スリーブ・インサート工事とは?空調設備の躯体段階の管理
公開日:最終更新日:
編集・発行:KMC株式会社
スリーブ・インサート工事とは、新築の躯体工事中、コンクリートを打つ前に、配管・ダクトの通り道と吊り元を先に仕込んでおく工事です。スリーブは配管やダクトが梁・壁・床を貫通するための孔を確保する筒(鋼管・亜鉛鉄板・紙製仮枠など)、インサートは天井内の配管・ダクト・機器を吊るボルトを受けるため、スラブ(床版)に埋め込むねじ受け金物です。
どちらもコンクリートが固まった後では付け直せないため、位置・サイズ・数量の正確さがその後の設備工事全体の段取りを左右します。この記事では、公共建築工事標準仕様書(国土交通省)の規定を確認しながら、スリーブ図の作成から取付・検査・記録までの実務を整理します。
スリーブ・インサート工事とは:役割と仕様書の規定
スリーブの役割と仕様
スリーブは「後から孔を開けずに済ませるための先行投資」です。打設前に入れ忘れると、硬化後の後穿孔(コア抜き)になり、構造検討・鉄筋探査・費用・工程のすべてで負担が増えます。
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版では、スリーブについて次のように定めています(第2編2.2.27)。
- スリーブの径は、原則として、管の外径(保温する管は保温厚さを含む)より40mm程度大きなものとする
- 地中部分で水密を要する部分はつば付き鋼管、水密を要しない部分は硬質ポリ塩化ビニル管(VU)とする
- 柱・梁以外で、開口補強が不要、かつスリーブ径が200mm以下の部分は紙製仮枠としてもよい。その場合は変形防止の措置を講じ、配管施工前に必ず仮枠を取り除く
- それ以外の鋼管製スリーブは、配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3452)の白管とする
スリーブの材料早見表
同仕様書の表2.2.11と本文をまとめると次のとおりです。
| 使う場所・条件 | スリーブの材料 | 仕様書の規定 |
|---|---|---|
| 地中部分で水密を要する部分 | つば付き鋼管 | 配管用炭素鋼鋼管の黒管に、厚さ6.0mm以上・つば幅50mm以上の鋼板を溶接し、内面と端面にさび止め塗料塗り |
| 地中部分で水密を要しない部分 | 硬質ポリ塩化ビニル管(VU) | JIS K 6741 |
| 柱・梁以外、開口補強不要、径200mm以下 | 紙製仮枠でも可 | 変形防止の措置、配管前に必ず撤去 |
| 亜鉛鉄板製とする場合 | 亜鉛鉄板 | 径200mm以下は厚さ0.4mm以上、200mmを超えるもの(上限350mm)は0.6mm以上。原則として両端につばを設ける |
| 上記以外の鋼管製 | 配管用炭素鋼鋼管(白管) | JIS G 3452 |
設計図書に特記(その工事だけの個別指定)があれば、そちらが優先します。民間工事では、設計図書がどの基準に拠るかを最初に確認し、指定がなければ発注者の仕様書・最新の規格で確認してください。
貫通後の処理まで決めておく
スリーブは入れて終わりではありません。同仕様書は、紙製等の仮枠を使った部分は配管施工前に仮枠を取り外し、配管後にモルタル・ロックウール等で充塡するとしています(第2編2.4.1)。外壁を貫通する配管・ダクトとスリーブとの隙間は、バックアップ材等を充塡してシーリング材で水密を確保します(第2編2.8.1、第3編2.2.1)。防火区画の貫通部は、建築基準法令に適合する処理が必要です。スリーブの材料は、こうした貫通部の処理方法と合わせて決めます。
インサートの役割と仕様
インサートは、天井内に吊るすもの(ダクト・配管・機器・ケーブルラック)の吊り元を先取りする金物です。同仕様書では、インサート金物は管の吊り・支持に十分な強度をもち、吊り金物の連結に便利な構造で、防錆処理を施した鋼製とし、標準図(形鋼振れ止め支持部材選定表(二))によるとしています(第2編表2.2.14)。保温する配管用の断熱インサート金物は、台座に断熱材の厚さに等しい長さのさや管を備えたものです。
また、インサート金物は吊り用ボルトに対して適正なサイズを選ぶこと(第2編2.6.2.1)、ダクト用も防錆処理品で標準図によること(第3編1.14.2.7)が定められています。
スリーブ図の作成:施工図の最初の実戦
スリーブ・インサートの位置は、施工図の検討を躯体の工程に間に合わせて確定させることで決まります。
- 逆算で描く。将来の配管・ダクトルートが決まらなければ貫通位置は決められません。スリーブ図の提出期限が、ルート検討の実質的な締め切りです
- 寸法の3点セット。位置(通り芯からの寸法)・サイズ(管外径と保温の厚みに余裕を加えたもの。公共仕様書の原則は前述の40mm程度)・レベル(梁のどの高さを通すか)。ドレン配管の勾配がある系統は、通過レベルまで見込みます
- 構造の制約を知る。梁や壁のスリーブには、位置・径・隣接間隔などの構造上の制約があり、補強の要否を含めて最終判断は構造設計者の承認事項です。数値は工事ごとの構造図・特記で確認してください
- 電気・衛生との合番。同じ梁を各設備が通ります。設備間でスリーブ図を重ね、干渉と、同じ断面に孔が集中する状態を調整してから構造側に出すと、手戻りが減ります
インサート計画:「吊るものリスト」から落とす
- 配管・ダクトの吊り間隔、耐震支持の位置、機器の吊り位置から、必要なインサートの位置と種類を落とし込みます。ダクトの吊り間隔は工法ごとに仕様書で決まっています(ダクト施工の基本)
- 機器・大型ダクトなど荷重の大きい箇所は、個別の検討(吊り本数・補強)が必要です。全部同じインサートで済ませると、後で増し吊りや後施工アンカーが増えます
- 後施工アンカーとの使い分けは現実には必要ですが、先付けインサートを原則とし、後施工は躯体条件と許容荷重を確認したうえでの例外と位置づけます
- デッキプレート・中空スラブなど、スラブの構法でインサートの種類・取付方法は変わります。構法の確認を作図の前提にしてください
現場での実務:取付・検査・打設立会
- 墨出しと取付。型枠上に位置を墨出しし、スリーブ・インサートを固定します。打設時のコンクリートの流れで動かないよう、確実に固定します。斜め・浮き・ずれはこの段階でしか直せません
- 自主検査。取付後、図面と照らして位置・サイズ・数量を全数確認します。チェック済みの印を図面に付けていく消し込み方式が確実です
- 配筋検査への同席と写真。鉄筋・型枠の検査時に設備側も立ち会い、写真記録を残します。スリーブ位置や補強筋の状況は、打設後には撮れない写真です
- 打設立会。打設中のスリーブ・インサートの脱落・移動は起こり得ます。打設への立会と直後の確認までを、この工事の範囲と考えます
写真に残す項目(国交省 営繕工事写真撮影要領)
国土交通省の営繕工事写真撮影要領(令和5年改定)の撮影対象表(機械設備工事編)では、スリーブ・インサート工事について次の撮影項目を挙げています。公共工事では監督職員との協議で撮影対象が決まりますが、民間工事でも記録の型として使えます。
| 撮影項目 | 撮影対象 | 撮影時期 |
|---|---|---|
| 機材 | 形状、寸法、塗装状況(つば付き鋼管)等 | 搬入時 |
| 施工 | 取付状況、取付位置、貫通部処理状況等 | 施工中 |
躯体工程との連携:締め切りは躯体側が決める
- 階ごとのサイクルを把握する。躯体は配筋・型枠・設備・検査・打設のサイクルを階ごとに繰り返します。元請の工程表から1フロアのサイクルを読み取れば、自社の作図・承認・取付の締め切りが全フロア分見えます
- 承認の日数を見込む。スリーブ図は構造・元請の承認を通ります。往復の日数を工程に織り込み、初回提出は指摘を前提に早めに出します
- 変更の受け口を一本化する。躯体段階は意匠・設備の変更が多い時期です。変更情報の受け口を担当者一人に決め、スリーブ図・管理表・現場への反映を同じ人が行うと伝達漏れが減ります
- 打設日の変動に追従する。打設日は天候で動きます。週の初めに元請へ打設予定を確認すると、立会漏れを防げます
この工程感覚は、ダクト製作のリードタイム管理と並ぶ段取りの基本です。若手には一度スリーブの現場を回らせると、工程を体で覚えられます(育成の実地教材)。
抜け・間違いが起きたときの対応
- 隠さない。発見した時点で元請・構造側へ報告し、対処(コア抜きの可否・補強・ルート変更)を協議します。無断のコア抜きは構造安全にかかわるため行いません
- コア抜きは構造側の承認が前提。位置・径の構造検討と、既存の鉄筋・埋設配管の探査を経て実施します。営繕工事写真撮影要領でも、躯体穴開け等では「鉄筋、埋込配管等の探査の状況」と「はつり及び穴開け作業の状況」が撮影対象です
- 原因を管理に返す。抜けの原因(図面の版ずれ・連絡漏れ・現場変更の未反映)を特定し、図面の版管理と確認手順の改善につなげます
管理表のひな形:抜け漏れは「表」で防ぐ
スリーブ・インサートは一覧表で全数管理します。階・工区ごとに次の欄を設け、消し込んでいきます。考え方は拾い出しや隠蔽部写真と同じで、抜けを仕組みで防ぎます。
| 番号 | 図面番号・版 | 通り芯からの位置 | 部位(梁・壁・床) | 種類・材料 | 径(管外径+保温+余裕) | 構造承認 | 取付済 | 自主検査 | 写真 | 打設後確認 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| S-1 | □ | □ | □ | □ | □ | |||||
| I-1 | - | □ | □ | □ | □ |
- ルート変更が出たら、スリーブ図と管理表への反映を最優先にします
- この短期間の管理の質は、元請から最もよく見える評価材料です
まとめ
- スリーブは配管・ダクトの貫通孔を確保する筒、インサートは吊りボルトを受ける埋込み金物です。どちらもコンクリート打設前にしか付けられません
- 公共仕様書では、スリーブ径は管外径(保温含む)より40mm程度大きく、材料は使う場所(地中の水密の要否、柱・梁かどうか、径)で決まります
- スリーブ図はルート検討の締め切りです。構造制約と他設備との調整を踏まえ、躯体工程から逆算して描きます
- 現場では固定・全数検査・打設立会まで。搬入時と取付時の写真を残し、管理表で消し込みます
出典・参考
- 公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(国土交通省大臣官房官庁営繕部。第2編2.2.27「スリーブ」・表2.2.11、表2.2.14「配管用雑材料」、2.4.1、2.6.2.1、2.8.1、第3編1.14.2.7、2.2.1)
- 公共建築工事標準仕様書 掲載ページ(国土交通省)
- 営繕工事写真撮影要領 令和5年改定(国土交通省大臣官房官庁営繕部。撮影対象表(機械設備工事編)「スリーブ・インサート工事」「躯体穴開け等」)
関連リンク
※ 2026年10月1日:冒頭でスリーブとインサートを定義する形に改め、公共建築工事標準仕様書のスリーブ径・材料の規定(材料早見表)、インサート金物の仕様、営繕工事写真撮影要領の撮影項目、管理表のひな形、出典を追加しました。出典で確かめられない梁貫通位置の目安の記載は、構造図・特記で確認する形に改めました。
いまの課題に近いものはどれですか?
選んだお悩みに最適なサービスのご案内ページへ移動します。
2営業日以内に担当者からご連絡します。無理な営業はいたしません。





