、感染対策担当への説明、工程の承認プロセス
  • 検証・測定費。室圧・風量の測定と記録、必要に応じた清浄度の確認
  • 教育・入場管理。作業員への院内ルール教育と入退室管理の手間

これらを「一式」に埋めず項目として見せることは、見積の透明性であると同時に、医療案件の作法を知っていることの証明になります。

保守契約との相性

フィルター管理・室圧確認・フロン点検を組み込んだ保守契約は、施設側の安全管理と自社のストック収益(保守契約の管理)の両方に資する組み合わせです。HEAS-02-2022の目次にも「運転・保守」の章があり、運用中の管理が設計と同じ重みで扱われています。

まとめ

  • 病院空調の要点は、清浄度と室圧(陽圧・陰圧)を施工・調整・改修で崩さないことです
  • 国内の指針は日本医療福祉設備協会「病院設備設計ガイドライン(空調設備編)HEAS-02-2022」です。清浄度クラスごとの数値は最新版と設計図書で確認します
  • 改修では感染管理リスクアセスメント(ICRA)の考え方で、養生・負圧化・停止範囲・搬出経路を事前に協議します
  • クリニックは換気・静音・休診日段取りが実務の中心です

出典・参考

清浄度クラス・換気量・室圧の目標値は、設計図書と医療施設向けガイドラインの最新版が優先します(最終確認:2026-10-01)。

関連リンク

※ 2026年10月1日:冒頭で病院空調工事の要点と国内の指針(HEAS-02-2022)を言い切る形に改め、公表資料で確かめられる清浄度クラスと室圧の早見表、改修時の感染管理リスクアセスメント(ICRA)と事前協議のチェックリスト、建築物衛生法の特定建築物との関係、出典を追加しました。出典で確かめられない記述(工事粉じんに関する一般論の断定など)は改めました。

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