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空調機の振れ止めの基準と据付施工|天吊り・基礎・防振

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空調機の振れ止めの基準と据付施工|天吊り・基礎・防振

空調機の振れ止めの基準は、国土交通省の公共建築工事標準仕様書では「機器は水平に、かつ、地震力により転倒、横滑りを起こさないように固定する」ことが原則で、天井吊形・カセット形の室内機は「地震力の計算又は製造者の試験に基づいた設置」とされています。地震力は機器の重量に設計用水平震度(設置階で0.4〜1.0、防振支持の機器は0.6〜1.5)を掛けて求め、振れ止めの具体的な納まりは標準図「吊りボルトによる機器振れ止めの施工例」が参考例を示しています。

据付の不備は、ドレンのあふれ・振動・騒音・能力不足といった「機器のせいに見える症状」で現れます。この記事では、振れ止めの基準を中心に、天吊り・基礎・防振という据付の3本柱を出典で確かめられる範囲で整理します。

空調機の振れ止めの基準(公共建築工事標準仕様書)

機器の固定と地震力の考え方

公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版 第3編2.1.1(5)では、次のように定めています。

  • 機器は、水平に、かつ、地震力により転倒・横滑りを起こさないように基礎・鋼製架台等に固定する。固定方法は標準図(基礎施工要領、吊りボルトによる機器振れ止めの施工例、機器固定要領)による
  • 地震時には、設計用水平震度に機器の重量(kN)を掛けた設計用水平地震力と、設計用鉛直震度に機器の重量を掛けた設計用鉛直地震力が、重心に作用するものとする
  • 設計用震度は特記(設計図書での個別指定)による。特記がなければ、水平震度は下表、鉛直震度は水平震度の1/2とする

設計用水平震度の早見表

設置場所タンク以外の機器タンク
上層階、屋上及び塔屋1.0(防振支持は1.5)1.0
中間階0.6(防振支持は1.0)0.6
1階及び地下階0.4(防振支持は0.6)0.6

(出典:公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版 第3編表3.2.1)

表の注記による区分は次のとおりです。

  • 設置場所は機器を支持している床で判断します。天井面から吊る機器(上階の床から支持)は、支持部材を取り付けた床の階(=当該階の上階)を適用します。つまり天吊りの室内機は「1つ上の階」の区分です
  • 上層階は、2〜6階建ては最上階、7〜9階建ては上層2階、10〜12階建ては上層3階、13階以上は上層4階です
  • 中間階は、1階・地下階を除き、上層階に当たらない階です

天井吊形・カセット形の室内機

  • ファンコイルユニットの天井吊形等は、地震力の計算または製造者の試験に基づいた設置とします。ただし、支持をとる構造体からの距離を短くし、地震力による振動を抑えることで落下を防げる場合は除きます(第3編2.1.12)
  • マルチパッケージ形空調機(ビル用マルチ)・ガスエンジンヒートポンプ式空調機の天井吊形・カセット形の屋内機、天井隠ぺい形全熱交換ユニットも、この規定によります(第3編2.1.13・2.1.14)
  • 標準図「吊りボルトによる機器振れ止めの施工例」は、天井吊(露出)形とカセット形について、吊り金物に斜材を締め具で留め、ダブルナットで固定する例を示しています。標準図は「振れ止め機材は、参考例を示す」としています

具体的な斜材の本数・角度・部材寸法は、地震力の計算か製造者の資料(据付説明書・耐震施工要領)で決めます。この記事で一律の数値は示しません。発注者の仕様書・最新の規格で確認してください。民間の技術資料としては、日本建築センターの「建築設備耐震設計・施工指針」があります。

送風機・機器廻り配管の振れ止め

  • 天井吊形の遠心送風機は標準図(吊りボルトによる機器振れ止めの施工例、機器固定要領)により、小形(呼び番号2未満)の場合は吊り用ボルトにブレース等で振れ止めを施したものでもよいとされています(第3編2.1.18.1)。軸流・斜流送風機は呼び番号3以下が同様の扱いです(第3編2.1.18.2)
  • 空気調和機に接続する配管は、形鋼振れ止め支持とします(第2編2.6.2.1)。機器へ配管の荷重がかからないようにすることも求められています(第3編2.1.1(6))
  • ダクト・配管の耐震支持の全体像は空調設備の耐震施工を参照してください

室内機の天吊り:水平・強度・点検性

吊りボルトと強度

  • 吊りボルトは機器指定の径・本数で、躯体のインサートまたは適切なアンカーから取ります。天井の軽量鉄骨下地から吊ってはいけません。天井下地は機器の重量を支える設計になっていません
  • 吊りボルトのナットはダブルナットで確実に固定します(標準図の振れ止め施工例もダブルナット)。振動による緩みは異音と落下の入口です
  • 新築では吊り位置をインサートで先付けします(スリーブ・インサート工事)

水平の確保

天井カセットはドレンパンで結露水を受ける構造のため、傾きはドレンあふれの直接原因になります。仕様書も機器を「水平に」固定することを求めています。水平器で確認し、機器の据付説明書が示す許容範囲に収めます。ドレン側をわずかに下げる指定がある機種もあるため、据付説明書の指示を確認してください。ドレン配管はドレン配管の施工ポイントで解説しています。

点検スペースの確保

仕様書は、機器の据付けに際し維持管理に必要なスペースを確保することを求めています(第3編2.1.1(1))。フィルター・ドレンパン・電装箱にアクセスできる点検口の位置と大きさを、天井割付の段階で内装と調整します。据付は保守の入口でもあります。

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屋外機(室外機)の基礎と設置

基礎の基本

  • 基礎は、機器運転時の全体荷重に耐えられる床・地盤上に築造します(第3編2.1.1(2))
  • 標準基礎はコンクリート基礎とし、コンクリート打設後10日間以内に荷重をかけてはいけません。表面は金ごて押さえまたはモルタル塗りで、据付面を水平に仕上げます(第3編2.1.1(3))
  • 鋼製架台は、機器の静荷重と動荷重を基礎に完全に伝えるもので、建築基準法施行令第90条・第92条・第129条の2の3によるものとされています(第3編2.1.1(4))
  • 屋上置きは、防水層を傷めない設置方法と、建物躯体への荷重・固定の確認が前提です。防水に絡む場合は建築側との調整事項になります

設置環境:能力を守る配置

パッケージ形空調機・ビル用マルチの屋外機は、据付けに際し「ショートサーキット、障害物、騒音等の影響がないことを確認する」と定められています(第3編2.1.11・2.1.13)。

  • ショートサーキット(吹き出した排気を自分で吸い込んでしまう現象)は、能力低下と高圧異常の原因になります。吸込み・吹出しの離隔はメーカーの据付説明書の値を確保します
  • 複数台設置は、互いの排気が干渉しない配置・向きにします。増設のたびに詰め込まれた室外機置場は、繰り返す故障の原因になりがちです
  • 積雪地・強風地域・塩害地域では、防雪フード・高置台、風向き、架台やビスの耐食仕様など地域条件を織り込みます

防振:振動を建物に伝えない

騒音・振動の苦情の多くは、機器の振動が躯体を伝わって別の部屋で音になる固体伝搬音です。対策の考え方は、機器と建物の縁を切ることです。

  • 防振基礎は、標準基礎にストッパーを設けて防振架台を固定するものとし、ストッパーは水平・鉛直の地震力に耐え、運転時には接触しない間隙とし、地震時に当たる面には緩衝材を付けます(第3編2.1.1(3))。防振支持の機器は、上の表のとおり設計用水平震度が大きくなる点にも注意します
  • 防振材の個数・取付位置は、運転荷重・回転速度・防振材の振動絶縁効率で決めます(送風機の規定。第3編2.1.18.1)。荷重に対して硬すぎる防振ゴムは効かず、柔らかすぎれば機器が揺れます。機器重量と防振材の仕様の適合を確認します
  • 配管・ダクトも振動の通り道です。送風機とダクトの接続にはたわみ継手を使い(第3編2.1.18.1)、ダクトの振動伝播を防ぐ必要がある場合は防振材を介して吊り・支持を行います(第3編2.2.2.1)。貫通部の縁切りまで含めて対策します

据付起因のトラブル例(よくあるパターン)

以下は特定の会社の事例ではなく、据付の不備がどう表れるかの典型例です。

  • ドレンのあふれ。天井カセットの水平確認を目視で済ませ、機器がドレン口と逆方向にわずかに傾いていた。翌夏にドレンパンから水があふれ、天井と下の物品を濡らす。再据付より、天井の復旧と信用の回復のほうが重い
  • 夜間の低い唸り。住宅上階の室外機で、機器重量に合わない硬い防振ゴムを使い、実質的に効いていなかった。防振材の交換と配管貫通部の縁切りのやり直しが必要になる

どちらも、据付時の水平確認と防振材の選定で防げる種類のトラブルです。

化粧パネル・仕上げの納まり

  • 開口寸法・位置の指示は内装業者と早めに共有します。開口の小ささ・ずれはパネルでは吸収できません
  • 仮吊りの時点で本体の高さを開口に合わせ込むと、パネルの隙間・浮きを防げます
  • 取付は清掃とセットで完了です

据付検査のチェックリスト

区分確認項目根拠
振れ止め・固定天吊り機器は地震力の計算または製造者の資料どおりの振れ止めか。設計用震度は設置階(天吊りは上階)の区分で見たか仕様書第3編2.1.1(5)・2.1.12、表3.2.1
吊り吊りボルトの径・本数が機器指定どおりか、ダブルナット、インサート・アンカーの適合機器の据付説明書、標準図
水平水平器での確認値が据付説明書の範囲内か仕様書第3編2.1.1(5)
基礎打設後10日以内に荷重をかけていないか、据付面の水平、アンカー固定仕様書第3編2.1.1(3)
防振防振材の仕様と機器重量の適合、ストッパーの間隙と緩衝材仕様書第3編2.1.1(3)
屋外機ショートサーキット・障害物・騒音の影響がないか仕様書第3編2.1.11・2.1.13
点検性維持管理スペース、点検口の位置・寸法仕様書第3編2.1.1(1)
配管機器廻り配管の振れ止め、機器に荷重をかけていないか仕様書第2編2.6.2.1、第3編2.1.1(6)
記録下記の撮影項目営繕工事写真撮影要領

国交省の営繕工事写真撮影要領(令和5年改定)の撮影対象表(機械設備工事編)では、搬入・据付工事(空調)について「機器搬入状況」(搬入時)、「機器据付(作業状況、水平確認、防振・耐震措置状況等)」(施工時)、「機器据付(周囲空間、本体、銘板、養生等)」(据付後)を撮影対象にしています。吊り・防振・アンカーは完成後に見えなくなるので、隠蔽部写真の作法で残します。

まとめ

  • 空調機の振れ止めは、機器を水平に、地震力で転倒・横滑りしないよう固定するのが原則です。天井吊形・カセット形は地震力の計算または製造者の試験に基づいて設置します
  • 地震力は機器重量に設計用水平震度を掛けて求め、特記がなければ0.4〜1.0(防振支持は0.6〜1.5)、鉛直震度はその1/2です。天吊り機器は上階の区分を使います
  • 基礎は打設後10日以内に荷重をかけない、防振基礎はストッパー付き、屋外機はショートサーキット等の影響を確認します
  • 見えなくなる吊り・防振・耐震措置は写真で記録し、据付品質を示せる状態にしておきます

出典・参考

関連リンク

※ 2026年10月1日:冒頭で振れ止めの基準を言い切る形に改め、公共建築工事標準仕様書の機器固定・設計用水平震度・天井吊形機器・基礎・防振基礎・屋外機の規定、据付検査のチェックリスト(根拠つき)、写真の撮影項目、出典を追加しました。耐震施工の記事へのリンク先を修正し、架空の会社名を含む事例は「よくあるパターン」に改めました。

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