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室外機の玉掛け方法と資格|クレーン則で見る揚重の基本

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室外機の玉掛け方法と資格|クレーン則で見る揚重の基本

室外機の玉掛け(クレーンのフックに荷を掛け外しする作業)は、資格のある人が、点検済みの吊り具を使い、メーカーが指定する吊り位置に掛け、地切り(荷をわずかに浮かせた状態)でバランスを確認してから揚げるのが基本の方法です。資格は荷の重さではなくクレーンのつり上げ荷重で決まり、つり上げ荷重1トン以上のクレーン・移動式クレーンの玉掛けは玉掛け技能講習の修了者、1トン未満は特別教育を受けた人が行います(労働安全衛生法施行令第20条第16号、クレーン等安全規則第221条・第222条)。

吊り荷の落下・機器の転倒・挟まれは、起きれば重い災害になります。この記事では、空調工事の揚重(重量物を吊り上げること)について、資格・吊り具・計画・当日の運用を、条文で確かめられる範囲で整理します。

早見表:揚重に関わる資格

業務区分必要な資格・教育根拠
玉掛けつり上げ荷重1トン以上のクレーン・移動式クレーン・デリック玉掛け技能講習の修了など安衛令第20条第16号、クレーン則第221条
玉掛けつり上げ荷重1トン未満特別教育クレーン則第222条
移動式クレーンの運転つり上げ荷重5トン以上移動式クレーン運転士免許安衛令第20条第7号、クレーン則第68条
移動式クレーンの運転1トン以上5トン未満(小型移動式クレーン)小型移動式クレーン運転技能講習の修了(免許でも可)クレーン則第68条
移動式クレーンの運転1トン未満特別教育クレーン則第67条

(移動式クレーンの運転の区分は、道路上を走行させる運転を除きます。トラックに積んだクレーン装置(積載形トラッククレーン、いわゆるユニック車)も移動式クレーンです。)

ポイントは、判断基準が吊る荷の質量ではなく、使うクレーンのつり上げ荷重であることです。たとえば軽い室外機でも、つり上げ荷重1トン以上のクレーンで吊るなら、玉掛けは技能講習修了者の業務です。「クレーンは業者に頼むから自社は関係ない」も誤解で、荷に掛けるのが自社の作業員なら玉掛けの資格は自社の問題です。

資格は資格台帳で管理し、応援・協力会社を含めて、無資格者に掛けさせない・運転させないことを徹底します。

室外機の玉掛け方法:手順

  1. 荷の情報を確認する。質量(梱包・付属品を含む)、寸法、重心の位置。室外機は重心が偏っている機種があるため、メーカー資料の吊り位置・吊り方の指定を確認します。指定の吊り穴・吊り金具があればそれを使います
  2. 吊り具を選び、点検する。その日の作業開始前に、ワイヤロープ・つりチェーン・繊維ベルト・フック・シャックル等の異常の有無を点検し、異常があれば直ちに補修します(クレーン則第220条)。使ってはいけない吊り具の基準は次の節の表のとおりです
  3. 角を保護する。機器の角や化粧パネルに当たる箇所はあて物で保護します。吊り角度が大きくなるほど吊り具にかかる張力は増えるので、吊り具の使用荷重と吊り角度を合わせて確認します
  4. 合図を決める。合図を行う者を指名し、一定の合図を決めます。運転者と玉掛け者は指名された者の合図に従います(クレーン則第71条)
  5. 地切りで確認する。荷をわずかに浮かせて止め、バランス・吊り具の掛かり・荷の傾きを確認してから揚げます
  6. 吊り荷の下に入らない。ワイヤロープ等で1箇所に玉掛けした荷(荷に設けた穴やアイボルトに通す場合を除く)、ハッカーやつりクランプ1個で玉掛けした荷などを吊っているときは、荷の下への立入りを禁止しなければなりません(クレーン則第74条の2)。移動式クレーンの上部旋回体と接触するおそれのある箇所への立入りも禁止です(同第74条)
  7. 着地・外し。据付位置の直上で一度止め、ゆっくり下ろします。荷が安定してから玉掛け用具を外します。荷をつったまま運転者が運転位置を離れることは禁止されています(同第75条)

早見表:玉掛け用具の安全係数と使用禁止の基準

用具基準根拠
ワイヤロープ安全係数6以上(切断荷重 ÷ かかる荷重の最大値)クレーン則第213条
フック・シャックル安全係数5以上クレーン則第214条
ワイヤロープの使用禁止1よりの間で素線(フィラ線を除く)の10%以上が切断、直径の減少が公称径の7%を超える、キンクした、著しい形くずれ・腐食があるクレーン則第215条
つりチェーンの使用禁止伸びが製造時の長さの5%を超える、リンク断面の直径の減少が製造時の10%を超える、き裂があるクレーン則第216条
フック・シャックル・リング等変形・き裂があるものは使用禁止クレーン則第217条
繊維ロープ・繊維ベルトストランドが切断している、著しい損傷・腐食があるものは使用禁止クレーン則第218条
エンドレスでないワイヤロープ・つりチェーン両端にフック・シャックル・リング・アイを備えたものクレーン則第219条

安全係数6以上とは、たとえばワイヤロープにかかる荷重の最大値の6倍以上の切断荷重をもつロープを使う、という意味です。作業前点検は、この表を点検表にしておくと抜けが減ります。

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吊り上げ計画:当日ではなく事前に決める

移動式クレーンを使う作業では、事業者はあらかじめ、作業場所の広さ・地形・地質、荷の重量、クレーンの種類・能力等を考慮して、①作業の方法、②転倒を防止するための方法、③労働者の配置と指揮の系統を定め、作業開始前に関係労働者へ周知しなければなりません(クレーン則第66条の2)。計画で押さえる要素は次のとおりです。

  • クレーンの選定と配置。定格荷重(その姿勢で吊れる荷重)を超えて使ってはいけません(クレーン則第69条)。ブームを伸ばす・倒すほど定格荷重は下がるため、作業半径と定格荷重の関係を配置図の上で確認します。運転者と玉掛け者が定格荷重を常に知ることができるよう表示等の措置も必要です(同第70条の2)
  • 地盤とアウトリガー。地盤が軟弱な場所、埋設物を損壊するおそれのある場所など転倒のおそれがある場所では、必要な広さ・強度の鉄板等を敷かない限り作業できません(同第70条の3)。アウトリガーは原則として最大限に張り出します(同第70条の5)
  • 電線・障害物。架空電線に近接して移動式クレーン等を使い、感電の危険があるときは、電路の移設・囲い・絶縁用防護具の装着、それが著しく困難なら監視人を置く措置が必要です(労働安全衛生規則第349条)。電力会社への相談を含め事前に対応します
  • 荷の養生と天候。梱包状態での吊りの可否、雨天時の滑り・視界、ビル風も計画時に確認します

この計画は施工計画書の揚重計画として図面化し、元請・建物側と共有します。

自社のユニック車の運用

  • 定格荷重の意識。車の呼び名の「○トン吊り」は、どの姿勢でも吊れる数字ではありません。荷重表の読み方を教育で必ず扱います
  • アウトリガーの完全張り出し。「ちょっと吊るだけ」の中途半端な張り出しは転倒の典型原因です。張り出せない場合の例外は、荷重が張り出し幅に応じた定格荷重を確実に下回るときに限られます(クレーン則第70条の5)
  • 作業開始前点検。移動式クレーンを使う日は、作業開始前に巻過防止装置・過負荷警報装置その他の警報装置・ブレーキ・クラッチ・コントローラーの機能を点検します(クレーン則第78条)。点検表を車両に備えます
  • 積卸し。1つの荷の重量が100kg以上のものを貨物自動車に積む・卸す作業では、作業指揮者を定め、作業手順の決定、器具・工具の点検、関係者以外の立入禁止などを行わせます(労働安全衛生規則第151条の70)
  • 走行前。固縛と重心、ブームの完全格納を出発前に指差し確認します

人力搬送の限界を見誤らない

すべての機器がクレーンで揚がるわけではなく、階段上げ・廊下搬送も残ります。ここでの腰痛・挟まれ・転落は、地味に多い労働災害です。

  • 1人で運ぶ重さの上限と、それを超えたら機械(階段揚重機・チェーンブロック・台車)を使う基準を、会社のルールとして明文化します
  • 現地調査で経路の実測・養生計画・曲がり角の通過検討を行います
  • 通らない機器は、分解搬入に対応した機種の選定や現地組立を検討します。搬入方法は機器選定の条件です

道路使用と近隣対応

道路でクレーン作業をする場合は、作業をしようとする者またはその請負人が、所轄警察署長の道路使用許可を受けなければなりません(道路交通法第77条)。工作物や物件を設けて継続して道路を使う場合は、別に道路管理者の占用許可(道路法第32条)が必要になることがあるため、所轄の警察署・道路管理者に確認してください。

  • 申請には日数がかかります。工程から逆算して早めに手配し、雨天順延の予備日も考えます
  • 誘導員の配置・保安設備(カラーコーン・看板)・通行人への声かけを計画します
  • 近隣への事前案内(作業日・時間帯・騒音)は、苦情予防の基本動作です。テナントビルではビルルールとの整合も確認します

当日の運用チェックリスト

確認項目根拠
玉掛け者・運転者の資格(クレーンのつり上げ荷重で判断)を確認したか安衛令第20条、クレーン則第67条・第68条・第221条・第222条
玉掛け用具の作業開始前点検をしたかクレーン則第220条
移動式クレーンの作業開始前点検をしたかクレーン則第78条
作業の方法・転倒防止の方法・配置と指揮系統を決め、周知したかクレーン則第66条の2
アウトリガーを最大限に張り出したか、地盤・敷鉄板は十分かクレーン則第70条の3・第70条の5
合図者を指名し、合図を統一したかクレーン則第71条
吊り荷の下・旋回範囲の立入禁止を表示・監視しているかクレーン則第74条・第74条の2
架空電線との接近への措置をとったか安衛則第349条
強風で危険が予想されるときに中止する判断者を決めたかクレーン則第74条の3
地切りでバランスを確認したか玉掛けの基本動作

強風のため移動式クレーン作業の実施に危険が予想されるときは、作業を中止しなければなりません(クレーン則第74条の3)。風の中止基準は計画段階で決め、当日は機械的に判断します。「せっかくクレーンを呼んだから」は判断材料にしません。当日の朝礼では、KY活動のテーマとして具体的に確認します。

まとめ

  • 室外機の玉掛けは、資格者が、点検済みの吊り具で、指定の吊り位置に掛け、地切りで確認してから揚げるのが基本です
  • 玉掛けの資格は使うクレーンのつり上げ荷重で決まり、1トン以上は技能講習、1トン未満は特別教育です
  • ワイヤロープは安全係数6以上、フック・シャックルは5以上。素線切断10%以上・直径減少7%超・キンクなどは使用禁止です
  • 移動式クレーン作業は、作業方法と転倒防止の事前決定、アウトリガーの最大張り出し、合図の統一、立入禁止、強風時の中止が条文で求められています

出典・参考

関連リンク

※ 2026年10月1日:玉掛けの資格の区分を労働安全衛生法施行令第20条とクレーン等安全規則に合わせて見直し(吊り荷の質量ではなくクレーン等のつり上げ荷重で区分)、資格の早見表、室外機の玉掛け手順、玉掛け用具の安全係数と使用禁止基準の表、当日の運用チェックリスト(根拠条文つき)、出典を追加しました。

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