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スリーブ・インサート管理の実務|躯体工事段階での空調配管準備

スリーブ・インサート管理の実務|躯体工事段階での空調配管準備

設備工事の勝敗は、コンクリートを打つ前に半分決まる

新築工事で空調設備会社が最初に現場へ深く関わるのが、躯体工事段階のスリーブ・インサート工事です。スリーブは配管・ダクトが梁や壁・床を貫通するための孔を、コンクリート打設前に確保する管。インサートは、天井の配管・ダクト・機器を吊るためのねじ受けを、スラブに先付けする金物です。

この工事の特徴は、期間の短さと、やり直しがきかないことに尽きます。コンクリートが固まった後にスリーブを忘れていれば、構造体への後穿孔(コア抜き)となり、構造検討・費用・工程のすべてで高くつきます。逆に位置が正確なら、後の配管・ダクト工事は驚くほど滑らかに進みます。地味で短期間の工事ですが、ここでの精度が設備工事全体の原価と品質を左右する。それがスリーブ・インサートです。新築案件を受けるなら、この工程の管理力が会社の評価の入口になると心得てください。

スリーブ図の作成: 施工図の最初の実戦

スリーブ・インサートの位置は、施工図の検討を躯体スケジュールに間に合わせて確定させることで決まります。

  • 逆算で描く。将来の配管・ダクトルート(納まり検討)が決まらなければ貫通位置は決められません。つまりスリーブ図の期限が、ルート検討の実質的な締め切りです。躯体工程は待ってくれません
  • 寸法の3点セット。位置(通り芯からの寸法)・サイズ(配管+保温+施工余裕)・レベル(梁のどの高さか)。サイズは保温の厚み勾配の通過レベルまで見込みます
  • 構造の制約を知る。梁のスリーブには、入れられる位置(せいの中央付近)・径の上限・隣接間隔などの構造上の制約があり、最終判断は構造設計者の承認事項です。制約を知らない要求は協議で通りません。補強筋が必要になる径・位置の相場観を持っておくと、協議が速くなります
  • 電気・衛生との合番。同じ梁を各設備が通ります。設備間でスリーブ図を重ね、干渉と集中(同一断面に孔が並びすぎる状態は構造的に嫌われます)を調整してから構造側に出すのが、手戻りのない順序です

インサート計画: 「吊るものリスト」から落とす

インサートは、天井内に吊るすべてのもの(ダクト・配管・機器・ラック)の支持位置を先取りする工事です。

  • 支持間隔・耐震支持の位置機器の吊り位置から、必要なインサートの位置と種類(荷重に応じた仕様)を落とし込みます
  • 機器・大型ダクトなど荷重の大きい箇所は、専用の検討(複数本吊り・補強)が必要です。「全部同じインサートでいいだろう」が後の増し吊り・後施工アンカーを生みます
  • 後施工アンカーとの使い分けも現実には必要ですが、先付けインサートが原則、後施工は例外と位置づけるのが品質・コストの正解です
  • デッキプレート・中空スラブなど、スラブ構法によってインサートの種類・取付方法は変わります。構法の確認を作図の前提にしてください

現場での実務: 取付・検査・打設立会

図面が正しくても、現場で正しく付かなければ意味がありません。

  1. 墨出しと取付。型枠上に位置を墨出しし、スリーブ・インサートを固定します。打設時のコンクリートの流れで動かないよう、固定の堅さが品質です。斜め・浮き・ズレは、この段階でしか直せません
  2. 自主検査。取付後、図面と照らして位置・サイズ・数量を全数確認します。チェック済みの印を図面に付けていく消し込み方式が確実です
  3. 配筋検査への同席と写真。鉄筋・型枠の検査時に設備側も立ち会い、写真記録を残します。スリーブの位置・補強筋の状況は、打設後には二度と撮れない写真の筆頭です
  4. 打設立会。コンクリート打設中のスリーブ・インサートの脱落・移動は起こり得ます。打設への立会と直後の確認までが、この工事の範囲です
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躯体工程との連携: 締め切りは向こうが決める

スリーブ・インサート工事の難しさの半分は、時間管理です。締め切りを決めるのは自社ではなく躯体工程だからです。

  • 階サイクルを把握する。躯体は「配筋、型枠、設備、検査、打設」のサイクルを階ごとに繰り返します。1フロアのサイクル日数を元請工程から読み取れば、自社の作図・承認・取付の締め切りが全フロア分見えます
  • 承認の日数を見込む。スリーブ図は自社で完結せず、構造・元請の承認プロセスを通ります。往復の日数を工程に織り込み、初回提出は指摘を前提に早めに出します
  • 変更の申し送りを一元化する。躯体段階は意匠・設備の変更が飛び交います。変更情報の受け口を担当者一人に決め、スリーブ図・管理表・現場への反映を同じ手で行うと、伝言ゲームの事故が消えます
  • 雨天・工程変更への追従。打設日は天候で動きます。「来週の火曜のはず」を信じず、週の頭に元請へ打設予定を確認する習慣が、立会漏れを防ぎます

この工程感覚は、ダクト製作のリードタイム管理と並んで、空調施工管理者の段取り力の核になります。若手には「スリーブの現場を一度回らせる」ことが、工程を体で覚える最良の教材になります(育成の実地教材)。

抜け・間違いが起きたときの対応

万全を期しても、抜けとズレは起こり得ます。対応の原則は次のとおりです。

  • 隠さない。発見した時点で元請・構造側へ報告し、対処(コア抜きの可否・補強・ルート変更)を協議します。黙って後から抜くコア穿孔は、構造安全に関わる重大な違反行為です
  • コア抜きは構造承認が前提。位置・径の構造検討と、既存の鉄筋の探査(電磁波レーダー等)を経て実施します
  • 原因を管理に返す。抜けの原因(図面の版ずれ・連絡漏れ・現場変更の未反映)を特定し、版管理・確認手順の改善につなげます

管理の仕組み: 抜け漏れは「表」で防ぐ

  • スリーブ・インサートは一覧表(管理表)で全数管理します。図面番号・位置・サイズ・取付済み・検査済み・打設後確認の欄を、階・工区ごとに消し込みます。この消し込みの考え方は拾い出し隠蔽部写真と同じ、抜けを構造で防ぐ技術です
  • 変更の即時反映。躯体段階は設計変更が動く時期です。ルート変更が出たら、スリーブ図と管理表への反映を最優先タスクとして扱います
  • この短期間の管理の質は、元請から最もよく見える成績表です。スリーブで信頼を得た設備会社は、その現場の残り全部で仕事がしやすくなります。逆もまた然りです

まとめ

  • スリーブ・インサートは、やり直しのきかない先行工事です。設備工事の原価と品質の半分がここで決まります
  • スリーブ図はルート検討の締め切りです。構造制約と他設備との調整を踏まえ、躯体工程から逆算して描きます
  • 現場では固定・全数検査・打設立会まで。打設前の写真は最重要の記録です
  • 抜けは隠さず協議へ。管理表の消し込みと変更の即時反映が、抜け漏れを構造的に防ぎます

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